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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
35/303

34.昇格クエスト FからEへ

だんだん暑くなってきましたね。

みなさんいかがお過ごしでしょうか。

また長くなってしまいましたが、

ごゆっくりお読みください(目逸らし)。

 フォレストバードのクエストからも休日や住民クエストを挟みつつ、クエストをこなしていった。

 草原に自生する綿花採集や廃棄された坑道へ鉱石を掘る様な様々なクエストを。

 

 そしてその日もクエストボードで依頼書を見繕っていると、横から服の袖を引っ張られた。

 「へ?」

 疑問符を出しながら横を見ると袖を引っ張るサーシャが立っていた。

「おはようございます。

 今日もクエストですね?」

 挨拶をしつつ尋ねられたので、こちらも挨拶を返しながら答える。

「おはようございます。

 はい。今日も外に出るクエストを受けようと思いまして」

 クエストボードからサーシャに向き直り、いつもは受付の中にいるのに表に出てきている理由を尋ねた。

「サーシャさんどうしたんですか?

 受付から出られるのって珍しいですね」

 サーシャは冒険者に人気があるので、受付窓口に立つと列が集中してしまうのでギルドマスターから指定された個人担当を主にしている。

 それでも人気が収まらないので表に出てくると、声を掛けようとする人だかりが出来てしまうのだ。

 今日もシュウとサ-シャの周りには、誰が初めに声を掛けるかのシュウ以外による冒険者達の駆け引きが始まっていた。

「サ、サーシャーちゃ……」

 一人の冒険者が意を決しサーシャに声を掛けようとして、

「おい、兄ちゃん。

 肩に虫が止まってるぜ、そうだ。ちょっと話がいい話があるんだあっちに行こうや」

 と、強面の冒険者に肩を掴まれ、その仲間と思われる男たちに囲まれギルドから出て行った。

 遠くから悲鳴が聞こえた気がするが誰も気にしなかった。

 ちなみにここまでの動きはシュウとサーシャに気づかれないように行われている。

(サーシャは薄々感づいているが)

「ちょっとお話があるのでいつもの個室に行きましょう」

 サーシャはシュウの手を取り個室に連れて行った。

 連れていかれるシュウの後ろ姿に殺気を込めた視線で見つめる多数の冒険者達とそれを冷めた目で見つめる女性冒険者達が残された。

 シュウはギルドで久々に感じた殺気だな~と思いながら個室に入っていった。

 以前の一件後、副ギルドマスターのマルクからシュウの担当にサーシャが付いた説明があり、シュウに手出しすると罰するとシュウの知らないところで通知されていた。


 個室に入り席に座ると再度シュウは尋ねた。

「いつもは表に出てこられないのに今日は珍しいですね。

 何か用事があったんですか?」

 シュウの質問に笑顔でサーシャは答えた。

「ええ!

 シュウさんにご用だったんですよ。

 クエストを決められる前にお話ししたくて待っていました」

「僕ですか?

 何かやらかしました?」

 シュウは最近の自分の行動を思い起こすが心当たりはなかった。

「いいえ違いますよ」

 サーシャはそんなシュウを見てクスクス笑った。

「今日はシュウさんをお呼びしたのは、

 ジャーーーン!

 シュウさんに昇格クエストを提示するためでしたー!」

 サーシャは自分で付けた効果音とともに一枚の依頼書取り出し、シュウに見せた。

「昇格クエスト……?」

「あっ。

 もちろん覚えていますよね?

 私ちゃんと最初に説明しましたよね?」

 シュウは現在Fランク。

 これより上のクエストを受けるには昇格クエストを受けてクリアしなければならない。

 そして、すっかりシュウは忘れていた。

「も、モチロンデスゥ」

 視線を外して答えるシュウに、ため息を吐いてサーシャは話した。

「やっぱり……。

 大抵の冒険者の方はFランクを早く脱したいので、自分から昇格クエスト受けられるようになったか聞かれるのですが、シュウさんは一度も聞かれなかったのでもしやと思ってたんですよ」

「うっ……」

 さらにサーシャから視線を逸らして冷や汗を流すシュウ。

 冒険者はクエストを成功するとクエストに応じたポイントが溜まっていき、既定のポイントまで溜まると昇格クエストが受けられるのだ。

 これはギルド側で管理されているので自分から聞いて確認するのが基本だが、ギルドが注目している冒険者はギルド側から促されることもあるようだった。

 そして、このポイントは住民クエストは比較的簡単なので低めに設定されているが、住民の評判などでギルドの評価が左右され優遇を受けることもある。

「シュウさんは大分前から昇格クエスト受けれたんですよ?

