275.湿地の夜21
前話
アウトポストに着いたシュウとティアリスは
ティアリスの不調は夢の中にあるのではと、
彼女の見た夢の話から冒険者になるきっかけの話をする
それは彼女の暗い過去を掘り起こすのだった
「ティアが冒険者になるためにブランジリに向かっていて僕に出会うまではわかった。
ありがとう。
それで、見る夢って言うのがティアが住んでた村が……」
「はい。
私の村が魔物に襲われている時だと思います」
「確定じゃないの?」
「たしかにその時だとは思うのですけど、夢の始まる場所がバラバラなんです。
私が父の薬草畑にいるところから始まったり、お遣いで近くのおばあさんの家にいたり。
時間もバラバラで、朝だったり夜だったり」
「なるほど。
時間や場所がバラバラだったら違う可能性もか。
ティアは夢の中では自由に動けるの?」
「自由かどうかですか。
うーん。
難しいところですね。
場面が自然と流れていくような感じで自分の意思で動いていないので自由と言う訳ではなさそうです」
「そうなのか。
たしかに僕が前に聞いた話もそんな感じだったかも」
シュウは寝つきがいいのか見ても忘れているのか自分で夢をあまり見た覚えがなかった。
語れるのは日本にいた頃に友人が話していたことやテレビなどで見聞きしたことだけだった。
「その夢を見てる間は前に見た記憶はないのだっけ?
初めて見たような感じで」
「うん。
どこから始まっても村にいた頃の日常のつもりで動いているわ。
ただ途中から流れが変わることがあるの」
「流れ?」
「村の中をいつものように歩いて家に帰ることが多いのだけど、途中から場面が急に変わることがあって村の家が燃え出すの。
そして、私は急いで家に帰るのだけど……」
「う、うん」
前に友人から聞いた話も夢の中の学校で教室を出ると突然学校の外に出ているといった、場面の転換があると語っていたことを思いだした。
ただそれでも話していた当人は夢の中だとその不自然に気づかないと言っていた。
夢ってそういう物かと不思議に思ったものだった。
「そこからの結末はいつも同じになるので同じ夢だとは思うの」
「その結末って?」
「それは……」
ティアリスはシュウの質問に言い淀む。
「最後は決まって私の家で両親が倒れているところで終わるの」
「あ……」
ティアリスの言葉にシュウも言葉に詰まる。
「家の入り口や裏口の隙間から私が中を覗いて、赤い血溜まりの中に両親が倒れてて」
「……」
シュウがティアリスに返す言葉を失っているところにティアリスは言葉を続ける。
「私がいる扉の前まで血が流れてくることもあるの。
でも、両親が倒れているのに私はそこから動くことが出来なくて……。
扉を開けて両親に駆け寄ることも……。
両親に呼びかけることありますが多くはそれもしないんです……。
私は無力だったんです」
「でも夢の中なんだから思った通りに動けないのは仕方ないよ」
「ううん。
そこは実際にそうだったの……」
「実際って?」
「夢じゃなくて、現実で両親が殺されている時に私は何もできなかった。
怖くて身動き一つできなかった。
何もできないうちに気を失ってしまって……。
目が覚めた時には全てが終わってた」
「全てが……」
ティアリスが冷めてしまったお茶を一気にあおる。
シュウはいたたまれない気持ちになりながらもティアリスの話の中で気になったことがあったことを尋ねることに決めた。
「それで、それを行った犯人、ティアが狙ってる魔物はその部屋にいたの?
現実でも夢の中でもどっちでもいいから見たのかな、と思って。
どんな魔物か覚えてる?」
「夢の中ではいる時といない時があったわ。
現実で見た時と夢でいた時は黒い靄みたいなのを纏っていてどんな姿なのか実ははっきりわからないの……」
「それじゃ、一体どうやって探すつもりなの?」
「黒い靄を纏う魔物というのと、すごく禍々しい魔力を感じたから、その魔力を感じたらわかると思う」
「それだけの情報じゃ……。
ブランジリの冒険者ギルドの図書室の魔物図鑑にもそんな魔物載っていなかった気がする」
「ええ。
私も調べて見たけどブランジリでは情報はなかったわね。
ブランジリはこの国でも辺境の方にある街なの」
「え、そうなんだ」
急にここでブランジリが辺境の街扱いだと言う事を知る。
「あんなに大きいのに?」
「そうよ。
隣の国の国境に一近いぐらいだもの」
「あ、それはたしかに」
「だから冒険者としてランクを上げて自分も強くなったら、王都や他の国の冒険者ギルドや図書館でも調べてみるつもりだったの」
「そうだったのか。
僕も新しい街に着いたら周辺の魔物のことを調べるつもりだったから、今回の任務で向かう国でも一緒に行こう」
「うん。
ありがとう」
「さてと、お茶も無くなったし、身体も暖まったから、今度は夕食の準備をしよう。
まだ話せてないことがあれば夕食の時にでも。
今日はここで休むから時間はたっぷりあるよ」
シュウは自分のカップを置くと、ティアリスにギュッと握りしめられたカップもその手からそっと取り上げて自分のカップの横に置く。
そして、立ち上がると荷物の方へ向かった。
「大丈夫。
私の夢でわかってるのはこのくらいよ」
ティアリスも遅れて立ち上がるとシュウの背を追う。
「じゃあ、次はどうやったらティアが安心して眠れるか、を相談しよう」
シュウはティアリスに顔だけ向けて言うと、荷物に向かった。
だらだらと続いてきた会話回もほぼ大詰め
強制的に切り上げた感もありますが……
次に早く行きたい……
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
それではまた~




