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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
32/303

31.クエスト回

この話から忙しくなる前に書き溜めてた下書きが無いので

即興になります

文が乱れたり、誤字脱字が増えたりすると思いますがご容赦ください

あと、そろそろ前に書いてた内容と齟齬が出そうな気がします

気を付けますが……

 狼騒動の次の日もシュウはまずルーツの家に向かった。

 街の外のクエストの報告をルーツに早くしたかったが、昨日は疲労が濃く、早く宿に帰って休みたかった。

 そのことをルーツに話しても笑って許してもらえた。

「それは誰もが通る道だ。

 初めてのクエストが薬草採集でも外は緊張しただろ。

 よくやったな」

 狼の件も一緒に話しルーツは考え込むようにしたあと、外に出るときに注意するようシュウに言った。

「なるほどな。

 そいつは更に疲れただろう。

 それに人助けもご苦労だった。

 本当によくやった」

 ルーツはシュウの頭に手をやり、ポンポンとなでた。

 これほど労われるとシュウは正直思ってなかった。


 報告のあと、ほぼ日課になっている仕事の薪を割り、フランから労いの言葉とお茶頂いた。

 そして、ルーツとフランに見送られて冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドではいつものように真っすぐ受付に向かうのではなく、今日はクエストボードで選ぶことにした。

(いつもは受付の列に並ぶとサーシャに呼ばれ、字を読むのに時間のかかるシュウに代わってクエストを選んでくれていた)

 昨日受けた薬草採集は今日もあるが、今日は気になっていた討伐クエストを受けようと考えていた。

 昨日まではモンスターと戦うことが怖かったが、狼と一度戦っていることもあり、挑戦してみようと思ったのだ。

 そして、目的の獲物が対象のクエストを見つけることができ、依頼書を剥がした。

 依頼書を持って列に並ぶと今日もシュウの番になるとサーシャが個室に呼んだ。

「シュウさん。おはようございます」

「おはようございます。サーシャさん」

 互いに朝の挨拶を交わし、シュウは依頼書をサーシャに差し出した。

「今日はこれを受けたいのですが」

 依頼書を差し出してきたシュウに思わず、

「シュウさん!

字を読めるように!」

 サーシャが驚きの声を上げる中、シュウは誇らしげに胸を張っていた。

(実は朝、リームちゃんに教えてもらった字の形を丸暗記してきたとは言えない)

「ええと、内容はワイルドラビットの狩猟。

 討伐クエストですが、大丈夫ですか?」

 シュウがゴブリンに襲われたことを知っているサーシャはモンスターに対しての恐怖がまだあるのではと心配になった。

「怖くないかと聞かれれば嘘になります。

 けれど、いつまでも怖いって言ってられませんし、 

 それに、昨日狼の前に立った時は無我夢中でしたが、それでも冷静にできたと思うんです。

 しかも、昨日偶然ですが大きなウサギと戦っているパーティがいて、動きも観察できたのでやってみようと思ったんです」

 街の外のモンスターに対する恐怖心を自分なりにどうにかしようと思っていた。

 そんな時に昨日の件が重なりシュウにとって大きな転機となった。

 その意気込みを聞いたサーシャは目を見開いて驚いていたが、

「わかりました。

 このワイルドラビットは冒険者になりたての方でも比較的安全に狩ることができると思います。

 草食動物ですのでこちらから攻撃するまでは襲って来ないはずです。

 ただ体格を活かした突進や高い脚力によるキックにご注意ください」

 驚いた顔から心配する顔に戻りサーシャはワイルドラビットに関する注意点を伝えた。

 心配するサーシャに問題ないと伝えるように

「ありがとうございます。

 昨日観察できたうさぎでそれらの動きも見ることができました。

 宿に帰ってから何度も対処する動きをイメージしてたんです」

 シュウは明るく笑顔で答えた。

 その声と笑顔にやっとサーシャも

「そうですか!

