幕間.錬金術スキル
クエストをこなすローテションを決めようと思う。
高校生だったシュウは一週間の規則正しい流れができていた為、こちらの世界でも同じような流れを作りたかった。
幸いにもこの世界も一週間は七日で構成されている。
地球で月火水木金土日がこの世界の属性で表されており、氷火水雷土風光の順になっている。
地球の日曜日となる光曜日は多くの仕事が休みとなるようだった。
シュウもそれに合わせ、氷火曜日は壁外クエスト、水曜日は住民クエスト、雷土曜日は壁外クエスト、風光曜日はクエストは休みにしようと決めた。
ただ壁外クエストの難易度によって疲れやケガもあり得るので、目安として考える事にしている。
特に昇格を急いでいるわけでもないので、疲労困憊となった次の日は休みにしてもいいし。と思っている。
今日は水曜日なので住民クエストをいくつか巡ろうと思う。
クエストボードでいくつか住民クエストを物色し、サーシャから受ける。
サーシャからクエストボードに出ていないシュウ指名のクエストもあるとのことでそれも合わせて受けることにした。
受けたクエストのリストと地図を見比べ効率のいい周り方を考える。
「えーっと、西区で屋根の修理に教会で傷薬のお遣いで、東区倉庫の整理に…
最後が薬屋さんで倉庫の整理と商品の仕分けか。
早く終わったらポーションの作り方でも教えてもらおうかな」
そう考えるとまず最初の依頼者の家に向かった。
さささっと依頼を回り薬屋の前まできた。
最初の屋根の修理でもしやと思いながら、作業の一つ一つを集中して行い、終わると木工スキルを得ていた。
薬屋の依頼を始めるために店の中に入った。
「こんにちはー」
中は丁度客がいないようだった。
「いらっしゃい。
ああ、シュウ君か。
じゃ、依頼で来てくれたのかな?」
奥から店の主人のランブルが顔を出した。
「その通りです~
今日もいつもの奥の倉庫整理ですか?」
このクエストは定期的にランブルがシュウを指名して依頼してくれるのだ。
最初の依頼の出来が丁寧で気に入ってくれたらしい。
「ああ。
いつもの倉庫に薬の材料が納品されたままになっててね。
私がやれって話なんだけど、ここのところいろいろな方面から薬の依頼来てて、手が回らないんだ」
前回も同じことを言っていたが、ここに来るたびに倉庫に入れられている薬の材料となる素材の量が増えていた。
「了解しました。
仕分けはいつもの感じででいいですか?」
「うん。頼むよ。
私はこっちで作業しているから、何かあれば言ってくれるかな?」
そう言って、奥の作業室に消えていくランブル。
シュウも以来のあった倉庫に向かった。
「うわっ……」
倉庫に入るなり、その量に絶句した。
「最初に来た時の倍……
いや、三倍ぐらいの量があるんじゃ?」
ポーションの原材料である薬草や綺麗な水、ポーションを入れる瓶。
その外にもマナポーション、解毒ポーション、気付けポーション等の材料の入った木箱が天井に届きそうなほど積まれている。
これを作業の工程で使いやすいように、分けていくのだ。
「よっし。
やるか!」
シュウは気合をいれて最初の木箱を開けて仕分け始めた。
そして、集中して作業を進めた結果識別スキルを得ていることに後になって気づくのだった。
最後の木箱が空になり、店の裏に出して片づけも終わった。
「それにしても、すごい量だったな。
これだけ、ランブルさんの薬が人気で必要とされてるってことか」
ポーションは品質によって効果が変わり、値段も変わる。
一般的に品質Cがその商品の価格の基準となる。
店で売っているのは基本その品質Cからである。
この品質を上げれば、高く売れるのだが、その品質を一つでも上げるのがとても大変なのだ。
一番簡単といわれる下級ポーションでも品質Bを作れるのは街に数十人、品質Aは街に数人いるか、品質Sとなると国に数人いるかというレベルである。
そして、この国でその数人に入るのがランブルであった。
整理が終わったのでランブルに報告に行く。
「ランブルさーん。
整理完了です」
ランブルの作業室の扉を開け、報告する。
「お、早いね。さすが」
ランブルが火にかけた鍋の中身を混ぜながら応える。
シュウはもう慣れてしまったが、この薬草を煮詰める工程はとても臭い。
「ほんとすごい量ですね。
ランブルさんも相当忙しそう」
「ははっ。
商売としては嬉しい限りだけど、一番はこの薬たちが必要にならない事だけどね」
ランブルが優しくそして悲しげに微笑む。
「まあ、私のこの薬が少しでも人の命を救えると思えば、私も救われるけど……」
