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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第四章 他国へ
279/303

269.湿地の夜15

前話

湿地での戦いを終えて

疲れた体を休めるべく近くのアウトポストへ向かうシュウ達

リーチ戦後から様子のおかしいティアリスを気に掛けるシュウだった

 アウトポストから少し離れた茂みから二人で並んで屈んで様子を見る。

『モンスター除けの結界は作動しているようです』

 アルテの報告を聞きながらシュウは目を閉じる。

 自信の周囲に薄い魔力の波を走らせるイメージ。

 これがシュウの気配察知のイメージ。

 薄い魔力の波が生き物や魔力を持つ物に触れると反射するようにシュウの元へその情報を持って返って来る。

 その量が多いのでアルテがサポートすることでシュウは膨大な量の情報の中から必要な情報だけ抜き出すことが出来ていた。

 そして、魔力を使わない察知の技術……聴覚察知。

 まず視覚を閉じることで情報の一つを遮断。

 続いて降り続く雨がコートや地面を叩く音を排除。

(ティアは身動き一つしないな。

 呼吸も落ち着いているが……)

 周囲の雑音を排除していく中で、隣で屈むティアリスの様子を伺う。

 呼吸は問題なくしている。

 その呼吸が恐ろしく静かだ。

 必要最低限の息を吸って吐いているだけの小さな呼吸。

(人の呼吸は普通にしているだけでもその人のクセが出るものなんだけど……。

 いつものティアの呼吸じゃない。

 これは本当に早く休ませるべきだ)

 シュウはティアリスの呼吸音を最小限にする意識をしながら周囲の音に集中する。


 身を潜めてしばらく……

 気配察知と聴覚察知をアウトポストまで引き延ばしたが、建物の中からも外からも反応はなかった。

 目を開けてティアリスに顔を向ける。

「ティア。

 ゆっくり静かに近づいて中を確認するからゆっくり付いてきて」

 ティアリスにアウトポストに近づくことを伝え、立ち上がる。

 それに一拍遅れてティアリスも立ち上がった。

 ここにティアリスを待機させた方が安全だが早く建物に入れて休ませたい気持ちが勝った。

 それに……離れるとどこかに消えてしまいそうな危うさを感じた。


 シュウは茂みから抜け出し、静かにアウトポストに向かう。

 生垣の入り口から内側の様子を伺うが、察知の通り何もいない。

 建物の中に変化も感じない。

 シュウはサッと建物の扉に近づいて背を付ける。

 その状態で聞き耳を立てて中の音を探るが何も聞こえなかった。

 そのまま握りこぶしを作り、二度扉を叩くノックする。

 中からは何の反応もない。

 扉の取ってに手をかけ、少し開けて中を覗く。

 中は明かりがついてなく、見える範囲には誰もいない。

 意を決して扉を開けて、中に入る。

 室内を見渡してみて、

「誰もいない……な」

『察知の結果の通りでしたね』

(用心に越したことはないからね)

 扉から顔を出して、ティアリスを呼ぶ。

 ティアリスは生垣の入り口の傍で静かに雨に濡れていた。

「ティア、入っても大丈夫だった。

 早く入って」

 ティアリスに声をかけると、ゆっくりとした歩みでティアリスが敷地に入ってきた。

 シュウは改めて室内に向き直って見渡してみる。

 入り口は今入ってきた一か所だけで、窓は内側から押して開けるタイプが四方にあるが全箇所閉まっている。

 火を点けると少しでも明るくなり、外に灯りが漏れるために夜は基本閉める。

 モンスター除けの結界も侵入を完全に防ぐものではないので灯りに寄ってくるモンスターを寄せ付けないためだ。

 部屋の片方には木製のテーブルと四つのイスがセットで二つ置かれて、かまどもある。

 かまどの横には自由に使っていいのか、薪も置かれていた。

 この湿気で湿っているだろから少し火の傍で乾かす必要がありそうだ。

 もう片方には木製のベッドが四つ、しかし布団はない。

(さすがにこの雨が多くて常に湿気の多い場所に布団は置いておけないか。

 冒険者なら寝袋持ってるだろうし、そのままでも寝れるか。

 四人パーティから八人パーティが休める想定か)

『そのようですね。

 時刻的に今日の進行はここまでにしたらどうでしょう。

 この先のアウトポストまで向かうには日が暮れてしまいます。

 洞窟などの雨が凌げる地形は再度検索する必要があります』

(ああ。

 そうだな)

 湿地に入って半日歩いて、リーチとの戦いがあって、防水のコートを着てても内服が湿っている感触がある。

 屋根が確保できたなら無理に進まずにここで一泊する方が良いだろう。

「ティア、もうすぐ陽も落ちてしまうしここで一泊しようと思うけど、どうだろう?」

 シュウは室内に入ってきただろうティアリスに振り返って声をかけた。

 そのティアリスはまだ入り口をくぐった先に静かに立っていた。

 コートから垂れた雫が小さな水溜りを作っている。

 コクリと小さく頭が上下しただけで、そこから動きが止まった。

 ティアリスの足元に水溜りが出来てるの気づいて自分の足元を見ると同じように水溜りが出来つつあった。

「とりあえず、もっと中に入って扉を閉めようか」

 シュウがティアリスに言うと、再度コクリと頷いてシュウの方へ歩いてきた。

 シュウは開いたままの扉を閉めて、自分のコートを脱いだ。

 防水処理をしていたが、さすがに長時間雨に打たれていたので水気を吸って重くなっている。

 周囲を見渡すと扉の横の壁にコートや外套をかけるためと思われる杭が並んでいた。

 そこにコートをかける。

「ティアもコートを脱いで、ここにかけておこう」

 部屋の真ん中で立ったままだったティアリスに声をかける。

 ティアリスはゆっくりと振り返るともぞもぞとコートから腕を抜いてコートを脱ぎ、手にしたままこちらに歩いてくる。

 シュウはコート掛けの前でティアリスからコートを受け取り、シュウのコートの横にかけた。

「今日はここで休むからこっちのベッドの方に荷物を置こうか」

 シュウはベッドの方へ歩いて行き、一つのベッドの横に荷物を降ろす。

 コツコツコツとティアリスも近づいてきて、シュウの荷物の横に荷物を降ろした。

「僕はかまどに火を点けてくるから、ティアは先にタオルで濡れたところ拭いて、服を着替えて待ってて」

 シュウは魔法鞄に入れておいた乾いた薪と火打石、着火用の乾いた草を取り出してかまどに向かう。

 かまどに持ってきた薪を組んで真ん中に草を押し込む。

 

 シュル……バサッ……トサッ……トサ


「あ、ここの薪も周りに置いて乾かすか」

 横に置かれていた湿った薪に手を伸ばし、かまどの火が届かない位置に並べた。

 火打石で火花を草に向かって飛ばし、息を吹きかける。

 数回繰り返すと白い煙が昇り始めて、火が付いた。

 その火が薪に燃え移るのを確認する。

 まだ濡れた服のままのシュウに久しぶりの暖かい熱気だ。

 ティアリスに声をかけて暖を取りながらお茶でも飲もうと振り返る。

「ティア、火が付いたから、え……」

 

 そこには服を着ていないティアリスが佇んでいた。

やっと休憩のできる場所に着きましたね

すごく慎重に来ましたが誰もいない……

字数稼ぎではないですよゴホゴホ


ここまで読んで頂きありがとうございます

皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです


それではまた~

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