 本当にお強くなられましたね」

 安心した笑顔をシュウに向けた。

「それでは、ワイルドラビットの狩猟の手付きを行いますね。

 内容はワイルドラビットを五匹狩猟し、皮と肉を持ち帰ること。

 皮や肉の解体はできますか?」

 狩猟クエストだからと言って、狩って終わりというわけではない。

 狩った証拠を持ち帰らなければならないし、今回のワイルドラビットに関しては加工用の素材として皮と肉の納品が主な目的だった。

「大丈夫です。

 ルーツさんに簡単ですが教わったことがあります。

 それもこれから一人でやっていくために練習だと思ってやってみます」

 シュウは現代日本生まれでもちろん日常で魚は捌いたことはあるがウサギを捌いたことはない。

 だが、こういう日が来るだろうとルーツはシュウに実演して見せていた。

「冒険者の中には少数ではありますがご自分で解体を行いたくないので、荷物持ち件解体を行う人を雇われる方もおられるのですよ。

 主に貴族の方ではありますが」

 冒険者のランクはわかりやすい強さの証となるので貴族のステータスにもなり、冒険者として登録する貴族が多いようだった。

「では、これでシュウさんの手続きを終了します。

 お気をつけて行ってきてください」

 サーシャとシュウは依頼書に確認のサインをして互いに立ち上がった。

「はい。

 行ってきます」

 シュウは明るく答え、個室から出ようと振り返ろうとした。

「あ、シュウさん」

 そこにサーシャが声をかけた。

「昨日の今日ではありますが、草原で狼の目撃情報が入っています。

 情報によれば数は思った程ではないとのことで、市政からは現状では討伐部隊は不要との意見らしいです。

 大丈夫かとは思いますが、シュウさんも注意してください」

 昨日の事件があってから街の外に出た者が、狼を目撃したと街門の衛兵に報告が数件あったようだった。

「了解しました。

 昨日助けた二人もウサギと戦っている間に近づかれて襲われてましたから……

 僕も気を付けます。

 では!」

 今度こそシュウは元気よく振り返り、扉に向かった。


 残されたサーシャは、

「……眩しいなぁ」

 と、シュウに聞こえない小声で目を細めて遠ざかる背中を見つめていた。


 クエスト<<ワイルドラビットの狩猟>>

 ・ワイルドラビットの毛皮五個の納品

 ・ワイルドラビットの肉 五個の納品


 街門からでたシュウは早速ワイルドラビットを探すために歩き出す。

 昨日クランとリンが戦っていた大ウサギがワイルドラビットだと思うが、確信がないためサーシャとの話の間もずっとウサギと言っていた。

 シュウはこの世界のモンスターについてもっと調べた方が何を討伐しなければいけないかわからないなと思った。

「また課題が増えた……

 頼りすぎるのは嫌だけどサーシャさんにまた相談してみよう」

 また自分の知識不足に悩まされながら、気配察知を発動しつつ歩き出した。


(サーシャさんの話をヒントにするなら、ワイルドラビットは新米の冒険者でも受けられるクエストってことだから、この草原で見つけやすいはず。

 そして、この草原で見かけたウサギは昨日の二人が戦っていた大ウサギしかいない(と思う)。

 一度あのウサギを狩ってみて、衛兵さんに見せて確認してみよう)

 シュウは心の中で決定し、ウサギ探しに集中した。


 街門からしばらく街道に沿って歩いていると、近くの茂みに気配察知が何かを察知した。

 シュウは自分で使っていながら自身の気配察知が昨日の狼の件で視力・聴力頼みだった仮気配察知から、スキル「気配察知」になっていることに気づいていなかった。

 ルーツの指導と気配を殺しながら近づいていた狼に警戒していた緊張感がシュウに気配察知を修得させた。

 ただ、まだスキルの練度が低いため察知できる範囲が狭く、対象が何かまでわからなかった。

 シュウは音を立てないように気を付けながら察知した気配に近づいて行った。

 次第にガサガサと対象が草を揺らす音も聞こえるようになり、シュウは背の高い草の陰から様子を伺った。

 そこには、昨日見た大ウサギが口をせわしなく動かし草を食べていた。

 時折、周囲を見渡しながら草を食べている姿は大きさ以外は元の世界のウサギそのものだった。

(よし、じゃ一度やってみよう)

 シュウは小剣を引き抜き、草むらから一気に飛び出した。

 

 草むらから飛び出てきたシュウに驚いたウサギは距離を取ろうと横に飛んだ。

 が、シュウの剣の振りが一足早くウサギの胴を薙いだ。

 剣は届いたが、毛皮思ったよりも厚く深手にはならなかったようでウサギは態勢を整え身を低くした。

 シュウは剣気を全身に巡らし、小剣を構えウサギの動きに対応できるように集中を高める。

 ウサギは低くした体を一気に加速させ、シュウに突進してきた。

(その……動きは……見た!)

