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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第四章 他国へ
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270.湿地の夜16

前話

湿地での初戦を終えたシュウとティアリスは身体を休めるため

アルテのナビに従って雨宿りのできるアウトポストに向かった

アウトポストに近くなり、慎重に進むシュウだったが、

建物は無人で待ち伏せもないようだった

そこで一晩明かすことに決めたシュウは

濡れた服を乾かすためにかまどに火をいれたあと

振り返るとそこに――

「な、な、な、な!」

 目の前の光景にシュウは頭が追いつかない。

 見てはいけないと思いつつも目を逸らすことができないシュウは意味のない言葉を発しつつ口を鯉のようにパクパクさせているのだった。


『ティアリスの体温が低下中。

 至急身体を暖めることを提案、いや命令です!

 至急です!

 マスターいやらしい目で裸を凝視はそこまでです!』


 シュウの頭の中でアルテが叫ぶ。

 その声にやっとシュウはティアリスから目を逸らすことができた。

「おおお!

 危ない……。

 恐ろしい状態異常だった……」

『……』

 無言のアルテが今目の前にいるとしたらすごいジト目をしている気がする。

「そうだ!

 ティア!

 身体が冷えちゃうよ!

 服を着て!」

 シュウはティアリスに向かって叫ぶがティアリスが動く様子はない。

「くっ。

 こうなったら!」

 シュウはティアリスの裸が目に入らないように床を凝視しながらティアリスの横を駆け抜け、自分の魔法鞄に飛びついた。

 そして急いで鞄に手を突っ込み、毛布を掴んで引き出す。

「これをこうだーー!」

 毛布を両手で広げてティアリスに向かって駆け戻る。

「ティア、これで身体を隠して!」

 シュウはティアリスの身体を毛布で包み込んだ。


「――!」

 遠くで誰かの声が聞こえる気がした。

 その声は聞いたことがあるような聞いたことが無いような、不明瞭で聞き取れない。

 フワフワした意識が自分がどうなっているのかも判断させない。

(私、何してたんだっけ?)

 意識にも霞がかかったように考えることができない。

(私、私、ワタシ?

 わたしってだれだっけ……)

 意識もどんどん薄まっていくように思考ができず、自分が薄まっていくようだった。

(なんだっけ……。

 なにかしないといけない……?

 でも、もういいかな……

 ねむくなってきちゃった)

 身体は泥沼に嵌まったように重く動かすことができない。

 動かそうという意識も眠気によって億劫になった。

(もう、このまま……。

 ねむれたらしあわせ……)

 眠気に思考が呑み込まれつつあるのが自分でもわかる。

 が、それに抵抗しようという意識もすでにない。

 頭の中はこの眠気に身を任せれば気持ちよく眠れるだろうとということでいっぱいだった。

 ――そう。起きていても何もいいことは無い。

   周りには誰もいない。

   父や母ももういない。

   眠りにつけば夢の中で父や母に会えるかもしれない。

   もう一度父や母のぬくもりを感じられる――

(ああ、すこしさむいな)

 意識が眠気の沼に飲み込まれようとしていた時。


「ティア!」


 耳元で聞き馴染んだ声が自分の名前を呼んだ。

(そう……だ。

 私はティア……ティアリス)

 最近やっと今自分の名前を呼んだ声の主からティアと呼ばれることに慣れてきたところだ。

 それまでは呼ばれるたびに顔がにやけそうになるのを悟られないようにすることで必死だった。

(私はシュウさんと旅をしていて……)

 声の主……冒険者のシュウとパーティを組んで旅をしている最中だった。

 霞がかかったような頭が少しずつ冴えていくように回転を始める。

(シュウさんと湿地に入って、リーチ達と戦って、たしか勝つことが出来て…)

 リーチと戦って勝ったところまでは思いだせたが、冴えてきた頭でもそこからどうなったかが思い出せない。

 そして、暖かい物に包まれているが足元がスースーする。

(んん?毛布?)

 身体を包んでいるのは乾いた毛布のようだ。

 毛布の中でモゾモゾと手を動かすと、いつも感じるはずの感触がない。

(あれ、服?装備は?)

 頭が冴えていくにつれ現在の自分の身体を取り巻く情報が入ってくる。

「あっ……」

 ティアリスの頭のすぐ後ろで小さく声がした。

 自分の名を呼んだ声だ。

 その声と同時にティアリスは視線を下げ、自分の身体を見下ろす。

 そこに毛布をティアリスの後ろからかけた状態の男性の手が見えた。


 後ろから毛布でティアリスを包んだシュウ。

 すると先程まで指一つ動かなかったティアリスの手がモゾモゾと動いている感じがした。

「あっ……」

 今の状況を冷静に考えると、後ろから毛布をティアリスに掛けているのだが、他人から見ると両手でティアリスに抱き着いているように見える。

「あ、ごめん!」

 抱き着いている状態はまずいと手を放し、ティアリスから一歩離れる。

 しかし、毛布を掴んでいた手を放すとどうなるか――。


 バサッ


 ティアリスを包んでいた毛布が地面に落ちる。


 ティアリスは身体から落ちていく毛布の下に、まさかまさかと考えていた状態が目に入る。

 裸。

 下着一つつけていない。

「き、きゃあああああああ」


 今までで一番のティアリスの絶叫をシュウは聞いた。

これを書いているのは四月の某日ですが

寒さが戻ってきて震えながら書いてます

みなさんが読んでる頃には暖かくなっているでしょうか


ここまで読んで頂きありがとうございます

皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです


ひと狩り行きたいのを我慢して書いていたので

これからひと狩りに向かいます

禁足地で会いましょう


それではまた~

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