「けど?」
話しながらも鍋をかき回すランブルが言い淀む。
「この薬品作りは錬金術に含まれる。
金を作るわけじゃないけどね。
そして、錬金術にはいろんな分野があってね。
薬も作るが、その逆も作れるんだ」
「逆……?」
「そう。
所謂、毒だね。
簡単な毒から多種多様の効果があるものやら。
そして、最近では『火薬』という今まで目を付けられなかった物で、効果の高い兵器を生み出すことに躍起になっているのも錬金術だ」
「か、火薬ですか?」
「おや、知っているのかい?」
鍋を回す手を止め、シュウに振り返るランブル。
「い、いえ。
そんな詳しくは。
そういえば、依頼で行った錬金術師さんが言ってたな~と」
言葉では誤魔化しているが、シュウが火薬と聞いて頭に浮かんだのは地球の兵器たちだ。
銃にミサイルや爆弾など。
剣で戦う人も多いこの世界でそれらが現れると力の均衡が崩れてしまうかもしれない。
そう思って、その考えを誤魔化すために慌てて口に出したのだが、
「その錬金術師って誰なんだい?」
思いもよらぬことにランブルが食いついてきてしまった。
「ええっと、デストさんです」
以前住民クエストで行ったことのある、錬金術師のデストだと言った。
この錬金術師の所に行った依頼も錬金術に使う材料の整理で、その中に火薬の材料になる物があるので取り扱いに注意せよと言われていた。
ので、あながち嘘をついたわけではない。
「なんだ。デストか。
なるほど彼ほどの錬金術師なら。
今頃彼も相当忙しいだろうな」
「知っているんですか?」
シュウの答えで納得したという顔のランブルに質問を返した。
「デスト程の腕の錬金術師はそういませんからね。
彼がポーションを作ると私の仕事が無くなりますね」
ランブルは鍋を火から降ろし、冷ましながら言った。
「ははっ。
そんなこと……」
シュウが冗談だろうとランブルに言いかけて、
「それがあながち冗談でもないんですよ?
私は薬に特化した錬金術を納めていますが、逆に言うとそれしかやってきてません。
しかし、彼は錬金術全般に心得があります。
スキルだけなら私の完敗です。
まあそれだけに彼は……」
口を閉ざすランブルだったが、なんとなく言いたいことがわかった。
薬も作れる錬金術だが毒なども作れる。
そんな研究をしている人物を普通の人が良く思うだろうか。
寄ってくるのは、何か企んでいるような人達が多そうだ。
シュウが初めて行った際も、疑り深い目で見られたことを思い出した。
「さて、このポーションはあとは冷ますだけっと。
シュウ君はこの後なにか用事があったりするかい?」
少し重くなった雰囲気を変えようとしてくれたのかランブルが話題を変えた。
「いえ、依頼の報告をギルドにするぐらいです」
特に、これと言った用事も思いつかなかった。
「ちょっと、依頼されてるポーションの量が多くてね。
ちょっと下級ポーション作ってみない?」
にっと笑いながらランブルが持ち掛けてきた。
「え?いいんですか?
僕が作って品質が低いの作っちゃうと……」
シュウが作っても品質が低くなってしまう、そうなるとランブルの作った高品質目当て客に売れなくなってしまう。
「ああ、ごめんごめん。
一番お願いしたいのは薬草を細かく潰すとこなんだ。
倉庫で見てもらった、あの量の薬草をすり潰すのかなり大変で……
しかも、この工程とくに品質に影響しないんだ。
みんなには内緒だよ?」
ランブルが人差し指を立てながらウィンクをした。
「え、そうなんですか?」
驚いて返すシュウ。
「ほんとほんと。
まあ、すり潰すのが足りなかったり、ムラがあれば品質に影響するけど、私も横で一緒に確認しながらやるから。
シュウ君いつも整理終わった後、私の作業熱心に見てたでしょ?
やってみたいのかなぁと思って」
ランブルには見透かされていたようだった。
「ぜひ、やってみたいです!」
シュウの返事に笑顔で答え、二人分の薬研を準備するランブル。
ランブルに薬草の処理の仕方を教わり、乾燥させる簡単な魔術を習い、二人でゴリゴリしていった。
結果、無事に錬金術スキルを取得できた。
一度だけ教わりながら最後まで少しの量の下級ポーションを作らせてもらった。
出来上がったのは品質Dだった。
初めてで品質Dはすごいと言われたけど、横からスペシャリストが水の量から火の強さから火から降ろすタイミングまで教えてくれての品質Dである。
できた下級ポーションは売り物にできないからと全部貰って帰ってきたのだった。
そして、冒険者ギルドで報告したあと、道具屋でポーション作成キットを買って帰った。