 シュウは体を半身横にずらし、剣を横に構えてウサギの突進に合わせ地を蹴った。


 街門まで戻ってきたシュウは手の空いてそうな衛兵を探し、丁度交代で休憩に入るモンドを見つけ、狩ったウサギがワイルドラビットかどうかの確認をした。

 モンドはそんなことも知らないのかと呆れた顔をしつつも狩ったウサギがワイルドラビットで間違いないことを教えてくれ、ついでに倒した傷が動物の弱点の一つである首を的確に狙ったものだと褒めてくれた。

 ワイルドラビットの突進とシュウの前進する力を合わせて剣を首筋に滑らせた一撃だった。

 先制で胴に傷を負わせたが、初撃で狙うなら足で機動力を削ぐのがいいとアドバイスをくれた。

 その方が毛皮を剥いだ時も傷が少なく、品質を高く評価してもらえるようだった。

 確認とアドバイスのお礼をして、シュウは再度草原に戻っていった。


  クエスト<<ワイルドラビットの狩猟>>ノルマ達成1/5

 

 草原に戻ってきたシュウは狩れたワイルドラビットの肉と毛皮を剥いでおくことにした。

 首を切った際に動脈まで達していたようで、その時血抜きは済ませていた。

「元の世界の高校生活でウサギの解体なんて絶対しなかっただろうな~。

 普通科だったもんな」

 ルーツに教えてもらった通りにワイルドラビットを肉と毛皮に分けた。

 初めてながら傷も少なく分けることができたと思う。

 肉と毛皮を小袋に入れて魔法鞄にしまった。


 それからワイルドラビットを探して回って狩猟を進めたのだが、わかったことがあった。

 このワイルドラビット。

 草食動物ということで、サーシャが言っていたようにこちらから手を出さない限り基本的に大人しい性格のようだ。

 そして、警戒心が高いのかこちらが攻撃をする前に見つかってしまうと逃げられてしまう。

 これがほんとに脱兎のごとく。

 シュウのような近接武器だと隠れて近づき不意打ちするしか先手をとれそうになかった。

 5匹目のワイルドラビットを狩って解体を終えて、街に戻りながら考える。

「これなにか遠くからでも攻撃する手段が欲しいな。

 魔術があるけど、魔力にも限界があるしな~

 これから他のモンスターに行くだろうし、ゲームにいた魔力感知なんかもあるかもしれない。

 うーん。同じようにゲームっぽく考えるとブーメランとかが便利か……

 帰ってルーツさんに聞いてみるか」

 今日はクエストの報告してからルーツさんの所に寄ろうと決めた。


 クエストの報告でサーシャに滞りなく肉と毛皮を納品し、シュウはルーツの家に向かった。

 戻ってきたシュウにもルーツは温かく迎えてくれた。

 最初からこの感じで迎えてくれたら他の冒険者も近寄ってくれるかもしれないのに……。

 シュウはルーツに今日のワイルドラビットでの経験を伝えて、遠隔攻撃手段について相談した。

「なるほど。

 モンスターを狩りに行く時やダンジョンに挑む際、パーティだと対象を探したり、索敵に優れた者が先行するのが常識だ。

 特にレンジャーやシーフと行った役目がそれにあたる。

 で、モンスターをできるだけ1匹釣ってパーティの場所まで誘導するわけだ」

 ルーツの動きはシュウの知っているゲームでも通じる戦法だった。

「だが、お前が言うように初めはブーメランは投擲武器は勧められん。

 基本的に投擲武器は投げたら回収しなくてはならん。

 スキルでブーメランを戻ってくるようにするものはある、投げナイフも回収できれば使えるが、できなければそれだけで赤字になるだろう」

 ブーメランの手元に自動で戻ってくる特性はゲームのようにはいかないようだった。

「そこで、今のお前に向いているのはショートボウか」

 ルーツは武器を保管している倉庫にシュウを連れ、小さな弓を手に取った。

「この種の弓は威力や飛距離はそんなに出ないが、その分扱いやすい。

 矢も攻撃に釣る目的なら木の矢でかまわんから安価で自作もしやすい」

 ルーツは手に持った弓と立てかけてあった矢筒をシュウに渡して倉庫を後にした。

「一番大事なのはやはり当てることだな」

 シュウが弓と聞いて一番気になるところだった。

 元の世界にも弓道やアーチェリーといった文化があるにはあるが、シュウは経験したこともないし、的に当てるのも難しいイメージだった。

「これ素人が敵に簡単に当てれるものなんですか?」

 シュウが真っ先に思いついた疑問をルーツに尋ねた。

「まず当たらんだろうな」

「ですよね……」

 予想通りの返答に肩を落とすシュウ。

 そこに、

「まあ聞け。

 こいつで勝負する弓使いでもないなら、小さな敵の弱点を狙う必要はないと思わんか?

 できるに越したことはないが、お前ならその剣で弱点を狙った方が確実だろう?

