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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
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幕間.鍛冶スキル

 街の外に出るクエストを受けていた時も、合間に住民クエストをこなしていた。

 この住民クエストの依頼者達は癖のある人も多かったが何度も通うことで優しくいろいろなことを教えてくれた。


 職人エリアにある鍛冶工房。

 ここには以前、鉱石等を保管する倉庫の整理の依頼で来たことがあった。

 その鍛冶工房の一つに今日は訪れていた。

 工房の中は炉の熱気と鉄を打つ音で満ちていた。

「こんにちは~。

 シモンさんいますか~?」

 工房の入り口から覗き込み目当ての職人を探す。

 何度か通ってきているので、周りの職人もシュウの顔を覚えてくれたようだった。

「シモンさんなら奥のいつものとこだーー。

 自由に入ってくれーー」

 槌の音に負けないように大声で職人さんが教えてくれる。

「ありがとうございますー!

 失礼しますーー!」

 シュウも大声でお礼を返し、工房の中に入っていった。


 シュウが向かった先は、工房の中でも個人に割り当てられた一室だった。

 壁には様々な武器が掛けられ、棚には見事な品質の冑や鎧が並んでいる。

 この部屋の主であるシモンは、個人の工房を持つことも可能なほどの腕前だが、そうはせずに共同鍛冶場で、自身の作業や新人の鍛冶師などの育成を行っているらしい。

 それをここの職人達がまるで自分のことのように話してくれていた。

 そのシモンの部屋にシュウは入り、真剣に槌を振り下ろす男を見つけた。

 一振り一振りに魂を込めたように集中した様子で、声を掛けるのがいつも躊躇われる。

「また来たのか。坊主」

 顔は金床を向き、手も止めずに声を掛けてきた。

「今日も見せてもらってもいいですか!?」

 シュウは最初に依頼で来た時から、シモンが武器や防具を作っているのを横で見ていた。

 そして、時々鍛冶を教えてもらっていた。

 シュウの言葉に顔を上げ、

「……好きにしろ」

 と、一言言うとまた金床に視線を戻してしまった。

 シュウは邪魔にならないように注意しつつ作業を見つめていた。

「……今日は依頼か?」

 シモンが顔を上げずに声がかかった。

「いえ。今日は休みにしました。

 たまには休めとギルドに言われてしまいまして……」

 クエストを受けようとギルドに入ると、サーシャに呼び止められ、ほぼ毎日クエストを受けていたのをプリプリ怒られてしまった。

「休みなら、こんなむさ苦しいとこに来なくて、もっと気楽なとこ行けばいいだろう。

 こんなつまらんとこに来ないで」

 シモンがシュウに槌を振りながら静かに話す。

 つけ放すような言い方だが、ゆっくり体を休めろとシモンなりにシュウの体を想ってのことだった。

 以前にも似たようなことがあり、他の職人と話す機会に言うと、親方は素直じゃないからなーと教えてくれたのだった。

「楽しいですよ。

 シモンさんが槌を振っているのをみるだけでも勉強になりますし」

 

 草原で魔術書の変化に気づいてから、寝る前などに確認するようなった。

 あの魔術書はシュウが覚えた魔術やスキルが書かれていた。

 そして、徐々にその数が増えているのである。

 以前ここでシモンから試しに打ってみるか?と聞かれ、教えてもらいながら鉄を打ってみた。

 そして、その日の夜魔術書を確認すると鍛冶スキルが増えていたのである。

 それから、シモンの鍛冶を集中して見ていると自然とシモンがどこをどう打っているのか目的はどうなのかがわかるようになってきた。

 

「変わった奴だ。

 今日も打っていくか?」

 シモンが相変わらず顔も上げずに聞いてくるので、

「はい!