 いつ言われるのかな~と思ってたのですが、言われないので忘れているのではと……。

 正解だったみたいですね」

「面目ありません」

 俯き、反省するシュウにフフッと笑いサーシャは、

「それだけ、冒険者の生活が楽しかったってことにしておきましょう」

 右目をウィンクをして笑いかけてくれた。

「それでは、説明しますね。

 シュウさんは現在冒険者のスタートラインであるFランクです。

 そして、Eランクになるための昇格クエストを受けられます。

 それが、今回こちらのクエストになります」

 依頼書を机の上に置き、シュウに見せるように差し出してくれる。

「地下水道の調査……ですか?」

 依頼書にはこのそう書かれていた。

「はい。

 Eランクへの昇格クエストはいくつかあるのですが、今回時期が合ったこちらになります」

「時期ですか?」

「詳しく話しますと、このブランジリの地下には街全体に水を回す地下水道が張り巡らされております。

 街の一部ではあるので可能なら常に目が行き届くようにしておきたいのですが、何分地下で常にというのは難しく定期的に見回るということになっているのです。

 基本は衛兵の方が見回っているのですが、昇格クエストで冒険者もその一部を手伝おうということですね。

 で、地下水道を見回るついでというか、行ってきたと証明するのに奥にある水を循環させる魔術装置に魔力を込めたこの水晶玉を設置してくるのが目的です」

 サーシャは手のひらに収まりそうなほどの水晶玉を取り出して机に置いた。

 水を循環させる魔術装置の動力源、地球でいうバッテリーの交換をして、古くなった水晶玉を回収してこいというものだった。

「このクエスト街の地下ということもあって安全だとは思うのですが、冒険者の方に慣れて頂くことも含めまして、パーティ推奨となっております」

「ぱ、パーティですか?」

 パーティと聞いて、慌てるシュウ。

 今までのFランクのクエストはすべてソロで受けてきていた。

「はい。

 まだEランクでもそれほどだとは思いますが、さらに上位のクエストではソロでは厳しいものが増えてきますので、早めからパーティを組むように働きかけているのです。

 だいたいは同じ出身地の方が冒険者ギルドに登録に来れられて、そのままパーティを組まれることが多いですし、ギルドでパーティ募集されて組まれますね」

 パーティについて登録時も説明を受けた気がするが、まだシュウには早いと思っていた。

「この昇格クエストはパーティを組まないと受けられないのですか?」

 シュウはソロで受けれないかとサーシャに尋ねたが

「シュウさんはパーティを組まれる気がないのですか?