 だからこの弓では相手に当て、こちらに敵を釣るだけと割り切ればいい。

 そうすると的は敵の全身となって大きくなるだろう。

 当たらなくても遠距離から攻撃できると相手にけん制や足止めができる」

「なるほど。

 確かにそうですね」

 ルーツの説明に納得のうなずきを返しながら、弓を使うイメージをした。

「まあ、けん制も足止めも狙ったところに射ることができるのが前提だ。

 こいつも練習あるのみだ。

 そして、弓は俺も専門外だからな。

 使えるには使えるが教えるにはもっとふさわしい奴がいる」

「え?

 そんな、外で練習してきますよ」

 なんでも人に頼ってはと考えているシュウは紹介を断ろうとしたが、

「お前な基本も知らん素人が一人で練習してみろ。

 他の武器とこいつは違う所が多い。

 変な癖でも着いたら目も当てられん。

 黙って奴に一から教えてもらってこい。

 それの方が後で絶対にためになる」

 ルーツはシュウを静かに諭した。

「わかりました。

 では、僕はどちらに向かえばよろしいですか?」

 シュウは弓の師事を受けることに了承しつつ、ルーツに誰のもとへ向かえばいいのか聞いた。

「商業区にある、酒場のロンナを訪ねろ」

 ルーツはブランジリの地図を取り出し、酒場の場所を示した。


 ルーツの家から商業区に移動し、地図で教えられた酒場の前に来た。

 静かに入り口をくぐると中の灯りは消され、シンとしていた。

 昼の営業を行っていないのか、ランチの時間が終わったのか店は準備中のようで客も従業員もいないようだった。

 どうしようかと考えていると、

「まだ準備中だよ」

 と、店の奥から若い女性の声がした。

 そして、眠そうに伸びをしながら女性が出てきた。

 女性は十代後半から二十代前半に見え、淡いライトグリーンのワンピースを着て、背は低いが金色の中に少し緑がかった髪を腰まで伸ばした綺麗な女性だった。

「時間外にすみません。

 こちらにロンナさんがおられると聞いて伺ったのですが」

 シュウは女性にロンナがいるかどうか尋ねた。

「この店でロンナと言ったら私しか思いつかないけど?

 この酒場をやらせてもらっている、ロンナです。

 よろしくお願いします。

 何か用ですか?」

 女性は自分を指差しながら名乗り、シュウに用を尋ねた。

「えっっと。

 薪職人のルーツさんからの紹介で……」

(ルーツさんはこんな綺麗な方とどうやって知り合ったんだ?

 フランさんも綺麗だし)

 ルーツへの疑問を考えつつ訪問の理由を話そうとしたが、

「ル、ルーツが私に何か言ってましたか?」

 先程まで店の奥の扉の前で眠そうにしていたロンナが一瞬でシュウの目の前に現れ、キラキラした目をしながらシュウの手を取っていた。

 別の事を考えていたこともあり、不意に目の前に現れ、美人に手を取られている状況にドキドキしながら、

「ええと、特に伝言は……」

 シュウは素直にロンナに伝えると、

「そ、そうですか……」

 ガクッという音が聞こえるぐらい、ロンナは肩を落とし俯いてしまった。

 今にも消え入りそうな声で、

「今日はもうお店は終わりです……。

 出て行ってください……。

 あぁ……もう、お店を畳んでしまっても……」

(お店まだ開けてないですよね!?

 なんか知らないけど、めっちゃショック受けてるーーー!?

 ルーツさん何も教えてくれなかったじゃんーーー)

 シュウはロンナの変化についていけそうになかったが、なんとしても弓の扱いを習いたかった。

「えーっと、ルーツさんが自分よりも弓を教えるのにふさわしい人がおられると言われてロンナさんを紹介されたんです」

 ルーツという単語にピクッとロンナの肩が揺れた。

「……ふさわしい……」

「ルーツさんはより弓の腕の立つあなたに期待して頼られたんじゃないでしょうか」

 シュウは必死にロンナに教えてもらえるように説得した。

「……腕の立つ……期待……頼られ……」

 俯いたままブツブツとつぶやくロンナにダメかと諦めかけた時、

「そんなに頼られたとあっては仕方ありませんね!

 あなたに弓を教えて差し上げればよいのですね!

 ええ!いいですとも!

