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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
36/303

35.地下水道の攻防

お待たせしました。

前回以上に長くなってしまいました。

ゆっくりお愉しみください。

 改めて昇格クエストの地下水道の調査について説明された。

 街の下にある地下水道を回って異常がないか見回って、最後に奥にある魔術装置のバッテリーを交換してくる。

 主な入口は鉄格子で封印されているらしい。

 ただ人工的に整備された部分もあるが、元々は天然の洞窟を改造したとのことで、手付かずの部分もあるようだ。

 そして、問題となるモンスターだが、水道というだけにゲームでも定番のスライム、リトルバット(小さな蝙蝠)、ビッグフロッグ(大きなカエル)が出るようだ。

 スライムはドラゴンなんちゃらの最弱でカワイイマスコットタイプではなく、他スライム特有の剣などによる物理攻撃に耐性を持ち、拳やこん棒による打撃はほぼ通らないらしい。

 ただ体内にある核が弱点でそこを狙えば魔術が使えなくても倒せるようだ。

 どのモンスターも一匹一匹はそれほど強くないらしいが、クセが強く、人の出入りが制限されている場所なのでピンチになっても偶然人が通りかかることがない。

 なので、万が一のことを考えてソロではなくパーティ必須のクエストとなっていた。

 そういった説明をサーシャから受け、入り口のある場所を教えてもらい、シュウ達三人はギルドを後にした。


 ギルドを出て三人は地下水道への入り口へ向かいつつパーティでの立ち回りについて相談していた。

 この中で盾を持って敵を引き付けるスキルを持つのはクランしかいなかった。

 シュウは年下の子に盾役、いわゆるタンクを任せるのにとても気が引けた。

 だが、クランが手を握りしめて力強く、

「俺にやらせてください!」

 と言ってきたので任せるしかなかった。

 ただ、ワイルドラビットとの戦いを横から見ていたシュウは素人考えではあるが、こうした方がいいんじゃないかという点をクランとリンに話した。

 二人とも熱心にその説明を聞いていた。

「と、クラン君は敵だけじゃなく後ろの味方の位置を常に頭に入れて、離れすぎず近すぎずって感じで。

 突っ込み過ぎは駄目ね。

 リンさんは逆にクラン君と離れ過ぎないところで、クラン君が重なって狙えない時は自分から少し動く。待ってたら攻撃のタイミングが遅くなるからね。

 それをクラン君も考えて常に周りを見ること」

 二人はそれぞれ言われたことを自分の中で何度も繰り返し、イメージしているようだった。

「あ、でも、ほんと素人の意見だから間違ってるかもしれないからね」

 元々地球では普通に暮らしていた高校生で、戦ったことなどケンカを含めてもない。

 遊びのゲーム知識ぐらいでしかなかった。

(このクエスト終わったらルーツさんを紹介して、パーティの動きを教えてもらおうか)

 シュウが二人をルーツの所に連れて行こうかと考えているのを、クランがもの言いたげな目で見ていることに気づいた。

「ん?どうしたの?

 やっぱなんかおかしいとこあった?」

「いえ。

 言われたとこは頑張って直そうと思う。思います。

 それよりも、シュウさん、俺の事はクランでいいです」

「わ、私もリンって呼んでください」

「え?ああ、わかった。

 じゃあ僕もシュウで……」

「いえ、シュウさんはシュウさんで」

「で、です!」

 二人はシュウが年上なだけじゃなく、自分達よりも強く尊敬できるからと力説してシュウに有無を言わせなかった。

「じゃあ、クランとリンよろしくね」

 押し切られたシュウは頭を掻きながらクランとリンに言った。

「お願いします!」

「は、はい。よろしくお願いします!」

 二人は元気よく頭を下げた。

(高校でも部活入ってなかったから後輩なんてそんないなかったのに…

 ちょっとは仲のいい奴作っておくんだった)

 年下を引っ張るという慣れないことに心の中でため息をつくシュウだった。

 ただこの先これが年下だけじゃなくなることはまだ彼は知らない。


 そんな話をしているうちに街の隅にある水道への入り口に着いた。

 大きな道の傍を流れる川の横に階段で降りて、人が入れないように鉄格子で封鎖されていた。

 しかもこの鉄格子、通常の鍵ではなく、冒険者ギルドと衛兵が一つずつ管理する魔力の込められた水晶で開くという。なんというファンタジー。

 こうしないと、鍵を壊されたりして地下水道で悪い人たちが悪いことに使ってしまうという、笑っているはずなのに目が笑っていないサーシャが説明していた。

 鉄格子を開ける前に、クランとリンに準備はいいか確認した。

「はい!いつでも!」

 元気よくクランが答え、横でリンが同じく頷いている。

「二人とも回復用のポーションとかも大丈夫?」

 少し心配し過ぎかなと念のために確認するシュウ。

「「え?」」

 両手を握りしめたまま、目だけ点にして見返してくる二人。

「か、下級ポーション持ってる?

