278.湿地の夜24
前話
隣国への旅の途中のシュウとティアリス
湿地の初日をなんとか終えようとしていた
ティアリスはその日の体調不良を理由に先に寝ることを勧められる
しかし、ティアリスは自身の力が足りていないことを恥じ
寝ずに魔力操作の訓練をしようとした
シュウはペラペラと持ってきていた本を読みながら時間が経つのを待っていた。
布一枚しか間に隔ててない隣に女性がいるのだ。
ティアリスとは旅の途中で洞穴等で一緒に休んだことはある。
その時は何も思わなかったのだが、なぜか今は変な緊張がシュウの中にあった。
(平常心、平常心。
何も考えるな、感じろ。
あ、感じてもダメだ。
本だ、本に集中だ)
ベッドの上に座り本を捲ってはいるが頭に入ってこない。
聞き耳を立てている訳ではないが、布の向こうのティアリスの息遣いを感じ取ってしまう。
(なんか考え事でもしてるのかな?
ベッドに座りかけてじっとしてる。
って、何気配まで読もうとしてるんだ!)
シュウは意識しないようにすればするほど意識してしまう悪循環に陥ってしまっていた。
そんなシュウに気付いていない隣のベッドから
……ポスッ
と小さくベッドに倒れ込む音が聞こえた。
(ベッドに横になったのかな。
やっと寝るつもりか)
日中のティアリスの不自然な動きがシュウには普通の寝不足の影響とは思えなかった。
だが、他の不自然な体調不良はうかがえなかったので、今はわかっている寝不足に対処するしかない。
寝不足にはやはり寝ることが一番有効と思って先に見張りを買って出て、ゆっくり寝てもらうつもりだ。
その為に敢えて交代の時間を言わなかった。
ティアリスが起きた時に交代して寝るつもりだったのだ。
(ティアも冒険者として生活してきたんだし、交代制だとなればそれなりの時間で起きてくれるはず)
本を読んで気を紛らわせようとしているが、耳が勝手にティアリスの呼吸音を拾ってくる。
ベッドに横にはなったようだが、まだ寝てはいないようだ。
(先に寝てもらう番にしたのが強引すぎたかな。
でも、体調の事を考えるとゆっくりと寝てもらった方がいいはずだ)
『原因が鑑定でも現状不明である以上、マスターの考えに同意します。
鑑定のレベルが上がれば更に詳細を調べることができますが……』
(できないものは仕方ない。
アルテは今でも十分頑張ってくれてるよ。
ありがとう)
シュウは自分でも鑑定を使っているが、それでも鑑定のスキルレベルは上がらない。
そこでシュウは自分で戦っている時や相談していない時にアルテに周囲の物を鑑定してもらっている。
シュウからすればオート鑑定である。
その結果は量が膨大となるのでアルテが本にまとめてくれている。
そして、その本が今シュウがペラペラとページを捲っては戻っている本だった。
アルテが本に何の道具も無く文字を書き込めるのがシュウには不思議だったが、この本はシンからもらった魔法鞄に入っていた物の一つだ。
シュウがこの世界に来た時に持ってきてしまった本が魔術書になっていたことがあるが、この本は元々この世界の魔術書だったのかもしれないとシュウは思っている。
それでアルテが鑑定した結果を写し出すことができていると思う、ぐらいしか魔術に疎いシュウには考えつかない。
とりあえず、鑑定結果を確認できることと、少しづつでも鑑定スキルが上がっているのでシュウには問題としていなかった。
……トサッ
隣のベッドから微かな音が聞こえた。
(寝返りでもうったか。
ってか、こんなことやって、本当に変体じゃん。
隣で寝てる女性の呼吸を聞いて想像してるなんて……)
シュウは改めて自分がしていることを考えると恥ずかしくなって穴があれば入りたくなる思いだった。
そうやって心の中で頭を抱えていると、
『ティアリスの呼吸の仕方が変わりました』
アルテの声が響いてきた。
(そんなこと言うから僕が変態に思われるんだよ!)
『マスターが自分の行いを自白しない限りは周囲に漏れることはありません』
(それはそれでなんか印象悪くないか……)
『むっつりスケベ……』
(そん……)
シュウはアルテが人としているならばすごく冷たい目で見られているような気がした。
溜息をついてから、改めてアルテに言われたティアリスの呼吸に意識を向ける。
(やっと眠ったのかな?
さっきまではなんか考え事もしていたみたいだけど……。
呼吸はゆっくりで深い)
シュウは静かに懐中時計を取り出して時間を見る。
(夜の十一時。
もう少し早く寝て欲しかった気もするけど、まあいいか)
高校生であるシュウにとっては十一時と言えば家だとまだ寝る時間ではない。
ただこの世界では電気もないので基本夜は蠟燭か魔術道具の火に頼るしかない。
それも有限なので、普通の家庭の人々は自然と早く寝て早く起きる生活となる。
夜遅くまで起きているのはそういう仕事をしている者とその客ぐらいだ。
(寝てくれたなら後はゆっくり寝てもらって、僕は起きるのを待つだけだ)
シュウからティアリスを起こすつもりはなかった。
不慣れな環境での移動、戦い、剣気の修行。
一度に詰め込まれ過ぎた身体への負担が日頃からの寝不足と重なって体調不良として現れたのかもしれない。
一度眠れるとこまでゆっくり身体を休めて欲しかった。
(自分で起きたならそこそこ身体が休めてるはずだし、それでいいよね。
ゆっくり休んで。
おやすみ、ティア)
シュウは今度こそ本に集中するぞ、と気持ちを切り替えて手の中の本に集中した。
『逆さの本を読む修行ですか?』
シュウは黙って本をひっくり返した。
そのまま本を読んでティアリスが起きるまで時間が流れると思っていた。
そんなシュウの耳に、
「……う、うう、ううう……」
小さく呻くような声が聞こえてきた。
バトルのないだらだらとした話が続きます
ただやっとサブタイトル回収に入れました
ここまでながっ……
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
サブタイ回収まで長かったけど内容はサクッと終わる予定……
それではまた~