 あなたを弓帝でも弓聖でもしてあげるわ!」

 握りこぶしを作りキラキラした目でシュウを見上げるロンナがそこにいた。

「あ、はい。

 よろしくお願いします」

 苦笑いをこらえつつシュウはロンナに師事を取り付けることに成功した。

「じゃ、早速行きましょう。

 一応教えてはあげるけど、お店の準備もあるからそれまでだからね。

 場所はこのお店の裏で~。

 こっちです」


 シュウはロンナに連れられ、店の中を抜け裏庭に出た。

 そこには背の高い石の塀内側に小さな畑と弓術の的になるだろうかかしが立っていた。

「あの人が自分以外に師事を薦めるってことはなかなかないことよ。

 これは見込みがありそうね」

 ロンナはかかしの具合と自分用の弓を準備しながら話した。

「あ、そうだ。

 まだ、あなたの名前を聞いてなかったわ」

 たしかにシュウはロンナに名乗っていないことに気づいた。

「あ、すみません!

 ルーツさんに冒険者の基本を教わっているシュウといいます。

 これからよろしくお願いします」

 シュウがお辞儀をしている頭の上から

「あぁ、あなたが……」

 ロンナのつぶやきが聞こえた。

「僕がどうかしました?」

 つぶやきをシュウが聞き返すと

「いえ、なんでもないわ。

 最近、よく聞く新人の冒険者ってあなただったのねってね」

 シュウの知らないところで噂となっているようだった。

「では、シュウさん。

 弓のお稽古に入りますが、私はどこまで教えてあげればいいのかしら」

 シュウは今までのクエストの運びや、ルーツに相談したことなどを話した。


「なるほど。わかりました。

 役割的にレンジャーやシーフのような釣り役として弓を使いたい、と」

 説明を受けて納得したロンナ。

「すみません。

 弓の専門家のロンナさんに手段の一つとして教えてもらうことになって」

 弓のエキスパートであろうロンナに最初から極めるつもりがないことを告げつつ、教えを乞うことに後ろめたさが生まれていたシュウ。

「いいのよ。

 冒険者として手持ちの札が多いことに越したことはないわ。

 私もメインウェポンはたしかに弓ですが、剣や短剣も扱えます。

 それに魔術も得意でしてよ」

 先程の店の中の女性と同じとは思えないほどロンナは落ち着いた女性に見えた。

「それじゃ始めるわね。

 まずは基本の構えから」

 シュウは構えを見せるロンナに習い構えて見せ、ロンナが違う所を指摘していくということ繰り返していった。

 構えから射撃を何度も繰り返した。

 ロンナの教え方はルーツよりも優しく、それでも同じくらいわかりやすかった。

 ロンナが射る矢は吸い込まれるようにかかしの真ん中に刺さるが、シュウは全然思った所に飛ばなかった。

 落ち込むシュウに、

「当たらなくて当然よ。

 今日初めて弓を持ったあなたが百発百中なら私の立つ瀬がないわ。

 それができるのは、神から与えられた才能の持ち主だけね。

 私もそんな才能がないから何年も弓を射続けてスキルを得て、高めてきたのよ。

 そして、動かない的ならスキルの補正でほぼ狙った所に飛ぶわ」

 言いながら自然な流れで弓を構えて、かかしの真ん中に矢を放った。

「今日はこの位にしましょう。

 構えと射るイメージは掴めたかしら?

 何事も正しいイメージは大事なことです」

 シュウは構えと射るイメージはばっちし頭に叩き込んだ。

「大丈夫です!

 美人なロンナさんの構えから射るイメージがいつでも再生できます!」

 シュウは素直な気持ちをロンナに伝えた。

「ば、馬鹿じゃないの!?

 そんな見え透いたお世辞はいいわ!」

 ロンナは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。

「ほ、ほら片づけるわよ。

 私もお店の準備しなくちゃいけないのだから。

 あなたも帰って休みなさい。

 あなたは今日クエストに行ってきたのでしょう?」

 ロンナはかかしに刺さった矢を回収に向かいつつ振り返っていった。

「僕はまだだいじょ……!?」

 シュウはロンナに大丈夫だとアピールしようと腕を上げようとしたが、びきっと聞こえるような痛みが腕から感じた。

「うぅっ……」

 痛みに腕を下げて呻くシュウ。

「痛いだろう?

 筋肉痛だよ。

 今まで使っていた筋肉と違う所を弓は使うから。

 毎日練習を続けることで筋肉を鍛えて、いつかスキルが得られるかもね」

 ロンナはかかしに刺さった自分の矢と周囲に散らばったシュウの矢を回収して、それぞれの矢筒に直した。

「……っつ。

 すみません。

 僕の矢も集めてもらって」

 思ったよりも痛い体に呻きつつシュウはロンナに感謝した。

「いいのよ。

 私も通った道だわ。

 私の師匠も同じようにしてくれたの」

 ロンナは自分の弓と矢筒を倉庫にしまって戻ってきた。

「さ、今日はお開きです。

 家に戻って、体を(ほぐ)してゆっくり休みなさい。

 ねっ?」

 ロンナはにこやかな笑顔でまだ動けないシュウの肩をツンツンした。

 反応しようしたシュウの腕から再度痛みが駆け上った。

「いたあああああああ☆〇▽◇……」

 腕から来た痛みに悲鳴をあげるシュウ。

「アハハ」

 そんなシュウにロンナは笑いながら肩をさすってやった。

「それじゃ、今日はほんとにここまで。

 家まで帰れますか?