 お願いします!」

 と、シュウ笑顔で答えシモンの隣に座った。


 シュウは練習で銅でナイフを作成している途中で、作業を終えたシモンがシュウの鍛冶を見つめアドバイスをくれていた。

 言葉は少なく厳しく聞こえるが、適格な助言だとわかる。

 ふとシモンが作業の邪魔にならないように外していた、ルーツから借りている小剣に目をやった。

「この剣は……。

 手入れはしているようだが、少し研いでやろうか?」

 熱した銅が冷めないうちに完成させたいシュウは、金床から目を離せず、

「すみません。

 お願いします」

 と、返事だけ返した。

 シュウがカンカンと銅を叩いて成形している中、シュウには聞こえない声で小さく呟かれる。

「そうか、大事にされているか。

 ……ふむ」

 

 何とかシュウが銅でナイフを作り終えた。

 シモン程の出来には程遠いが、最初に比べると形になっているように思える。

 これも鍛冶スキルのお陰だろう。

「坊主。

 そろそろ、金も貯まってきただろう?

 新しい武器を買わねえのか?」

 借りていた道具を片付けようとしていると、シモンが小剣を携えて聞いてきた。

「え?

 もう、その剣に慣れてしまって、武器屋で見ててもピンとこないんですよね」

 頭の後ろを掻きながらシュウは答える。

 今までも何度か武器を新しくしようかと武器屋に足を運んだが、どれも今の小剣よりも斬れなさそうな気がして買う気にならなかった。

「ふむ。

 見る目もだいぶ養われてる訳か。

 たしかに近頃の武器屋に並んどる武器は他の街から入って来とる物で質が悪い。

 店が悪いのか……

 それとも……」

 空いた手を顎にやりながらシモンは考え込んでいるようだった。

「坊主。

 それでも自分の実力に合った武器を見つけるのも、戦う上で大事なことだ。

 今日のとこはこの剣を少し鍛えてやるが、いつまでもこの剣ではどこかで限界がくる。

 自分好みの剣を探すことを忘れるな」

 そういって、自分の金床に小剣を乗せ鍛える準備を始めた。

「作られた武器はそこで終わりじゃねえ。

 持ち主が大事に使ってやると持ち主と同じように成長しようとしやがる。

 俺達鍛冶師はその成長を昇華させることができる。

 まあ誰でもできるって訳じゃねえがな。

 この工房、いや、この街でできるのは俺ぐらいか……

 ちょっと見てろ」

 小剣を鞘から出して、柄を外した。

 炉に刀身を入れしばらくすると熱せられて赤くなる。

 刀身を取り出し金床に載せると、横の台の棚から何か粉末を何種類か取り出し、刀身に振りかけた。

 そして、槌で粉末を刀身になじませるように全体を叩いていく。

「!?」

 全体を叩き終える頃にシュウは刀身が光ったように感じた。

 赤くなっていた刀身がいつの間にか元に戻っており、先程よりも鋭さが増したように感じる。

「これでまたしばらくもつと思うが過信はするな」

 刀身を確認して柄を戻し鞘に納める。

 後から聞いた話だが、この強化の技はシモンがドワーフの下で修業していた時に教わったもので、ドワーフでも一部の者しかできないそうだった。

 シモンが鍛冶の弟子に伝授しようとしても未だに成功した者はいないとのこと。

 弟子たちにも話を聞くと、この街どころかこの国でもできるのはシモンぐらいとの話だった。

「こいつができても、結局その場しのぎにしかならねえ。

 もっと強え武器があるならそっちを使った方が早え。

 だから広まらずに廃れつつあんだろうな。

 武器と特殊な素材に変わった技が必要ときたもんだ」

「どうして今この剣にしてくれたんですか?」

 シモンが差し出された剣を受け取りながら尋ねる。

 シモンはシュウが剣を受け取ると、背を向け窓辺まで歩くと部屋に籠った熱を吐き出すように窓を開けた。

「……坊主ならいつか……な」

 手の中の小剣はまだ熱を帯びているように温かかった。


 その日魔導書を確認すると鍛冶スキルの横に書かれたスキルレベルが上がっていた。

異世界物の定番の生産スキルを獲得するシーンを本編に入れ忘れました。

本編書き始める前の妄想してる間は主人公はガチガチの生産職の予定だったのを書いてて思い出しました。



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