 僕たちヒーラーいないから回復はポーション頼みだよね」

 シュウは治癒術が使える事を誰にも話していない。

 あの魔術書は異質で、まだわかっていないことも多いが広まれば面倒なことになりそうだと勘が告げていた。

「ポーションは高いので……

 傷薬なら」

 クランとリンがポーチから傷薬を取り出して見せた。

 ここでポーションと傷薬の違いは、ポーションは飲んだり傷口に掛けることで傷を瞬時に癒すことができる。

 傷薬は傷口に塗ると徐々に傷を癒すことができる。

 どちらも傷を癒すことに違いはないが、瞬時に傷が癒えるポーションの方が高かった。

「じゃあ、僕の持ってる下級ポーションを二人に分けるからポーチに入れてて。

 自分が危ないと思ったら絶対使うこと。

 勿体ないとか言うのはナシね!」

 魔法鞄から下級ポーションを取り出し、二本ずつ二人に渡そうとする。

「え!いやでも、こんな高価な物……」

「あーワイルドラビットの時も、ポーションなかったから傷薬使ってたんだね。

 だから体中痣だらけだったんだ」

「うっ……」

 ワイルドラビットの一件の時、医務室でクランの体を確認したシュウは痣だらけだったことを思い出した。

「まあまあ、命が一番大事だから。

 それにこの下級ポーションは僕が作ったやつだからお金かかってないんだよ」

「「えっ!?」」

 シュウの言葉を聞いてさらに驚く二人。

 シュウは以前薬草を採集したあと、薬屋で下級ポーションの作り方を習って自作できるようになっていた。

「まだ、慣れなくて品質はそんなに高くないけど無いよりはって感じで。

 はい。ほんとに傷を受けたら使ってね。

 使ったらまた渡すから」

 シュウは二人に下級ポーションを握らせた。

「あ、あのお代は……」

 受け取ったリンが困った顔でシュウを見上げながら言ってきた。

「お金はいいよ。

 僕たち今はパーティの仲間だろ?

 助け合っていこ!」

 笑いながら二人に言うが、

「で、でも……」

 リンは引き下がらなかった。

「んーじゃあ、今度薬草採集のクエストを一緒に行って薬草を一緒に集めてくれるっていう約束でどう?」

 この二人ならあの群生地を教えても大丈夫だと思えた。

 そして、リンなら薬屋にも紹介すれば下級ポーションを自作できるようになるかもしれない。

「わ、わかりました!

 ありがとうございます!」

「ありがとう!」

 シュウの条件を承諾し、困った顔からパァっと笑顔になって二人はお礼を言った。

「さ、ポーションを仕舞って仕舞って。

 地下水道に行ってみよう」

 シュウはポーションを握りしめたままの二人を促して鉄格子に向かった。


 シュウが鉄格子の前で水晶に魔力を込めるとギィィと鉄格子が自然と開いた。

 三人が通って少し進むと鉄格子は勝手に閉まってしまった。

「モンスターに追われて戻ってきても、すぐには出られない……か。

 慎重に行こう。

 タンクを任せるから僕はスカウト役みたいにいくね」

 スカウト役は敵の接近を察知したり、敵をパーティに誘導したりする役目である。

「今までたくさんの人が調査に来てるはずだから、罠とかは無いと思うけど……

 トラップ察知とかはできないから、ごめんね」

 先に二人に謝ってから、気配察知に集中して先頭を歩き出した。

「シュウさん」

 歩き出したシュウに向かって、少し声を落としたクランが話しかけてきた。

「ん?なんだい?」

「さっきもらったアドバイスを実践で試したいので、狩りやすそうなモンスターがいたら一度戦っておきたいです」

「了解した」

 シュウもパーティを組んだ状態での動きに慣れておきたいと同意し、一匹でいそうなモンスターの気配を探した。

 進みながら気配察知でモンスターを探していると数は多くないが地下水道の広く点在しているようだ。

 その中で一番近くのモンスターの方へ向かうことにする。

 

 地下水道は定期的に調査に人が来ることもあり、真っ暗にならないように魔術装置で光源が確保されていた。

 ただ長時間光らせるために光量を落としているため真っ暗よりはマシな程度で、外に比べると十分暗い。

 シュウは冒険でいつか使うかもと松明を魔法鞄に入れているので、これよりも暗くなったら出そうと心のメモに書いた。

 曲がり角まで来た時、角から顔を出しその先を確認。

 少し戻って二人を手招きした。

 サーシャから事前に水晶と一緒に渡されていた地図を取り出し、だいたい今いるあたりを指差し、そこから角を曲がった少し先をトントンと叩き、人差し指を立てた。

(今この辺りで、角を曲がった先にモンスターが一匹いる)

