27.集中
茂みから飛び出したシュウはそのままリンの横を駆け抜け、迫る狼の顔を目掛けて蹴りを放った。
狼は自身の勢いを止める事ができず、顔に蹴りを受けて飛んで行った。
シュウはルーツから受け取った剣を鞘から抜きつつ、
「彼を!」
リンにクランの容態を確認に行くよう指示をした。
「えっ?
あ、はい!」
リンは状況の変化についていけてないようだが、指示を受けた事でクランの許へ走った。
(狼と二人の間に常に入って、絶対に狼を通さない!)
シュウは気配察知に集中していた状態から剣気のコントロールに切り替えた。
(まだ全身を覆える程高まってないな……
狼の動きに注意しつつ、一気にいく!)
狼は頭を振りつつ起き上がった。
「グルルルゥ」
唸り声をあげてシュウを睨みつけてくる。
狼から怒りの籠った殺気が発せられるが、
(ルーツさん程じゃない……。
大丈夫だ。落ち着いて。
狼の動きをよく“観察”して)
シュウは自分で自分を落ち着かせるように狼に集中した。
「ガゥガアァ!」
狼が吠えながら走り出した。
シュウは動かず狼の動きに合わせられるように集中した。
狼はシュウの首に目掛けて飛び上がった。
(遅い!)
シュウは飛び込んでくる狼の喉を蹴り上げた。
再度蹴られ飛ばされる狼。
(普通の靴じゃなかったら、もうちょっとダメージいけたか?)
二度目の蹴りで飛ばされた狼は咳のような荒い呼吸を数度して、シュウを睨みつけた。
そして、大きく息を吸い込み……
「まさか!しまっ……」
「ワオオオオォォォン!」
狼は遠吠えした。
「しまったな……。
仲間に知らせたか……
なら、こいつを早く倒して、逃げる!」
狼は遠吠えを止め、シュウを睨みつけつつ身構えた。
シュウは右手の剣で狼をけん制しつつ、左手をゆっくり動かし腰のポーチから先程拾っておいた石を取り出した。
取り出した石を狼に見せつつ、再度ゆっくり持ち上げた。
狼も取り出された石に反応できるように石に集中した。
シュウは持ち上げた石を手首のスナップだけで“真上に”投げた。
クランの傍まで来たリンは、クランの容態を診ていたが狼の遠吠えで顔を上げた。
(ああ、狼がもっとくる!
早く逃げないと……)
この場からすぐにでも逃げ出したいが、倒れているクランをこのままにすることもできない。
助けに飛び出してきた青年はよく見ると防具もつけていない、ただの服に小剣しか持っていなかった。
青年だけでも逃げてもらえるようにと声を掛けようとした時、青年の左手がゆっくりと腰のポーチに向かった。
そこから拳ほどの石を取り出すと、またゆっくりと石を持ち上げた。
(そんな普通のような石でなにを?
えっ!?)
狼にも見えてしまっている石を隠そうともせずに、持ち上げて青年は“真上に”投げた。
その石の動きを目で追っていると、青年は“消えて”いた。
そして、リンが青年を見つけたのは狼の首に剣を突き立てた姿だった。
「な、なにが?」
リンは事態が呑み込めず呟いた。