 冒険者登録されてからしばらく経ちますし、そろそろパーティを組まれると受けられるクエストにも幅がでますよ?」

 サーシャが言うようにクエストにはパーティ専用もあり、ソロでは受けられないものもあるのだ。

 Fランクではそういったクエストはなかったが、Eランクからはそういったクエストが混じりだす。

「パーティか~」

 パーティを組めそうな知り合いと言っても、元々この世界に飛ばされてきたシュウにとって知り合いはとても限られている。

 そして、その中でパーティで組めそうな人はと言うと……。

 ティアリスしか思い浮かばなかった……。

 ただ冒険者に登録した日に分かれてから、ティアリスをあまり見かけていなかった。

「パーティを組めそうな知り合いがあまりいないのですが……。

 あのティアリスさんは誰かとパーティ組んだか知ってますか?」

「っ!」

 ティアリスの名前を聞いてサーシャは一瞬気まずそうな顔をしたような気がした。

「ティアリスさんも固定ではパーティを組んでおられません……」

 俯きがちに視線を外してサーシャは答えた。

「ティアリスさんはもう昇格してるんですか?」

 少し懐かしい気持がしてティアリスのことを聞いてみた。

「あまり他の方の事をお伝えするのはよくないのですが、ご一緒に登録された方は気になりますよね。

 ティアリスさんはすでにEランクに昇格されて、あと少しでDランクへの昇格クエストが受けられるかと思いますね」

 シュウよりもだいぶ先を進んでいるようだった。

「ティアリスさんは昇格クエストどうされたのですか?」

 シュウはパーティを組んでないというティアリスが昇格クエストをどうやって受けたのか気になった。

「彼女は同時期に昇格クエストを受けられる方と一時的にパーティを組まれて、クエストを受けられました。

 そもそも、彼女はどのクエストも一時的なパーティを組まれていますね」

 パーティはクエストの間だけ組む一時的パーティまたは野良パーティと、常に同じメンバーでクエストを受ける固定パーティと分けられる。

 固定パーティでもクエストに合わせて追加メンバーや一時的な仲間を募集することもあるのだそうだ。

 固定パーティがいくつか集まったり、ギルドに認知される程強いパーティとなるとチームというさらに結束の強い集団になる。

「ティアリスさんもパーティを組まれることお勧めしたのですが、頑なに拒まれまして、さらに……」

 サーシャが言いよどむのが気になって続きを促すが

「あ、いえ。

 今はシュウさんの事を決めましょう」

 誤魔化されてしまった。

「ティアリスさんもそうだったのですが、この昇格クエストはパーティ必須です。

 ので、こちらからご提案する場合はパーティが組みやすいよう同じランクの方で、一緒に昇格クエストを受けないかとお話しさせてもらってるのです」

「僕以外に今のタイミングで昇格クエストを受けられるポイントが溜まった人がいるってことですか?」

 人によって受けるクエストが違うのでポイントが溜まるのはバラバラなのである。

「そもそも、シュウさんはとっくにポイントが溜まってましたので、どちらかというと他の方のポイントが溜まったので一緒に提案できるのではと声を掛けさせてもらったんですよ?」

 サーシャは笑顔のはずだが、シュウの背中に冷や汗が流れた。

「あ、はい。すみません」

「わかってもらえてうれしいです。

 で、どうでしょう。

 今回は一時的でもよいのでその方たちとパーティを組まれてはいかがでしょうか?」

 サーシャからの提案を考えてみる。

 一緒にパーティを組めるようにタイミングを見計らってくれていた節もあり、今から自分でパーティ募集をしても都合よく集まってくれるかもわからない。

「僕で足手まといになりませんか?」

「え?」

 こちらの世界に来て初めて実戦を経験してからまだ日が浅いシュウは、少しずつ力を付けてきている自信はあるが、まだ人に比べるほど自分の中で評価は高くなかった。

「シュウさんはもうEランクでも十分。

 さらにはDランクのクエストでも内容によっては大丈夫だと思いますよ」

「本当ですか?」

 サーシャに言われ、嬉しくなって顔を上げるシュウ。

「そのような確認も含めて一度Fランクの方と組んでみるといいですね」

 再度のサーシャの提案にシュウは了承のうなずきで、

「わかりました。

 もう、ご一緒してもらえる方は準備されてるのですか?」

 シュウは初めてのパーティに少しドキドキしてきていた。

「その方たちは、すでにパーティを組まれております。

 ただ、昨日のクエストでポイントが規定に達しましたのでお話はこれからとなります。

 今日来てくださればお話させてもらって、相手側も了承いただければ無事クエスト受領となりますね」

「まだ、相手側の了承はもらってないんですね……」

(断られたらどうしよう~)

 

 コンッコンッ

 