 お姉さんが送っていきましょうか?」

 店への入り口に向かいながら手を後ろに回してロンナは振り返った。

「……?

 いえ、大丈夫です。

 一人で帰れます」

 筋肉を解すように肩を回しながらシュウは答えながら、ロンナに続いた。

 心なしか筋肉痛の痛みが少し引いている気がした。

 二人で店の中に戻り、入り口の前でロンナはシュウと入れ替わるように前を譲った。

「弓はいつでも教えてあげるし、今度はご飯を食べにおいでよ。

 お姉さん腕によりをかけてあげるから」

 ロンナはシュウに優しく微笑みながら語りかけた。

「ありがとうございます。

 お店は何時からなんですか?」

 シュウは酒場の開店時間を尋ねたのだが、

「お店は夕刻の五の鐘からだけど、

 君ならいつ来てもいいよ」

 夕刻の五の鐘は現代世界でいう夕方六時に鳴る鐘のことだ。

「本当にありがとうございます。

 弓の練習もしたいですし、またお願いします」

 シュウは再度来訪する許しを得て、お礼を言った。

「お姉さんに会いに来る目的でもいいんだよ?

 これでもお店ではそういったお客さんも少しいるんだぞ~」

「えぇ!?」

 シュウは目を白黒させながら驚きの声を上げた。

「アハハ。

 半分冗談だよ~

 ほら、帰って疲れた体を休めなさい」

 ロンナはシュウの腕を優しく手に取り、痛まない程度に引っ張りくるりとシュウの身体を入り口に向けた。

「感覚を忘れないように明日も頑張って。

 でも、無理はしないようにね」

 シュウは後ろに首を回しつつ、

(筋肉痛が痛いが)

「今日は本当にありがとうございました!

 また来ます!」

 ロンナはシュウの背中を優しくポンポンと叩き、優しく送り出した。

「……頑張って。

 待ってますよ」


 宿に帰り痛む体をリームにからかわれた後、ビアンゼの料理を楽しんだ。

 自室でストレッチをしながら、ロンナの料理はどんなのだろうかと考えていた。

 しかし、そもそも地球では高校生で居酒屋にも行ったことがなく、異世界の酒場がどんな料理を出すのか想像できなかった。

「今度本当にご飯食べに行こう~

 ビアンゼさんのご飯も美味しいし、こっちの女性はみんな料理上手いのかな~

 うっし、明日のクエストに向けて寝よ!」

 シュウはベッドに横になるとすぐに寝息を立て始めた。

 そして、翌日から母親に料理の修行をせがむ宿の娘がいたとかいないとか。


 翌日も日課の薪を割った(一応これもクエストである)後、冒険者ギルドのクエストボードを確認。

 今日もワイルドラビット狩猟はクエストボードにあった。

 昨日と同じように依頼書を剥がし、受付でサーシャからクエストを受けた。


 クエスト<<ワイルドラビットの狩猟>>

 ・ワイルドラビットの毛皮五個納品

 ・ワイルドラビットの肉 五個納品


 今日も草原に出てまずはワイルドラビット探しからだ。

 街道沿いに進むが今日は昨日と反対側の茂みを進んでいくことにした。

 気配察知を使用しつつ慎重に歩いて行く。

(っん!?)

 少し先だが、微かに動く気配を感じた。

 なんとなく昨日感じた気配に似ているからワイルドラビットの気がする。

 ここからは音を立てないように更に慎重に進んでいく。

 感じた気配に近づき草むらから様子を伺うと、やはりワイルドラビットで間違いなかった。

 今日も気づかれないうちに近づくことができたようだ。

 ここから今日はショートボウを使った先制を狙う。

 音を立てないように慎重に弓を取り出し、矢をつがえた。

 昨日の練習を思い出し、ワイルドラビットに向け矢を!!


 ッヒュン!


