265.湿地の夜11
前話
高い防御力を持つアシッドリーチ
その防御力を貫くために雷の魔術を使う作戦をティアリスに伝える
二人同時にロックスパイクから飛び出し
魔術の準備に入った
二人は同時に右手を持ち上げてアシッドリーチに突き出す。
そして同時に魔力を練る。
シュウとティアリスの魔力が紫色に輝いて渦巻く。
その魔力を感じ取ったのかアシッドリーチがシュウを追いかけていた激流のビームを止めた。
そして、じっと身体を丸く収縮させる。
攻撃に回していた魔力を皮膚を硬化させるために使ったのだろう。
シュウ達の魔術を真っ向から迎え撃つ気だ。
(いざ、勝負だ!
こちらの雷が防御を貫くか、そちらの防御が雷を弾くか!)
防御態勢を取ったアシッドリーチの覚悟を感じ取ったシュウは負けられないと魔力に思いを込める。
(僕達は先に進むんだ!)
「「サンダーアロー」」
シュウは練った魔力をアルテに委ねて構成を任せた雷魔術を、ティアリスはシュウがアシッドリーチを引きつけたお陰で出来た隙で集中して構成した雷魔術を。
お互いに目を合わせることも無く、同時に魔術名を叫び、雷魔術を発動させる。
二人がアシッドリーチに向けた手の先から雷撃がアシッドリーチに向かって走る。
サンダーアローは雷の魔術に数えられる魔術の初歩の魔術。
雷属性の魔術を修得しようとする魔術師が一番最初に試みる魔術である。
雷魔術の初歩ではあるが、雷魔術自体の難易度が高いために他の属性の初歩の魔術よりも使用できる者が少ない。
その雷撃の矢がシュウとティアリスから放たれ、アシッドリーチを中心にして交わる。
アルテの言う通り、サンダーアロー単発の威力では魔力で硬化した皮膚に阻まれて、大きなダメージは期待できない。
そこで二人同時にサンダーアローを放ち、アシッドリーチでクロスさせる。
二方向からの雷撃で硬化した皮膚を貫く作戦だ。
「どう!?」
ティアリスがクロスサンダーアローに手応えを感じたのかアシッドリーチの様子を確認する。
アシッドリーチは二方向からの雷撃を同時に受けて身体を仰け反らせる。
そのまま身体が痺れているように痙攣させていたが、じりじりと身体を揺らして交差する雷撃の矢から逃れようと動き始めた。
「そんな!」
それを見たティアリスが驚きの声を上げる。
(やっぱりこれだけだと倒せないか……)
シュウもクロスサンダーアローから抜け出そうとするアシッドリーチを見て驚くがティアリス程ではなかった。
『予定通りですね』
アルテが脳内で語り掛ける。
「ティア!
魔術に魔力の供給を続けて!」
二人の魔術でも倒せないアシッドリーチを見て、脱力しかけたティアリスにシュウが叫ぶ。
サンダーアローでアシッドリーチを縫い留めるために二人は継続して魔力を送り続けていた。
もしここで諦めて魔力の供給を断つとアシッドリーチが自由になり、強酸の泡と水魔術でまた攻めてくるだろう。
シュウ一人なら避け続けて逃げることもできるかもしれないが、ティアリスが同じように避け続けることは難しいだろう。
だからここで決めねばならない。
(逃がさない!
アルテ!)
『承知しました。
魔力の測定、構成の準備は出来ております。
合成魔術「ライトニングケージ」発動』
アルテが構成を展開して魔術を発動させる。
シュウとティアリスが放ち続ける魔力を取り込み、サンダーアローに変化が起き始める。
「な、何……?」
何の説明を受けていないティアリスから再度驚く声が上がる。
二人から直線でアシッドリーチに向かって交差していた雷撃がアシッドリーチを中に取り込んだ三角錐を形作った。
三角錐の中は見えない力場が発生しているのかアシッドリーチが宙に浮いている。
(雷の檻か?
身動きは取れなさそうだけど……)
シュウ自身もアルテに魔術の構成を任せたので効果を知らない。
拘束するだけの魔術かと思い始めた時、さらに変化が起きた。
アシッドリーチを拘束する三角錐を形成する雷撃から中のアシッドリーチへ無数の雷撃が放たれ始めたのだ。
(拘束して行動不能にしてからの四方から雷撃による攻撃……。
エグい魔術だな……)
『マスター達の魔力量、残魔力量、継続戦闘余力、今後の行程を考慮し、最も効率的な魔術を構成しました。
そもそもマスター達の……』
アルテが人だったらドヤ顔してるだろうなという声で延々とシュウの脳裏に解説が語られるのだった。
久しぶりの魔術合成
これでやっと終われる……はず
でもサブタイトル見るとまだ続きそう……?
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
それではまた~




