272.湿地の夜18
前話
湿地のアウトポストで一休みすることにしたシュウとティアリス
ティアリスも落ち着き、かまどの前で暖を取る
リーチ戦の後からティアリスの様子を伝えるがティアリスは覚えていなかったが
「何か思い当たる事でも?」
シュウの言葉に動きを止めたティアリス。
何か思い当たることがあるなら解決の糸口になるかもしれない。
「……。
……あ、いえ何も」
ティアリスはシュウから顔を逸らすと小さな声で答える。
(これは何か思い当たることがあるな)
『これはありますね』
シュウとアルテはティアリスの反応から寝不足になることがあったと確信する。
「本当に?」
シュウは心配そうにティアリスの顔を見ながら再度尋ねる。
「……」
ティアリスはシュウの言葉に思い込むように黙るとゆっくりとシュウの方に向くと話し始める。
「笑わないで聞いてくれますか?」
「もちろん」
「思い当たる節があることにはあります」
(やっぱり)
ティアリスの告白を受けてシュウは心の中で頷く。
「寝不足に思い当たる節はありますが、それが原因で意識が飛んでしまうことに繋がるかはわかりませんよ?」
「うん。
何が原因に繋がるかわからないから、聞かせてもらって考えよう。
一緒に」
「一緒に……。
うん」
ティアリスはシュウの言葉を嚙みしめるように繰り返した。
「それで何が思い当たったの?」
シュウの尋ねにティアリスは一度俯くと顔を上げてシュウに向き合った。
「隠すような事でもなかったの。
けど、あなたに心配させるのもと思って……」
「うん」
「最近、眠るとよく夢を見るの」
「夢?」
「うん。
毎回ってことでもないのだけど。
同じ夢を繰り返し見てる」
「見た夢は覚えてる?」
「その夢を見てる間は初めて見てるような感覚で何もできないのだけれど、起きたらまたあの夢かって何度も見てることを思いだすの……」
「何度も……。
その内容ははっきりと思いだせる?」
シュウはあまり夢を見ないが夢は見ている間は意識があるように動けたり話したりするが目が覚めるとどんな夢を見ていたか忘れてしまうと聞いたことがあった。
思い出せても起きてすぐの間だけで、時間が過ぎるにつれて思いだせなくなると言った印象の薄い夢が多いと。
今のティアリスのように思いだせる夢は余程印象に残る夢ということになる。
「何度も見てるからね。
えっと、ね……」
ティアリスは夢の内容を話そうと内容をまとめるために思い返すが、自然と目線が下がり、手の中にある湯気を立ち昇らせるお茶の入ったカップを見つめている。
「聞いて楽しいものじゃないからごめんね」
「ティアがそんなに悩むくらいだから、楽しいものじゃないってことはわかってる。
逆にそんな夢を思いだせて話させるのを謝りたいよ」
「ううん。
私が迷惑かける前に話しておくべきだったのかも」
「迷惑だなんて。
実際にここまでは自分の足で歩いてきたんだから。
実質僕に迷惑はかかってないよ」
「え、と、その……」
そこでティアリスは言葉を濁らせ、顔を赤くしながら顔を背ける。
「は、裸とか……」
「あ……」
ティアリスの言葉にシュウは先程の光景が頭によぎりそうになったが、
『余計なことは忘れて続きを聞きましょう!』
アルテの叫び声がシュウの頭に浮かびあがりそうになったイメージを霧散させた。
(わ、わかってる!)
「それは迷惑とかそういうのじゃなくてご褒美とか、えっとそうでもなくて、つ、続き、そう、夢ってどんな内容だった?」
シュウはパニックになりそうな頭でなんとかティアリスに夢の話を促す。
「……ご褒美……?
えっと、そのそうね。
夢の話だったわね!」
ティアリスは赤くなった顔を手で仰ぎながら夢の話に戻る。
今の流れで幾分かはティアリスの調子も戻ったようだ。
「夢って内容はいろいろあると思うのだけど、私の夢は過去に起きた出来事を何度も繰り返し見てるの」
夢の内容は人それぞれ見る度に内容が変わるだろう。
それも荒唐無稽な内容のものから、リアリティのあるもの。
正夢になるという将来起きることを予知するかのような内容のもの。
そして、過去に起きた出来事に似た内容のもの。
ティアリスはその過去の出来事の夢を見るようだった。
(過去に実際にあった出来事を夢にまで見るというは、相当印象が強い内容のはず。
僕がティアのことで知ってるのは……。
出会った時のパーティに置いていかれたことぐらいか……。
長く一緒にいる気がしてもまだ何も知らないな)
シュウが知るティアリスの過去はそれほど多くなく、夢にまで見るかと言われると疑問だった。
「シュウさんには話していなかったのですが、私が故郷の村を出て冒険者になるきっかけとなった出来事です」
「あ、たしかになんで冒険者になるか詳しくは聞いてなかったね。
たしか目標があるってだけ……」
シュウは出会った時に少し話した冒険者になる理由を遠い記憶の中から思いだす。
「えーっとなんだっけな。
強くなることが目標で――」
そしてそれは普通の女の子の理由とは少し違った内容だったことを。
「それから魔物を殺す……こと……」
そこまで思い出してシュウはティアリスの顔を見つめる。
「ええ。
その通りです。
そして、夢の内容は……」
ティアリスは目に強い意志を宿らせシュウを見つめ返す。
「私の両親や故郷の村のみんながその魔物に殺された時のことです」
シュウは見つめてくるティアリスの目に淀んだものが見え隠れしているような気がした。
寒い日と暑い日の寒暖差が激しくなってきました
桜もいつの間にか散ってましたね
いつもながらすんなり本題に入ればいいものを
脇道に逸れるのであまり進みません
そんな書き方です
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
それではまた~




