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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第四章 他国へ
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264.湿地の夜10

前話

アシッドリーチの上下の攻撃に追い詰められつつあったシュウを助けたティアリス

彼女は任せられたスモールリーチを倒してシュウのサポートをしたのだった

形勢は傾いたと思われたがアシッドリーチは魔力を搔き集め、

ティアリスに激流を思わせる魔術を放つ

間一髪、土魔術で壁を作ったシュウはティアリスに作戦を伝える

「……雷の!?」

 シュウの言葉にティアリスは目を見開いて声を漏らす。

 ティアリスはまだシュウの前で雷の魔術を使ったことがなかった。

 というのも、呪文を覚えて、脳内で構成ができるようになっただけでまだ実際に使ったことがなかったからだ。

 魔術は属性によって扱う難易度が変わると言われている。

 その為、属性毎に使用できる魔術師の割合が大きく分かれる原因となっていた。

 魔術師によっては一つの属性に絞って習得する者もいるぐらいだ。

 ティアリスはルーツの館での修行で治癒術や補助魔術の習得に努めていたが、自分の出来ることを増やす努力も惜しまず、各属性魔術の習得を自習していた。

 それはまだ誰にも言っておらず、外に出て使う機会も訪れなかった為、今まで実際に雷の魔術は使ったことがなかったのだ。

 それをシュウはティアリスは使えると確信しているかのような顔をして指示をしてきていた。

 ティアリスなら出来るよね。信じてる。

 と、顔が物語っている。

「……わかりました」

 ティアリスは雷の魔術に自信があったわけではないが、シュウの期待を込められた目に覚悟を決めた。


 ティアリスが内心で自信のない雷の魔術を使う覚悟を決めている中、その覚悟をさせたシュウはティアリスの気も知らず、アシッドリーチの攻撃を防いでくれているロックスパイクを気にしていた。

(もう少し持つか……?)

 シュウはティアリスが雷の魔術に自信がないと知らなかった。

 だが、雷の魔術を使えると知っていた。

 シュウの腰に添えられている魔術書。

 そこには以前はシュウの使える魔術が記載されていた。

 しかし、今は別の名前もそこに増えていた。

 ティアリス、クラン、リン、レオニード、ラフィミア。

 あのデーモン族と戦ったミッションの後、魔術書にパーティの仲間の名前が増えていた。

 そこには、メンバー間でも話していない内容まで書かれていた。

 覚えているスキルや魔術は冒険者間では死活問題。

 シュウは気づいたその時は書かれた内容を詳しく見ずにそっと閉じた。

 しかし、ティアリスと二人で旅することが決まった時にアルテから安全の為に使える魔術だけでも確認しておくべきと提案されていた。

 シュウは少し渋ったものの二人の旅の安全をと念を押してくるアルテに押し負けて、ティアリスの魔術を確認した。

 そこに雷の魔術があったのだった。

「ティア。

 合図をするからあのリーチに向かってサンダーアローを」

「わかった。

 でも、上手くいくかわからないから……」

「?

 大丈夫、落ち着いてしっかり目標を定めれば上手くいくよ」

「うん。

 ありがとう」

 微妙に嚙み合ってない会話を交わしているうちに二人の盾となっていたロックスパイクがミシミシと嫌な音を立て始める。

「じゃ、せーので飛び出そう」

 二手に分かれればアシッドリーチがあの状態なら、この激流はどちらか一方しか狙う事はできないだろう。

 そして、常に激流を放っていたので強酸の泡も生成できていない。

「行くよ。

 せーのっ」

 シュウの合図で二人はロックスパイクの陰から飛び出す。

 それと同時にロックスパイクが激流に貫かれるのが見えた。

 シュウは駆けながらポーチから投げナイフを取り出し、アシッドリーチに向かって投げつけた。

 投げナイフは一直線にアシッドリーチに飛び、その皮膚にわずかだが刺さった。

 激流に魔力を集中させているために皮膚の硬化に魔力を回せていないようだ。

 それでも元の皮膚の硬さもあり、投げナイフは皮膚に小さな傷を付けて地面に落ちる。

 けれど、それでよかった。

 アシッドリーチはシュウを追って激流の向きを変えた。

 少しでもティアリスからターゲットを逸らすためにシュウはヘイトを取ったのだった。

(魔力は練るから、後は任せるよ!

 アルテさん!)

『頼まれた時点で構築の準備をしてました。

 現状のマスターの魔力を元に可能な構成を模索済みです』

 シュウはティアリスが戦線に加わった時から、アルテに可能な限りの魔力の威力が上がる構成を考えさせていた。

 激流を引き付けて走りながら魔力を練る。

『構成の準備完了』

(あとはティアリスの準備が出来るのを待つのみ!)

 反対に走るティアリスに視線を送る。

 ティアリスは激流がシュウを追ったと判断すると足を止めて魔術の準備に集中しているようだ。

 そして伏せられていた目が開き、シュウと合う。

 お互いにコクッと頷き合った。

ダラダラと続いたバトルもやっと終わりが見えてきた

このままササっと終わらせたい

下手に乱入とかないよね……


ここまで読んで頂きありがとうございます

皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです


それではまた~

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