 察した二人はシュウに頷きで応えてくる。

 シュウは弓と矢を取り出し、矢を水道の真ん中を流れる水路に浸けて深さを確認するが、矢羽根の辺りまで浸かっても底に届かなかった。

 クランとリンに水路を呼び差し、首を横に振って、水路は危ないと合図をする。

 今三人が立っている通路は幅が二メートルほどしかない。

 ただ歩くだけなら問題ない幅だが、戦うには心もとない幅である。

 シュウは右手で自分を指差し、その次に角を指差した。

 それから左手の弓を軽く持ち上げ、次に右手の指を角からスーッと通路に沿って移動させ、クランの横を通り過ぎさせた。

 そして、今度はクランを指差しスッと前に指を移動させた。

 シュウの一連の動きを見て、再度クランとリンはシュウに頷きを返した。

 それを見たシュウは二人に親指を立てて応え、曲がり角に体を向けた。

 慎重に曲がり角まで進み、モンスターがまだそこにいることを確認し、角から半身を出し、弓に矢を番えた。

 二人に視線だけで合図を送る。

『行くよ!』

 モンスターに視線を戻し、矢を放った。

 矢はモンスターに刺さり、態勢を崩したようだが、すぐにシュウのいた角に向き直り、向かってきたようだ。

 その時には、シュウは角から身を返し、クランとリンが待つ方へ中腰で走っていた。

 追ってきているのは気配察知で確認済み。

 モンスターが角から姿を見せるころ、シュウはクランの横をすり抜け、リンの前で止まった。

 そして、クランが剣と盾を構えて前に出た。

 角から姿を現したのはビッグフロッグ。

 体長八〇センチメートルはある大きなカエルだ。

 

 向かってくるビッグフロッグを見てクランは、

(でかい!こえぇ!)

 と心の中で叫んでいた。

 ちらりと後ろを見る。

 心配そうなリンが目に入った。

 いつも一緒にいる妹だ。兄の実力を兄以上に知っているのは妹かもしれない。

 そして、今日はそこにシュウもいた。

 シュウは何も心配した様子もない顔でクランを見つめていた。

 弓を背負い直し、小剣を抜いて待機している。

 視線から

『お前を信じてる』

 という意思が伝わってくるようだ。

 近づきつつあるビッグフロッグに視線を戻し気合と共にスキルを発動させる。


 挑発系スキル セイタウント


 ビッグフロッグの視線がクランに切り替わったことを感じる。

 ビッグフロッグは近づいてくる勢いそのままにクランに体当たりをするつもりのようだ。

(ここで躱すと、こいつを二人に通すことになる!

 ここで止めるんだ!)

 クランは腰を落とし、盾を前に出し受ける姿勢を整える。

 ガッ!

 そこにビッグフロッグが体当たりをするが、クランは足を踏ん張り、体勢を崩さない。

 勢いが止まったビッグフロッグに剣を叩きつけ、顔に盾を当てて一歩下がる。

 ビッグフロッグは盾の衝撃で体勢を崩した。

 そこにクランの横をサッとシュウが通り過ぎ、小剣で斬りつける。

「クラン!」

 斜め後ろからリンの声が聞こえたので、さらにバックステップで下がる。

 リンの射線を確保。

「エアーショット!」

 リンから見えない風の斬撃が飛び、ビッグフロッグを切り刻んだ。

 ケエェェ……

 ビッグフロッグが小さく鳴き声を上げ、倒れて動かなくなる。

 三人ともビッグフロッグが動き出さないか、しばらく待った。

 シュウが小剣を鞘に納めたのを確認して、クランは息を吐いた

(やったのか?俺?

 上手くできのか)

 自分も剣を鞘にしまって、少し震える右手を見つめる。

 そして、シュウに視線を向けると。

 こちらにグッと親指を立てて、

「完璧」

 と笑いかけてくれた。

 クランは右手を握りしめてガッツポーズを決めた。


 今の戦闘を振り返ってシュウは大丈夫そうだと安心した。

 最初は不安そうな顔をしていたクランだったが、いざビッグフロッグを前にしても臆することなく受け止め、冷静に動けていた。

 この地下水道にいるモンスターで一番大きいと思われるビッグフロッグの体当たりに負けてないので、他のモンスターに押し負けることはないだろう。

 ただ、子供のクランが見た目以上の力を持つように、モンスターも見た目以上の力を持つモノもいるので油断はできないが。

「いい感じだったね!

 クランは逃げずに受け止めたし、リンも魔術の合図とタイミングもバッチリだった!」

 シュウは二人の動きを賞賛した。

「ありがとうございます!」

 右手を握りしめたクランは嬉しそうにお礼を返した。

「あ、ありがとうございます」

 リンは嬉しいのと恥ずかしいのが半々といった感じで杖で顔を隠していた。

「よし、ササっとビッグフロッグを解体して……

 面倒だな。生きてないし、このまま鞄に入らないかな?」

 シュウは魔法鞄の口を開け、ビッグフロッグを袋に入れると魔法鞄に入らないかなと試してみた。

 するとシュッと袋が吸い込まれるように入っていった。

「あっ入るんだ?」

 シュウは自分でやっておきながら、驚いた様子で周りの二人を見回した。

 クランとリンはシュウの魔法鞄を凝視しているようだった。

「あ、あのシュウさんの鞄は魔法鞄だったのですか?」

 恐る恐るといった感じでリンが尋ねてきた。

「え、あ、うん。これ。そうみたい」

 シュウが魔法鞄を持ち上げて答えた。

(あ、そうかすごい高価なんだっけ。

 冒険者になりたての僕が持ってるには不釣り合いな)

「村から出るときに餞別にってもらったんだ」

 自分でも苦しいと思いながら魔法鞄を持っている説明をして、

「魔法鞄について知ってる?

