279.湿地の夜25
前話
アウトポストで一夜を過ごすことにしたシュウとティアリス
街の外なので順番に寝ることに
先に見張りを買って出たシュウはいつも一緒にいるはずのティアリスが
横で寝ていることに少し緊張気味
そしてティアリスが寝入った様子だったが……
シュウは本を捲る手を止めて、更に耳を澄ませて聴覚感知に集中する。
アウトポストの中は静かで聞こえるのは、外で壁と屋根に打ちつける雨の音だけだ。
空耳だったんじゃないかと思い始めた頃、
「……う……うん……ううう」
と、シュウの座るベッドの隣から確かに聞こえてきた。
「ティア?
起きたの?」
ベッドを隔てる布越しにティアリスに声をかけてみる。
「……」
しかし、少し待っても返事はない。
耳を澄ませてティアリスの呼吸音を確認すると、それは寝ている時の呼吸の物だった。
ただ少し呼吸の間隔が早くなっている。
(もしかして夢を見始めたのか?)
ここに着いてから聞いたティアリスが寝不足になっている原因と思われる夢。
過去にティアリスが体験したという住んでいた村が壊滅した時を繰り返し見る夢。
(話してもらった夜に早速その夢を見るとか……。
それもこんなにうなされて……)
シュウが様子を見ている間にティアリスの小さな呻き声の頻度は上がっていく。
「ティア、大丈夫?
ティア?」
ティアリスの今日一日の疲れ方を見るとゆっくり寝かせてあげたいところだが、寝つきの悪い夢でうなされたままなのも可哀そうだった。
それにこの状態は眠りも浅く疲れが取れないだろう。
『ここからではよく様子がわかりません。
確認に行くべきかと思われます』
(だけど女の人の寝ているところに……)
『仲間の命に関わるかもしれない時に何を言っているんですか』
(命に?)
『このままの状態で寝かし続けたとして身体が休まることもないでしょう。
そうすれば明日も疲労が蓄積続け、もしモンスターとの戦いで不調をきたせば命に関わる可能性があります』
(たしかにそうだけど……。
確認に行って何か出来るのかな?)
シュウは怪我等のことは少しわかって治癒術も使えるので簡単なものは治せる自信があるが、悪夢のような精神的のものは専門外だった。
そんなシュウが悪魔にうなされているティアリスを診ても何もできることはないだろう。
『マスターは一晩中うなされている声を聞きながら横で過ごすおつもりですか?』
(う、それはそれで辛いな)
そうだった。
ティアリスは寝ているのでその場を動くことはない。
かと言ってシュウも見張りという役割からこの場を動くことができない。
テーブルの方へ少し離れるということはできるが、そちらは布を張っていないのでティアリスが寝ているのが丸見えで見に行くことと変わらない。
それに周りからの侵入を警戒するうえで聴覚を研ぎ澄ます必要があるため、どうしてもティアリスの呻き声が聞こえてくるだろう。
この小さなアウトポストの中では聴覚に集中すれば小さなティアリスの呻き声が聞こえない場所はない。
もうそこでティアリスが悪夢にうなされていると認識してしまっているため、呻き声を聞き逃すこともないはずだ。
(わかった。
とりあえず様子を見に行こう)
自分の中で様子を見に行くしかどうしようもないと結論付けて静かにベッドから降りる。
「ティア、大丈夫?」
一応ティアリスが起きているのかの確認をする。
「……」
やはりシュウの言葉に返事はない。
(行くか)
シュウは自分しか起きている者はいないとわかっていながらも足音を殺して歩き、布の手前まで進む。
そこで一度溜息をついて、布から少し顔を向こう側へ覗かせた。
『傍から見れば覗き魔に見えますよ』
(うるさいよ!
自分でもわかってるから!)
覗いた先には当たり前だがシュウが乗っていた物と同じベッドがある。
その上にティアリスが横たわっている。
「……ううう……あ、ああ……」
そのティアリスから確かに呻き声が発せられている。
「ティア……」
シュウは眠っていて聞こえていないはずのティアリスの名前を小さく呼ぶ。
『試しに鑑定を試みます』
(わかった。
何かわかったら教えて)
ティアリスがどうなっているかは外見からはシュウにはわからないのでアルテの鑑定に任せることにした。
シュウは静かにベッドの横まで歩き、ティアリスの顔を覗く。
こちら側は灯りがないので暗いが、ティアリスの顔には眉間に皺を寄せて苦しそうにしている。
「ティア、一体どんな夢を見ているんだい?」
シュウは眠る相方の横で小さく呟くしかできなかった。
やっと湿地に入ってからサブタイトルにしていた夜の回収に
リーチと戦っていたころは別でよかったんじゃないかと思いますが
こんなに話数いくとは思わず……
まあいつものことですね……
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
それではまた~