 ワイルドラビットの横を矢は通り過ぎて行った。

「キュっ!?」

 その音にワイルドラビットは驚き、シュウに気づいて逃げてしまった。

 矢が外れたショックで追うこともできなかったシュウは張りつめていた緊張を解いた。

「う~ん。

 まあ、昨日もかかしに当たらなかったわけだし、今日いきなり当たるわけないか。

 矢だけでも回収して次に行こう。

 これも練習だ」

 ネガティブな思考に行かないように前向きに考えるようにした。

「あのロンナさんも最初は当たらなかったって言ってたし。

 これからこれから。

 なかなか狩れなかったら、昨日みたいに気づかれないように近づいて不意打ちに切り替えればいいし」

 弓の練習を続け、進捗が良くない時の対策も考えてから、先程外した矢を探しに進んだ。


 それから三度弓で先制を狙ったが当たらなかった。

 シュウは当たらないことに少しずつ、焦りが募っていった。

 そして、これが計五度目の射撃。

 シュウは焦りの余り、手が少し震えていることに気づいた。

(これでダメなら次からは剣で不意打ちに切り替えよう)

 と、自分に言い聞かせ、目を閉じて集中する。

 しかし、それでも手の震えは収まらなかった。

(畜生。ダメだ。

 矢が外れた時の事を考えてしまって集中できない)

 もういっそのこと、このワイルドラビットも不意打ちに切り替えた方がいいかもしれない。

 そう思ってつがえた矢を外そうと思った。

「……諦めないで。

 その一矢を収めてしまえば次はもっと射ることができなくなるわ」

 そう、言えば、昨日もかかしに矢が当たらず落ち込んで矢を弓から外そうとしたっけ。

 その度にロンナが優しく励ましてくれ、最後には自分の筋肉が限界になっていることも気づかないほど射っていたのだ。

「弓は手段。

 これで倒さなくてもいい。

 次に繋げるんだ」

 シュウは小声で自分を鼓舞した。

「大事なのはイメージよ。

 つがえた矢と対象に一本の線があるとイメージして」

 シュウは何度も“観察”したロンナの凛とした弓の構えをイメージし、自分に“トレース”した。

 そして、引き絞った矢の先端からワイルドラビットの背中に一本の線が見えた気がした。

(今だ!

 あっ!)

 自分の心の中で射るタイミングを計ったが、少しの力みが生まれてしまい、見えた線がワイルドラビットの少し横の地面にずれたように見えた。

(これは外れる!)

 すでに矢は指から離れてしまっており、どうすることもできない。

 けれど、シュウはショートボウを捨て、一気に草むらから飛び出した。

 

 放った矢はシュウの見た線が描いた軌跡をなぞり、地面に刺さった。

 その音と軽い衝撃にワイルドラビットは驚き飛び上がった。

 それが、一瞬の隙を生み、飛び出したシュウは小剣を抜きワイルドラビットに切りつけることができた。

 狙った一撃は足。

 傷つけることで野生の生き物特有の素早さを奪った。

 驚きと怒りを合わせた鳴き声をシュウに放ち、ワイルドラビットは傷のない足で地を蹴った。

 しかし、その動きはシュウが捉えられない早さを生むことができず、

「ごめんよ」

 という、シュウの一言とともに切り伏せられた。


 シュウはショートボウを拾い背中に戻しつつ、

「弓を射ったあと、剣に持ち替える練習もいるな~。

 いちいち捨ててたら拾いに戻るのも大変だし」

 と、今の射撃から最後の一撃までの流れをおさらいしていた。

「矢は外れたけど、力みが入ったのはわかったし、イメージした射線(勝手に命名)通りに矢は飛んだ。

 これ、力まなかったら当たってたかもしれない!」

 シュウは弓に少し自信がついた気がして、心の中で挫けそうな自分を励ましてくれたロンナに感謝した。


 クエスト<<ワイルドラビットの狩猟>>ノルマ達成1/5


 あと、ワイルドラビットは四匹からなければいけないが、弓の訓練も兼ねて行っていたため少し時間がかかっていた。

 シュウは先に狩猟を進めようと、三匹は小剣で先制し、ラスト一匹で弓の訓練をすることにした。

 やはり慣れた小剣による不意打ちは気づかれないことに注意を払えば、確実にワイルドラビットを狩ることができた。

 しかし、当たりはしなかったが、矢が足止めになってからの追撃という流れは手応えを感じていた。


 クエスト<<ワイルドラビットの狩猟>>ノルマ達成4/5


 最後の一匹となったので弓による先制の訓練だ。

 先にショートボウを手に持ち、気配察知でワイルドラビットを探す。

 ワイルドラビットっぽい気配を捉えると静かに移動したのだが、自信のある射程に近づく前にワイルドラビットがもう一匹近くにいる感じがした。

 最初に捉えた気配の持ち主の様子を伺うと、むしゃむしゃと草を食べていて、こちらに気づいてもおらず、周りに他のワイルドラビットも見えなかった。

 心を落ち着かせて、弓の構えに集中した。

 ロンナの構えを“トレース”し、弓を引き絞る。

 矢の先端から延びる射線がワイルドラビットの背に伸びた。

(ッ!)