 何の説明もなしに渡されてよく知らないんだ」

 持ってはいるが詳しくはないと宣言し、何か知らないかと二人に尋ねる。

 早々にクランはギブアップし、リンに視線を投げた。

「え、えと。鞄の中が空間魔法で作られていて、見た目以上に物を入れることができます。

 先程のように、生物じゃない限り鞄に入れることができて、中では時間が止まっているそうです」

「時間が止まっている?」

「え、えと。お肉などを入れても腐らないとか。

 温かいスープを入れておいて、何時間か後に取り出しても温かいままみたいです」

 以前、宿屋のリームからすごい価値があるとだけ聞いていたが予想以上に価値がある様だった。

「なにこれすごい」

 自分の下げている鞄のすごさに軽く引く。

「とりあえず倒したモンスター入れていくから後で分けようね」

 そういえば、入れた物の重さがしないなと不思議に思ってたのだが別の空間になっていたとは。

 たくさん入るだけじゃなかったんだなとしげしげと鞄を見つめた。


 それから三人は地図で位置を確認しながら、地下水道を調査して回った。

 モンスターが大量発生!ということもなく、シュウの気配察知で察知していたようにほとんどのモンスターは群れずに点在していたので、ビッグフロッグと同じ要領で倒して回った。

 心配だったスライムも打撃武器を使うのはリンの杖だけなので、剣を使う前衛二人は的確に核を狙うことで倒すことができた。

 リトルバットは素早く飛び回って翻弄しようとしてきたが、しっかりとクランがターゲットを引き付けたお陰でシュウが弱らせてリンが止めというパターンに持ち込むことができた。

 粗方一匹でいたモンスターを倒し終え、リンの減った魔力のこともあり少し休憩を取った。

 そして、後の数か所はモンスターが二匹以上いる感じがすると二人に告げた。

 モンスターが複数だった場合でも、シュウが釣る際に一匹だけ釣る努力はする。

 が、リンクしてしまった場合は、クランが一度全部の敵のターゲット(狙われること)を取って防御に徹し、その間にシュウとリンで一匹を集中攻撃して数を減らしていく作戦を取った。

 この作戦もうまく機能し、危なげなく対処をすることができた。

 

 そして、地図に書かれた場所を回り終わったので、最後に魔術装置の場所に向かった。

 あとはサーシャから渡された水晶玉を交換して終わりである。

 三人はモンスターを倒し終わってやれやれとリラックスして、装置に向かって進んだ。

 魔術装置には渡された水晶玉と同じものが三つ設置されており、淡く点滅していた。

 だがその中の一つは今にも光が消えそうだった。

 交換するのはこれだなと、シュウはその水晶玉を外し、持ってきた水晶玉をその窪みに嵌めた。

 三つ揃った水晶玉が一斉に光り、等間隔で点滅することを確認した。

 魔術装置も特に異常は見られず、水の循環も変わらないので交換は上手くいったのだろう。

「よし、これで終わりですね!」

 魔術装置を眺めていたクランが右手の拳を左の手のひらに打ち付けながら言った。

「やった!これで私たちEランクだね!クラン!」

 リンも昇格できることをクランと喜んでいた。

 

 

 ふと、シュウは装置の裏を覗き込んだ。

 ここに来るまでスカウト役に徹していた為、この地下水道の地図を一番見ていたのはシュウである。

 もうほぼ、頭の中に地図が出来上がっているほどである。

 今いる魔術装置の位置は通路の袋小路で、その先はない。

 地図ではそうだった。

 シュウが覗き込んだ装置の裏の壁に、人がしゃがめば通れる穴がぽっかりと開いてその向こうに通路が続いているのが見えた。

 まさかと思い、壁の向こう側に気配がないか集中する。

 ……ゾクッ!

「!?」

 急に動きを止めたシュウに気づいたのはリンだった。

「ど、どうかされたのですか?シュウさん?」

 装置の後ろの壁を向いたままのシュウに尋ねるリン。

 それに、シュウは右手で二人の位置からでは装置に隠れて見えない壁の一部を指差して応える。

 その指が少し震えていることにリンは気づいた。

 クランとリンは装置に近づき、装置の後ろ壁を確認する。

「「あっ!?」」

 穴を見つけ、声を上げる二人に

「しっ!静かに!」

 口に人差し指を当て、静かにするように言うシュウ。

(この気配は“知ってる”)

 たぶんだがこの先にいる“奴ラ”をシュウは知っている。

 穴をくぐって確認に行きたい自分と、それを止める自分がいた。

 頭がほぼ真っ白になって、冷や汗が止まらず、何もしていないのに息を切らすシュウ。

 降ろした手が震えて止まらない。

(どうする!?どうする!?

 水晶玉の交換は終わった……

 ここは一旦帰って……)

 上手く回らない頭で必死に考える。

 そんなシュウの震える手をリンが優しく包んだ。

「大丈夫ですか?