 その時、受付側の扉がノックされた。

「すみません」

 サーシャが席を立ち、扉を開けてノックをしたと思われる係員と話をする。

 しばらくしてサーシャが戻ってくると、

「相手方が先程来られたようで、他の窓口係から説明を受けてパーティご一緒してもよいとのことです。

 もう少し、待っていただければ--」

 コンッコンッ

 今度はシュウの後ろにある扉がノックされた。

「はーい!」

 サーシャが机を回って扉を開けに行った。

「どうぞ、お入りください!」

 サーシャが扉を開けて外で待っていた冒険者を招き入れる。

「あーーーーーーー!」

 シュウが振り返って入ってきた人物を見るよりも先に大声が上がった。

「あ、あんたは……」

 上がった声にシュウが驚きながら振り返ると、扉の前でこちらを指差して固まっている少年がいた。

「おや、君は……」

 シュウが立ち上がって声を掛けようと思った所で、

「もう、人を指差すのは失礼でしょ」

 と、扉からもう一人入ってきて少年の指を差したままの腕をはたき落とした。

「失礼をすみ……ま……せん……あっ」

 少年の後ろから入ってきたのは同じくらいの年齢の少女だった。

 それも以前に狼に襲われていたところを助けたクランとリンだった。

「こちらのクランさんとリンさんが今回同じクエストにご一緒して頂く予定の方達です」

 クランとリンが入ってから、扉を閉めつつサーシャが言った。


 サーシャが二人を机に招き椅子に座らせ、改めて互いに自己紹介をした。

 二人は兄妹だった。

「シュウさんはFランクだったんですね……。

 あ、すみません!」

 自己紹介が終わるとリンがシュウに向かって驚きながら言ってきた。

 そして、自分が失礼なことを言っていると気づき何度も頭を振りながら謝ってきた。

「すみませんすみません。

 あ、あの、以前助けて頂いた時のシュウさんが凄かったのでもっと上のランクと思ってました」

 目の前で狼を一撃で倒したシュウを見ていたリンはもっと上位のランクだと勘違いしていたようだった。

「俺達を狼から助けてくれたって後から聞いた。

 あの日は二人で冒険者に登録して、初めてクエストに出たんだ」

 クランがあの日のことを説明した。

「クランがいいクエストないかってギルドにいた冒険者の方に聞いて、冒険者は外に出るクエストをしないとなってワイルドラビットの狩猟クエストを薦められて……」

「うっ。リンも止めなかっただろ。

 最初はちゃんと倒せてたんだけど、リンの魔力が切れたの気づかなくて俺がリンクさせちゃって逃げてたら、さらに狼に襲われたんだ」

(なるほどな。

 ワイルドラビットから逃げていたところからは見てたからそういう事情だったんだ)

「クラン君は体の方は大丈夫?」

 あの時、緊急で一番重傷だった胸にヒールをかけたがその後どうなったかを知らないシュウは尋ねた。

「うん。今はどこも痛くない」

「クランは次の日まで目を覚まさなかったのですが、レナさんの治癒術で治してもらいました。

 聞けば、シュウさんもポーションを使ってもらったみたいで、ありがとうございました」

「ありがとうな」

 シュウがヒールしたところはレナにポーションを使ったと説明していたのを、彼女から聞いたらしい。

「いやあ、ほんと無事でよかったよ」

 二人にお礼を言われ照れ臭いシュウ。

「フフッ。

 クランさんはシュウさんが名乗らずに帰ってしまったので、冒険者ギルドに来られてから窓口で誰だったか尋ねられて、シュウさんが住民クエストを主に受けられていたことを知って、住民クエストを受けられるようになったみたいですよ」

 サーシャが口に手を当て笑いながら教えてくれた。

「ちょ、ちょっと!」

 クランが赤くなって止めようとした。

「リンが目に見えないぐらい早く動いて狼を倒したって言ってて、でも、ギルドで聞いたあんたの話は冒険者になりたてで住民クエストばかり受けてるって。

 だから、住民クエストを受けてみたんだ」

 クランが赤くなりながら、俯きつつ話してくれた。

(最近住民クエストが少ないなと思ったのは二人が受けてたからか。

 それと、ルーツさんのクエストは僕が行くようになってから、依頼されてないのか。

 毎日行ってるもんな~

 もし、行ってなくて依頼が出てたらこの子達が来てたかもしれないな)

