293.隣国へ12
前話
隣国に向かうシュウとティアリス
湿地、台地を進みやっとバスティオン王国を囲む森が見えてきた
目標としていた森が見えたことによってシュウとティアリスの足はここまでの疲れを忘れたかのように軽くなった。
そして、その足は森の目前で止まることとなった。
「こ、これは……」
シュウとティアリスの視線は目的地である森で止まっている。
「王都は森に霧の結界を張っているって言ってたけど、森の外まで霧を発生させてるのか?」
シュウとティアリスが見つめる先、森の木々の隙間から白い靄が顔を出していた。
「私もここまで来たのは初めてですので実際に見たことはなかったのですが……。
調べてきた事やルーツさん達の話では王都の周辺だけとのことだったかと」
シュウの質問にティアリスは記憶を探りながら答える。
シュウもティアリスの隣でルーツ達の話を聞いていたのでその事は知っている。
しかし、目の前には白い靄が漂っている。
「王都がここから近い?
いや、聞いた話や地図でも半日ぐらいは歩かないといけない距離だったはず……」
シュウも記憶を辿って頭の中の地図で現在地と王都の位置を測る。
「この距離を結界の霧で覆う?
いや、あくまで結界だ。
基本は獣人族から王都を隠す目的と防御が目的。
大きくすればするほど消費する魔力も激しくなるはず」
「はい。
通常なら獣人族にだけ作用する迷いの霧のみを王都の周囲に発生させていると聞きましたね」
「外から見えてる範囲だけでも森に入ったらすぐ視界がなくなりそうだな。
うーん……」
「どうしましょう?
この霧の中に入るのは危険なのでは?」
「そうなんだけどね。
けど、ここまですれ違った冒険者のパーティは至って普通だった。
少なくとも彼らが森を通った時はいつも通りだったはず」
「たしかに。
一番最近見かけたのは一時間ほど前でしょうか。
あのパーティも特に変わった様子も無く、和気あいあいとお話されてました」
「そう。
だからあの霧は今から一時間以内に発生したと思う。
そして、僕達がここへ来ることを知っているのは冒険者ギルドのマスターぐらいだけど、正確な到着予定はわからないはず。
だからこの霧は僕達に向けられたものじゃないと思う」
「だとすると、この霧の目的は……」
「王都の人を森から出させない為か――」
(――っ、……)
「森の中の人を迷わせるため、か」
「シュウさん!」
「ああ、微かにだけど悲鳴のような声が聞こえた」
「どうしましょうか?」
「……」
シュウは悩む。
森を包む霧は白く濃い。
この霧はシュウ達とは関係がないので霧が薄まるまで待つこともできる。
ここまでくれば霧さえ晴れれば半日歩けば王都だ。
急がないといけない時間でもない。
無闇にあの霧の中に入れば、僕達も簡単に道を見失うだろう。
この場に戻ってくることも王都に辿り着くのも困難になる。
だから――
「森に入ろう。
誰かが助けを求めてる」
「!
は、はいっ」
シュウは決心する。
自分だけでなくティアリスも危険にさらすかもしれない。
だからこれから助けに向かう人だけでなくティアリスも護ろうと。
「中の様子がわからないから慎重に急いで向かおう」
「はい」
「ティア、防御と身体能力向上の魔術を今かけておこう。
森の中は微かな声のした方向へ走る。
もし助けを呼ぶ人を救助出来たら王都へ、間に合わなければここへ戻ってくる。
なるべく真っすぐ進んでここに戻りやすくしよう」
「わかったわ。
詠唱を始めるわね」
そう言うとティアリスは杖を掲げて詠唱を始める。
(アルテ。
聞いていたな。
声のした方は記録したか)
『もちろんです』
(この位置も記憶して、地図上に声のした位置とここを直線で結んでナビしてくれ)
『畏まりました、マスター』
ティアリスの詠唱が終わり、二人に魔術がかけられた。
「よし、じゃ行こう」
シュウとティアリスは真っ白な闇の中へ駆け出した。
湿地があんなに長かったのはなんだったのかというくらい
台地は一瞬、次は森を走ります
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
11月初週は書く時間取れずに、またお休みするかもです
それではまた~