 この先に“何が”いるんですか?」

 リンが手を握ってシュウを見上げながら聞いてきていた。

「!?」

 今の今までリンとクランのことが頭から飛んでいた。

「この奥には……」


「ゴブリンがいる……」


 

 一旦リンはクランと共にシュウを壁から遠ざけることにした。

 リンが耳を澄ましても何も聞き取ることができなかったので、きっと近くにはいないと思われた。たぶん…

 しかし、ここまで引っ張ってきてくれたシュウがこんなに怯えるとは思わなかった。

 たしかに、ゴブリンは普通のモンスターよりも悪知恵が働く、やっかいな相手だった。

 だが、シュウの怯え方は異常に思えた。

 気になったリンはシュウを座らせ、尋ねる。

「ゴブリンとの間に何かあったのですか?」

 ビクッと肩を震わせるシュウ。

「あ、無理には……」

 シュウの様子に無理強いはできないと感じたリンは質問を取り消そうとしたが、

「いや、いいんだ」

 ふーっと深く息を吐くシュウ。

「僕がこのブランジリに来る途中、ゴブリンに殺されかけたんだ……」

「!?」

 シュウの言葉に息をのむリン。

 二人の後ろで装置の裏の壁に注意を払っているクランも驚いた様子だった。

(こんなに強いシュウさんが?)

 心の中で思ったことが顔に出ていたのか

「僕はブランジリに来るまで武器も持ったこともなかったし、戦い方も知らなかったんだ。

 それでゴブリンに襲われて胸をばっさりやれて……」

 シュウは右手で胸を触った。

「偶然通りかかった冒険者の人達がゴブリンを倒してくれて、治癒術をかけてくれて、ブランジリまで連れてきてくれたんだ。

 それから冒険者になって、剣術や戦う術〈すべ〉を学んでなんとかできそうと思ったんだ。

 でも、数日前にクエストで森に入った時、同じ気配を感じた。

 嫌な予感を感じつつ、向こうに感づかれずに見えるとこまで近づいて確認するとゴブリン達だった。

 そしたら、こうだよ」

 シュウは震える右手を持ち上げた。

「もう大丈夫だと思ったんだ。

 武器もあるし、少し強くなったと思ってた。

 だけど、ゴブリンの気配を感じて、ゴブリンを見ると、殺されそうになった瞬間を思い出しちゃうんだ。

 今度は誰も助けてくれずに殺されるかもしれないって考えちゃうんだ……」

 シュウは震える右手をそのままに顔を俯けてしまった。

 薄暗い中でもその顔は真っ青だとわかった。

 リンは再度震えるシュウの右手を両手で握った。

「シュウさんはどうしたいですか?」

「えっ?」

 驚き、顔を上げるシュウ。

「私たちはシュウさんに従います。

 このまま帰ってもいいですし、奥を確認してもいいです。

 なんなら行ってこいって言われるなら、私だけでも行ってきます」

 顔を上げたシュウを真剣に見つめるリンの顔がそこにあった。

 ここまでの道中でシュウが話しかけても自信が無いようにどもっていたリンがここにはいなかった。

「僕は……」

 シュウは目を瞑った。

(僕はどうしたい……?

 このまま帰ってもいいのか……?

 このまま帰って……)


 シュウの脳裏に遠ざかる一つの背中が浮かんだ。


(ここで帰ったらあの背中にはずっと追いつけなくなる!)


「僕はこの先を確認したい」

 目を開き、シュウはリンの顔を見つめ返した。

 活力が戻った目に見つめられ、顔を赤くするリン。

 そんな二人の背後から、

「俺たちはもうパーティで、シュウさんがリーダーだ。

 リーダーが行きたいなら俺たちはどこでも付いていく」

 クランが壁から目を放さないまま言った。

 シュウは右手を握ってくれていたリンの手に左手を重ねて、立ち上がった

「ありがとう。

 二人とも」

 もう手の震えは止まっていた。

 リンの手を引いて立ち上がらせ、

「行こう」

 壁に向き直った。


「気配の感じ方から、森で見かけたゴブリンのパーティだと思う。

 見かけた数と気配の数は一致してて四つ。

 壁の向こうすぐにいるんじゃなく、この先ちょっと行ったとこで右に曲がる道があるのか、そこに固まって何かしてるんだと思う」

 ゴブリンの気配には敏感になっているのか個体まで判断できる気がする。

「で、どうします?

 その何かしてるのが終わるのを待ちますか?」

「作戦は変えない。

 僕が引っ張ってくるから、クランがターゲットを取って、僕とリンで集中して各個撃破。

 クランは今まで以上に防御に専念して。

 無理に攻撃するより防御重視で。

 ゴブリンは武器を持ってるから、ここまでの敵と攻撃力が違うはず」

「りょーかい」

 クランが盾持ち上げ、カチャリと握り直しつつ答えた。

「リンもクランの形勢が不利になったら、補助を優先で」

「わかりました」

 リンが使える魔術には敵の動きを阻害するものがあった。

「で、僕も全力で行く」

 そういって、長めの上着に隠れていた腰の改造型ホルスターから魔術書を取り出す。

「本です……か?」

 取り出した本が何かわからないリンは尋ねる。

「まあ見てて。

 準備ができたら行こう」

 そう言って、シュウは穴の前まで静かに移動して中の様子を伺った。

 装備の具合とポーチの中身を確認し終わった二人も静かにシュウの傍まで移動した。

 