 ルーツの薪を割るクエストを受けた事でルーツと出会い、シュウも鍛えてもらうことができた。

 ただ、シュウは知らないがルーツのクエストはクエストボードには貼られていない。

「あの日は僕も街の外に出るクエスト初めてだったっけ。

 たしか薬草採集だったな」

 初めて街の外に出た日にこの事件が重なり、感慨深いものがあった。

「は、初めて街の外に出られた日だったのですか?」

 シュウの言葉に驚いたリンが立ち上がりながら聞いてきた。

「あ、うん。

 ここに来る時を除いて、クエストとして外に出たのはあの時が初めてだよ」

 シュウの言葉にストンと落ちるように座ったリン。

「私たちやっぱり冒険者になるの早すぎたんだよ……」

 ぽつりと俯きながらリンが口にした。

「……っ」

 クランも悔しそうに膝の上に置いた手を握りしめていた。

 そんな二人を見たシュウは、

「実はさ、あの狼から助ける前にも二人を見かけてたんだ」

「「えっ?」」

 シュウの言葉に驚いて顔を上げるクランとリン。

「薬草を探して回ってる時に、偶然ワイルドラビットと戦ってる二人を見かけてさ。

 ワイルドラビットの動きを観察させてもらうためにこっそり見てたんだ。

 今言うけどごめんね。

 まあ、二人の動きは褒められるような感じじゃなかったけど、まだこれからだと思う。

 クランはワイルドラビットに恐れなく立ち向かってたし、リンはまだ若いのに魔術も使えてたし。

 これからドンドン経験を積んでいけばいいんだと思う」

 なんか自分の年で年下に言うにはすごいおじさんになった気がするがぐっとこらえて二人を励ました。

「シュウさんの言う通りですよ。

 お二人はお若いので、まだまだこれからです。

 住民クエストを依頼された方達からもこれから期待できる二人だって伺ってますよ。

 住民クエストを受けられてどうでした?」

 サーシャもシュウの話に乗っかって二人を励ましてくれているようだった。

「え、えっと。

 依頼者の方々も優しくて、街で見かけると声かけてくれるようになって…」

 リンが思い出すように話す。

「でも、この人みたいに強くなった感じは…」

 クランがシュウを指差して言おうとしたが、

「いや、でも次にワイルドラビットのクエスト受けた時は全然苦戦しなかったな…」

 クランが思い出したように言った。

「そういえば、そうだね。

 一度受けたクエストで、周りに気を付けてたから時間はかかったけど」

 リンもクランに釣られて二回目に受けたワイルドラビットのクエストを思い出したようだった。

「僕は最初に住民クエストばかり受けてたんだけど、それは剣の振り方も知らないし、武器もなかったからなんだ。

 それで、安全にお金も貯められる住民クエストを受けてたんだけど、二人が言うようにみんな優しくて。

 それに、いろんなとこで力仕事や手伝いをしたりして、基礎的な力が前と比べて付いたと思うんだよ。

 あと、ほんとみんな優しくて、僕が戦い方を知らないって話すといろいろアドバイスもくれたんだ」

 シュウに戦う動きを教えてくれたのはルーツだけではなかった。

 もちろんルーツの修行が一番ためになったはいるが、他の人の教えもシュウの中で活きていた。

「さらに安全にお金が稼げて装備もよくなってるでしょ?」

 シュウは二人の装備が助けた時よりも良くなっていることに気づいた。

 主に防具が良くなっている。

「そ、そういえば。

 みんないろいろ教えてくれるし、防具も安くしてくれたりした」

 クランが新調した防具をなでながら答える。

「サーシャさんも言ってたけど、みんな君たちの活躍に期待してるんだよ。

 二人ならきっともっと成長してみんなを助けてくれるって」

 自分の時もみんなそうだったんだろうかと思いながら、この二人なら一緒に行ってくれるかもしれないと感じた。

 「それでまず僕を助けて欲しいんだけど、僕と一緒に昇格クエスト受けてくれないかな?」

 シュウは椅子から立ち上がり、二人に昇格クエストを一緒に受けてくれるように頭を下げてお願いした。

 それを見た二人は驚き、こちらも椅子から立ち上がり、

「そ、そんな頭を上げてください!

 わ、私たちでいいんですか?」

「そ、そうだよ!