 背に射線が伸びたところで力まないように矢を放った。

(……これは、いった……)

 シュウは落ち着いて、素早くショートボウを収め地面を蹴り、放った矢を追った。

「ピィ!」

 背に矢を受けたワイルドラビットはその勢いで転がっていった。

 シュウは小剣を抜きつつ駆けて、ワイルドラビットの素早さを削ぐために足を切りつけた。

「ピィィ!」

 再度鳴き声を上げてシュウに向き直るワイルドラビット。

 シュウはワイルドラビットの動きに対応できるように息を整え小剣を構えた。

 しかしそこで、横からガサガサと茂みを揺らしてもう一匹ワイルドラビットが飛び出してきた。

(しまった。

 さっき近くにいた気配は、こいつで鳴き声にリンクしたか)

 リンクとは釣ったモンスターに追従して周りのモンスターが反応してしまうゲーム用語である。

 が、こちらで使ってもこの世界で使われている単語に自動で変換されるためにこう言った言葉も通じるのだ。(異世界翻訳ほんと便利である)

(二匹になっても、狙うは最初のワイルドラビットAだ)

 シュウは勝手にワイルドラビットにアルファベットを割り振り、傷を負った方を先に仕留めることに決めた。

(Bの攻撃をよく見て避けて、そのままAの動きに注意して攻撃だ)

 シュウの思い通りにBがまず突進を仕掛けてきた。

 それを横に飛び躱して、Aに向かって再度駆ける。

 Aは痛む足を引きずり、違う方の足でジャンプしようと身を低くした。

(させるっかあああ)

 シュウは気合とともに小剣に剣気を込めた。


 片手剣基本剣技 ダブルブレード


 シュウは袈裟切りに振り下ろした剣をVの字を描くように切り上げた。

 切り上げられた勢いでワイルドラビットAは体ごと浮き上がり、そして力なく地にうつ伏せに倒れた。

 シュウはそのままBに振り返り、小剣を構えた。

 Bはまだ突進の勢いを殺し終えて体制を整えているところで、追撃はなかった。

 シュウは素早くAの背中に刺さったままの矢を左手で引き抜いた。

 Bが体制を整え終わる前にシュウは駆けだした。


 スキル ミスディレクション


 シュウは左手で引き抜いた矢を横なぎにしてBに向けて投げ、自信の体は右に一気に飛んだ。

 ワイルドラビットBは突進の勢いを殺し終わり、再度の突進の為に振り返ったところで自分に投げられた矢が目に入った。

 矢に慌てたワイルドラビットBは左に飛んで矢を躱そうとする。

 シュウはその動きをスローモーションのように感じながら捉え、首に向かって鋭く小剣を振り下ろした。

 動脈を寸分の狂いもなく切られたワイルドラビットBは断末魔を上げる暇もなくこと切れた。


 シュウは数秒の間のことだったが息が切れ、汗も止めどなく流れる体を仰向けに倒した。

 数回深呼吸を繰り返し、息を整えた。

「はぁ~びっくりした。

 一匹だと思ったらリンクすんだもん」

 息が整ったところで上半身を起こし、ワイルドラビットBを見つめてからAを見た。

「矢当たったよな?

 それで仕留めてはいないけど、背中に刺さってたよな?」

 自分の構えた矢から射線がワイルドラビットAの背中に伸び、そこに違わず刺さった瞬間を思い出し、思わずぐっと握りこぶしを作って持ち上げて、

「やったああああ」

 と叫んでしまっていた。


 クエスト<<ワイルドラビットの狩猟>>ノルマ達成6/5


 納品用の最後の一匹の毛皮と肉はワイルドラビットBにすることにした。

 ワイルドラビットAは初めて射撃が当たったこともあり、記念に肉をビアンゼの宿に持ち帰ることにした。

 ただ持ち帰るには量が多いので二つに分け、半分はロンナに報告とお礼を兼ねて持っていくことにした。 

長くなってしまいました……

やっとこの話は終わりです。

書き終わった今は付け足し付け足しにせず、

次の話にすればよかったかなと思いました。

まさか最終的に1万4千字を超えるとは…

これも途中のロンナさんが思った以上に話してくれたからですね。

どうだったでしょうか。

考えてた以上に可愛くなってればいいなと思っております。

作者のイチ押しに急上昇です。

それでは長くなってしまいましたが、

ここまで読んでくださった方

気になられましたら、続きもよろしくお願いします。


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