 気配察知で感じた通り、穴から覗いて見える範囲にゴブリンは見えなかった。

 シュウはクランとリンに目配せし、音を立てないように穴をくぐった。

 次にクランが続き、最後にリンがくぐった。

 そこで小さな声で最後の作戦会議を行う。

「リン。

 僕とクランはゴブリンを君に絶対通さないようにする。

 でも、万が一、二人が持ち堪えられない判断した時、僕の合図または自分の判断でここを抜けて、ギルドまで救援を呼んできてほしい」

「!?

 そ、そんな私も!」

「しっ!

 万が一そうなった場合、傷を受ける確率の少ない君が向かった方がみんな助かる確率が高い」

「女で魔術師のリンの体力よりも、男の俺たちの方が耐久力があるってこと。

 そん時は頼む」

「そんなクランまで……

 ずるい……」

「ま、そうならないようにがんばろ!

 行くよ!」 

 そう言ってリンに有無を言う暇を与えずシュウは振り返って静かに道を進んだ。

 そして、気配察知で曲がり角を曲がってすぐにもいないことを確認し、魔術書を開いた。

 静かに曲がり角から顔を出し、一番近くにいてこちらに背を向けているゴブリンを視界に入れ、

「ストーンブレッド!」

 シュウの前に現れた石の礫がゴブリンに飛んでいく!

(あれは魔術!?)

 リンとクランは同時に驚いていたが、同じ魔術を扱うリンの方が驚いただろう。

 なんせ、シュウは詠唱を行わずに魔術を発動させたのだから。

 そんな二人をさらに驚かせたのが、

「ストーンブレッド!ストーンブレッド!」

 同じ魔術の連射だった。

 

 シュウは同じゴブリンに三発ストーンブレッドを浴びせた。

 というのも、一番手前にいたゴブリンに一発撃つと不意打ちだったのも合わさり、ストーンブレッドの勢いでゴブリンが吹っ飛び、他のゴブリンを巻き込んだからだった。

 こちらに向かってくるまで余裕ができたと判断してからの連射だった。

 三発撃ち終わる頃には、立ち上がるゴブリンがいたので角から踵を返して走って戻るシュウ。

 走りながら腰に魔術書を戻しつつ、

「一匹は仕留めた!残り三!」

 と、クランとリンに叫んだ。

 後ろからガシャガシャと走ってくる足音がする。

 クランとすれ違い、リンの前で振り返る。

 

 挑発系スキル シャウトタウント


 クランがターゲットを自分に引き付けるスキルを使った。

 ゴブリン達はクランにターゲットを変え、向かってきた。

 先頭を走ってきたゴブリンが短い手斧をクランに叩きつけようとする。

 クランは冷静に盾を掲げ、スピードが乗る前の斧を止める。

 次に近づいてきたゴブリンは剣を持っていた。

 斧を受け止めているため盾で防ぐことができないとわかっているためか、空いている胴目掛けて横なぎに剣を振った。

「来るとこがわかってれば!」

 クランは右手の剣を縦に構え、ゴブリンの剣を受け止める。

 追いかけてきたゴブリンは三体だが、ここで地形が味方をする。

 幅が今までの通路と同じく、二メートル程しかなく、小柄なゴブリンでも横に二体しか並ぶことができなかった。

 しかも、互いに近すぎるために十分に武器を振るうことができなくなった。

 後ろのゴブリンはイライラと前のゴブリン越しにクランを睨むしかなかった。

 その隙にクランの背後に入るシュウ。


  ミスディレクション


 視線誘導スキルで視線をさらにクランに擦り付け、さらに自分の気配を遮断する。

 剣を持つゴブリンが剣を振るタイミングに合わせて静かに素早く横をすり抜けた。

 そして、後ろに控えているゴブリンの背後から首を狙って小剣を振り切った。


 不意打ち

 

 ゴブリンは首から血を噴き上げ、断末魔を上げる間もなく倒れた。

「リン!」

「ブラインドアイ!」

 リンが剣を振るうゴブリンに向けて魔術を放つ。

ギィ!?

 剣を持ったゴブリンは明らかに困惑したように顔を左右に振っている。

 ブラインドアイは一時的に対象の視界を奪う魔術。

 急に目の前が真っ暗になって慌てる剣ゴブリン。

 その隙を見て、バックステップで下がるクラン。

 めちゃくちゃに振った剣が当たるのを避けるためだった。

 クランを追うのは、残りの斧ゴブリン。

 周りの仲間が減っているのにお構いなしで突っ込んでくる。

 そして、最初と同じように斧を振り上げた。

 クランは再度盾で斧を受け止めたが、今度は剣ゴブリンが迫って来ないので剣で斧ゴブリンを斬りつける。

ゴブッ!?