 あんたなら、もっと強い知り合いだっているだろ?」

 リンとクランは自分たちでいいのかと慌てて聞き返した。

「生憎パーティを組んでくれるような知り合いに心当たりがなくて。

 でも、Eランクへの昇格クエストはパーティ必須みたいで、それでギルドから丁度ポイントが溜まった二人を紹介してもらった訳なんだ」

 自分で友達がいないと言うほど悲しいものはないなーと思いながら、二人に経緯を説明するシュウ。

「あんたの状況は理解したけど、自分でいうのもなんだが俺達ほんとポイントが溜まったばかりの素人に毛が生えたようなもんだぞ?

 足手まといになるんじゃないか?」

 自分たちの実力がシュウに追いついてなく、足を引っ張るのではないかと懸念するクラン。

 その横でリンも同意というように頷いている。

「足手まといと言っても、昇格クエストを受けれるポイントを溜めれるまでクエストをこなせたってことだし」

 シュウはそこまで言ってからサーシャの方を向いて、

「きっとギルドは二人がEランクになっても大丈夫と判断して、この昇格クエストを提示したんじゃないかな?」

 シュウの言葉に二人はサーシャを見つめた。

 三人からの視線を受け、サーシャは、

「さすが、シュウさん。

 その通りですね。

 最初のワイルドラビットの一件がありましたが、その後のお二人のクエスト受注状況・内容・達成状況・周囲の意見を含めまして、ギルドはEランクのクエストでも対応できると判断しております。

 それに、お二人はシュウさんの足手まといになるか心配されていますが、先程お二人が来られるまで同じことをシュウさん言ってたんですよ?」

 サーシャはクランとリンの視線を自分に向けたのをお返しとばかりに、先程のシュウの言葉を明かした。

「ちょ、ちょっとサーシャさんそれは言わないで!」

 自分よりも年下と思われる二人に少しかっこつけた所に、サーシャの暴露で一気に恥ずかしくなったシュウは二人に顔を向けられなかった。

「そ、そうなんですか?」

 そんなシュウに恐る恐る尋ねてくるリンに、

「はぁ……。

 本当だよ。僕も二人と同じで自分がどの位の位置にいるのかのものさしがなくて、何も知らない他人とパーティを組むのに少し不安だったんだ。

 だけど、君たち二人なら一方的にだけど動きを見てたから、どんなパーティなのか少しわかってどう動いたらいいか相談してやっていけるって思ったんだ」

 年下の二人に隠しておきたかった不安を一番年上のサーシャに見透かされていたようで、シュウはもう隠しても仕方ないと包み隠さず本音を話した。

 照れ臭いので、三人には顔を向けることはできなかったが。

「お、俺たちの方こそよろしくお願いします!

 あんた、いや、シュウさんの足を引っ張らないように頑張りますので」

 シュウの言葉に動かされクランはシュウの方に体を向け、頭を下げた。

「よ、よろしくお願いします」

 リンもクランに続いて頭を下げた。

「よろしく!」

 シュウは二人に向き合って握手を求めて右手を差し出した。

 クランは笑顔になってその右手を力強く握った。


 そんな三人を机の対岸で見つめていたサーシャは人知れず羨ましそうに見つめていた。

 それを、心の奥底に押し込めて、気持ちを切り替え、

「おめでとうございます!

 それでは、改めてあなた方お三方の昇格クエストの説明に入りたいと思います」

 昇格クエスト<<地下水道の調査>>の詳細について説明を行った。


前の話のあとがきで次の話で第一章終わると書きましたが……

終わりませんでした!

書きたいことを箇条書きにしたら、これ一話にまとめると一万字超えそう……

と、長くなりそうなので半分ほどで切ることにしました。

すみませんでした。

ただ書き出した箇条書きの半分ほど書いたところですが、この時点で1万字弱となっております。

読みが甘く申し訳ございませんでした。

こいついつも長くて単調でつまらないし読みにくいとお思いかと思いますが、

次の話も気になった方は間を開けないよう頑張りますのでよろしくお願いします。

たぶんきっとおそらく次の話で第一章は終わると思います。(きっと…きっと…)

それではみなさん健やかにお過ごしください。

ではまた~

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