 斬りつけられたことで手が止まってしまう斧ゴブリン。

 再度バックステップで距離を取るクラン。

 そこに詠唱を終えてタイミングを計っていた

「エアーショット!」

 リンの風魔術が斧ゴブリンを切り刻んで、斧ゴブリンは倒れた。


 最後の剣ゴブリンはまだ目が見えていないようだった。

 その剣ゴブリンを壁や地面に小剣を当て、クランの方へ行かせないようにしていたシュウ。

 ゴブリンは目が見えなくても、音に反応して剣を振ろうとしていた。

 シュウは壁や地面に小剣を当て、音を出すことで剣ゴブリンを足止めしていたのだった。

 クランとリンが斧ゴブリン倒したタイミングで、剣ゴブリンが頭を振って獲物を定めるようにシュウ、クラン、リンと視線を巡らせた。

「もう、ブラインドアイが!?」

 ブラインドアイが解け、周りが見えるようになった剣ゴブリン。


 挑発系スキル セイタウント


 クランは改めてターゲットを自分に引き寄せた。

 剣ゴブリンはスキルにかかり、狙い通りクランに向かう。

 だが、今度は斧ゴブリンという障害がなく自由に剣が振れるようになった剣ゴブリンの攻撃はクランに反撃の隙を見出させなかった。

 しかも剣をクランに向けて振りながら、視線を時折リンやシュウに向けてけん制してきた。

(こいつ他の奴よりも強い!)

 シュウがクランの援護に横から小剣で斬りつけても小さな盾で受け止めてきた。

ギィギッギッギッ!

 クランが辛抱強くターゲットを維持していても、小さな傷が増えていく。

 それを剣ゴブリンがニヤニヤと見つめる。

 このままだとジリ貧だとクランが焦り始めた頃、ゴブリン越しにシュウと目が合った。

 何かを仕掛けるように感じた。

「うおおおおおおおっ!」

 クランはゴブリンの気を引くように、大げさに声を上げ剣を大振り振った。

ギッギッギッ!

 剣ゴブリンはクランがヤケになったと笑って大振りの剣を躱した。


「ストーンブレッド!」

 剣ゴブリンの背後から石の礫が勢いよく襲った。

 クランの剣に注意を払っていた剣ゴブリンは体勢を崩した。

 そこにクランが剣気を込めて


 片手剣基本剣技 ダブルブレード


 斬り下ろした剣をV字に斬り上げた。

ギイイイイイイイ!

 剣ゴブリンは踏みとどまって怒りの咆哮を上げてクランを睨みつける。

 そこに背後から赤い光が立ち昇る。


 片手剣基本剣技 バーニングブレード


 シュウの持つ小剣が赤く発行し、熱を帯びているのがわかる。

 そのまま剣ゴブリンに叩きつける。

 シュウの小剣がゴブリンを斬りつけながら傷口を焼いた。

 そして、小剣から解放された熱の剣気がクランの剣技から解放された剣気と交わり炎の渦を巻く。

 剣ゴブリンは炎の渦に捕らわれ身動きが取れなくなった。

「火よ!我に立ちふさがる者を打ち砕け!ファイアボール!」

 リンが詠唱を完成させ、両手を前に突き出す。

 その手の先に火の玉が生まれ、剣ゴブリンに向けて撃ちだされた。

 ファイアーボールは剣ゴブリンの周りに渦巻く炎を取り込み爆発を起こした。

 

ギィッギィッ…ギ…ィ…


 剣ゴブリンは爆発の煙が収まると小さく声を上げ地面に倒れた。


 三人ともしばらくそのまま動くことができなかった。

 まず動いたのクランだった。

 というよりも、疲労に耐え切れず仰向けに倒れこんだ。

「なんだよ。めっちゃ強かったーー!」

 ヤケになったように叫ぶクラン。

「もう。ほんとヘトヘト」

 リンもその場にへたり込んだ。

 シュウだけは小剣を鞘に戻し、剣を握っていた右手を呆然を眺めて

「勝った?

 僕、いや僕達勝ったのか」

 と呟いた。

「そうですよ!

 俺達で勝ったんですよ」

 仰向けで倒れたまま、親指を立てた右手を上げるクラン。

 リンにも顔を向けると恥ずかしそうに小さく右手の親指を立てていた。

「ありがとう。二人とも。

 本当にありがとう」

「お礼を言うのはこちらです、ここまで引っ張ってくださってありがとうございます」

 頭を下げようとするシュウに向かってお礼を返すリン。

「そうだぜ。リーダー。

 俺達パーティ……」

 パタッ

 そこまで言ったところで、クランが白目になって手を落とした。

「クラン!」

「わあああああ!

 おにいちゃんん!」

 慌てて駆け寄るシュウとリン。

 二人してポーチから下級ポーションを取り出しクランにぶっかけるのだった。


 しばらくすると、クランが目を覚ましたのでゴブリンの討伐証明部位の耳を切り取って小袋に入れた。

 持っていた武器などもあるが、自分たちを殺そうとした武器を持ち歩く気にもならず、品質もそんなに高そうでないため、置いていくことにした。

 帰りはモンスターがいないためサッと出口まで戻り、冒険者ギルドに向かった。

 サーシャにクエスト達成の報告をして、無事Eランクへ三人揃って昇格となった。

 ギルドカードを更新するのを待っている間に地下水道の魔術装置の後ろの壁が壊され、ゴブリンがいたことをサーシャに話した。

 サーシャは壁は昔はもっと広かった水道を整備する際に使われなくなった道を塞いだものだろうと説明したが、ゴブリンがそこにいたことを訝しんだ。

 マルクやギルドマスター・衛兵団と情報を共有して、再度地下水道を調査すると約束をしてくれた。

 そして、報告が終わったころに丁度ギルドカードが出来上がり、クエスト報酬と一緒に受け取りその日は解散となった。

 

 冒険者ギルドの前にて、

「二人とも今日はありがとう!

 本当に助かったよ」

 クランとリンに向け、再度お礼言うシュウ。

「もう、何度もいいですって。

 それは俺達もほうこそなんでお互い様ですよ!

 それに俺たち二人だけだったら行ける気がしませんでしたね」

 シュウにお礼はもういいと言い、クランとリンだけだと今回のクエストは厳しかったと言った。

「うんうん」

 リンも大きく首を縦に振っている。

「もし二人が良ければなんだけど、また一緒にパーティ組んでくれないかな?」

 シュウは思い切って言ってみた。

「も、もちろん喜んで!」

 クランよりも先にリンが食いついてきた。

「俺達みたいなのでいいんですか?」

 クランがリンに若干引き気味にシュウに尋ねた。

「今日だけでもかなり連携が取れてたと思うし、足りないところはこれからお互いに伸ばしていこうよ」

 シュウは二人の前に右手を差し出した。

 クランが驚いたという顔をしつつも笑顔になり、

「よろしく!

 リーダー!」

 と、元気よく握手した。

「よろしくお願いします!」

 シュウとクランが握手をしている上に手を添えるリン。

「早速なんだけど、二人に紹介したいところがあるんだ。

 明日空いてないかな?」

 クランとリンの顔を見てシュウは聞いてみた。

「俺達特に予定を立てて行動とかしてないので空いてますよ」

 クランが頭に両手をやりながら答えた。

「ど、どこにいかれるんですか?」

 リンが気になったようで行き先を聞いてきた。

「僕の剣術や冒険者の心得を教えてくれた師匠みたいな人の所だよ。

 パーティを組むからには動き方も指導してもらえるかなと思って。

 それならみんで聞いた方がいいかなとも思ってね」

「シュウさんのお師匠さんか!

 いいですね!俺もなんか教えてほしい!」

「わ、私も魔術以外にも何かあれば戦える術増えるかも」

 シュウの提案に二人とも乗り気になってくれたようだった。

「よーし。じゃあ待ち合わせどこにしようか?

 二人は宿どこに取ってる?」

ビシッ

 と、音がしたように二人の動きが止まった。

「お、俺達装備にお金かけすぎて、宿引き払っちゃったんですよ…」

「クランが先輩冒険者の方から一人一泊一五〇〇ガルの安い宿を紹介してもらったんですが……

 でも、今日はクエスト報酬も入りましたし、そこに戻れば大丈夫です!

 えっと場所は……」

 一人一泊一五〇〇ガル……!?

「それって本当に安いの?」

 シュウは恐る恐る二人に宿の値段が安いのか聞き返した。

「さぁ?宿に泊まるのってこの街に来て初めてですし。

 村では自分の家に住んでたからなー」

 顎に手を当て、考えるクラン。

「ちなみに言うと、僕が部屋を借りてる宿は素泊まりで一泊五〇〇ガル。

 朝と夕とご飯は別払いだけどそこまで払ってないよ……」

「「!?」」

 シュウの言葉にムンクの叫びのような顔を見せる兄妹。

(この二人、ワイルドラビットのクエストの時も同じようなこと言ってなかったっけ?)

 二人の行動には目を光らせた方がいいかもしれない……。

「あ、あのシュウさん。

 そのお宿のお部屋は空いているでしょうか?」

 リンがシュウの宿の空き部屋を確認してきたが、シュウの知る限りシュウ以外の客を見たことがなかった。

「僕以外客見た事がないから、埋まってはいないと思う……」

「紹介してもらってもいいですか!」

「え、あ、うん」

「ちょっとギルドに荷物預けてるので取ってきますね!」

 リンが冒険者ギルドに向かって突撃していった。

「え~っと。お世話になります。

 俺も荷物受け取ってきます」

 リンに呆れ気味のクランはゆっくり歩いて冒険者ギルドに入っていった。


 冒険者ギルドの二階から同じ方向に向かって行くパーティを見下ろしている人影がいた。

 その人物に音もなく近寄り声を掛けるまた別の影。

「では、聞こうか。地下で何があった」

 

本当に読むと疲れるぐらい長くなってしまいました。

途中分けようかと思ったのですが一章終わる終わる詐欺を何とか回避したく、

長文を強行いたしました。

これにて、第一章終わりです。

やっとパーティを組めて冒険できそうですね!

次回予告

第二章開幕!1.パーティ解散!

お楽しみに!(嘘)

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