21.初めてのおつかい(異世界)
ごめんなさい!
火曜に投稿できたらって書いた次の週に間に合いませんでした。
書いてる途中で消してしまい、最初からになってしまって。
本当にすみませんでしたー!
精神的にも疲れてシュウは宿屋まで帰ってきた。
宿屋の前ではリームが箒で掃除をしていた。
「あ、お兄さん。おかえりなさい」
シュウに気付いたリームがあいさつで迎えてくれた。
昨日の話でシュウの事が年上とわかったので呼び方がお兄さんになってる。
「ただいま~」
「お仕事行ってたんだよね?どうでした?」
あいさつを返したシュウに尋ねてきた。
朝は会えずに出たため、仕事に行くとは女将さんから聞いたのだろうか。
「冒険者ギルドで初めて依頼を受けて、クエストをしてきたよ。
明日も朝から行くんだ」
「どんな依頼を受けてきたんですか?」
リームは冒険者の仕事に興味があるのか、漫画だったら目をキラキラさせていそうな様子だった。
「期待されてるような外に出てモンスターと戦うような依頼じゃないよ?
街の中でお手伝いをする依頼」
リームが期待するような冒険活劇ではないので、落胆されると思ったがリームは変わらず楽しそうにシュウの体を見て、
「お兄さん弱そうだもんね」
かわいい顔して心に刺さる一言を放ってきた。
シュウは心に痛恨の一撃を喰らい、疲れた体を支えきれず膝と手を着いた。
「あ、あ、ごめんなさい!
そんなつもりじゃ・・・
まだ装備も整ってないし、お母さんにも鍛えないとって言われてたから・・・」
フォローがフォローしきれてなくて、心をさらに抉っていく。
シュウの心のHPはもう0よ!
ただ、本当の事なのとリームも必死に謝っているので膝と手の汚れを払いながら立ち上がった。
「ごめんなさいぃぃ」
リームは目の端に涙を浮かべオロオロしていた。
「自分でも自覚してるから大丈夫だよ。
ちょっと大げさにしてみただけだから」
シュウはそう言ってリームの頭をポンポンと優しく撫でた。
「本当に装備もないし、力も無いからね。
だから、体も鍛えられそうな薪を割る依頼を受けたんだ。
そうしたら、依頼主がいい人で薪割りの後で剣術を教えてくれることになったんだ」
空を見上げルーツの依頼での出来事を思い出しながら話をした。
思い出したルーツの姿は鬼だった。
「・・・」
そこまで話してリームの反応がないことに気付いた。
「ん?どうかした?」
リームに視線を戻すと顔を俯かせていた。
シュウに尋ねられ、気が付いたのか顔を上げた。
「な、なんでもないです。
ほんとなんでも!
え、ええと。
あ、気にされてなかったらよかったです。
(嫌われてないかな・・・)」
リームは顔を赤くして言った。
最後の方は呟くようだったのでシュウは聞こえなかった。
「力が足りないっていうのも、薪割りで実感してね~
もうクタクタだよ」
「じゃあ、これからお部屋で休まれるんですか?」
やっとリームも落ち着いてきたようで尋ねてきた。
「そうしたいけど、汗も流したいな。
そうなると、今度は着替えが必要で買いに行かないとか」
リームの言うように夕食まで部屋で休みたいが、薪割りと剣術の指導で汗もかなりかいており、さっぱりしたかった。
服は今着ている物しかなく、洗濯してしまうと着るものがなくなってしまう。
「しまったな~
帰って来るまでに買ってくればよかったな」
冒険者ギルドの周辺では、冒険者向けの店が並んでいたので、探せば服ぐらいあっただろう。
「買い物ですか?
・・・お兄さん、字が読めないんですよね?」
「あ!そうか・・・
忘れてた。まいったな」
(さらに言うと相場も貨幣についてもわからないな)
どうしようかな、と思案していると
「私が付いて行こうか?」
リームが上目遣いで聞いてきた。
「え?
リームさんも仕事の途中だし、そんな迷惑かけられないよ。
なんとか店の人に聞きながらでいけないかな」
「仕事はだいたい終わってるし、お客さんもお兄さんだけだから大丈夫だよ。
お母さんに言ってくるね」
そう言うなり、宿屋の中に駆け込んでいった。
止める間もなくいなくなったリームに呆れつつ、シュウも後を追って宿屋に入った。
中では受付カウンターの前でリームが買い物に付いて行きたいとお願いしていた。
「わかったわかった。
じゃうちの買い物も一緒に行ってきなさい。
着替えて準備してくる間にリスト書いておくから」
「わーい。
お母さん、ありがとう」
リームは奥の部屋に駆けて行った。
「女将さん、すみません。
無理言ってしまって。
まだ地理が覚束なくて、字も読めませんし」
リームを見送った女将にシュウは事情を伝えた。
「いいんだよ。
どうせあの子から言い出したことだろう?
面倒をかけてるのはこっちだよ」
話しつつ女将は食堂側の入り口に入って、すぐに戻ってきた。
「ほら、これで簡単にでも汗を拭いておきなさい。
少しはさっぱりするでしょう」
そう言って湿らせた布を差し出してくれた。
ありがたく受け取りながら、お礼を言った。
「今日はどんな依頼を受けたんだい?」
女将がリームと同じ質問をしてきたので、外でリームに話したように説明した。
「へぇ~。あのルーツさんの所にね。
いいとこ見つけたね。
あの人だったら安心だよ」
納得した女将は優しく微笑んだ。
「女将さんはルーツさんと知り合いなんですか?」
知っているような素振りだったので聞いてみた。
「女将だなんて、よしておくれよ。
あれ?まだ私名乗ってなかったっけ?
私はビアンゼだよ。
私と旦那も前にルーツさんのお世話になってね。
ここの薪もルーツさんのとこのだよ。
そのうち君がわったのがくるかもね」
話しながらもビアンゼは紙に買い物してくるリストを書いていた。
「シュウさん。お待たせ」
準備を終えたリームが奥の部屋から戻ってきた。
着けていたエプロンを外して買い物籠とポシェットをかけていた。
「リーム。これがリストだよ。
お金もこの中に入れてるから。
一応多めに入れてるけど無駄遣いはダメよ」
ビアンゼはリームに買い物リストとお金の入った巾着袋のような財布を渡した。
「はーい」
受け取ったリームはポシェットにリストと財布を仕舞った。
「じゃ行ってきまーす。
シュウさん行こう」
リームはシュウの手を引いて玄関に向かった。
「すみません。
行ってきます」
慌ててシュウはビアンゼに告げて、リームに引かれるまま玄関から出た。
「はいはい。
気を付けて行ってらっしゃい」
ビアンゼはリームに引っ張られるシュウに笑いながら見送った。
シュウはリームに連れられ様々な店が並ぶ通りに来た。
「まずはお兄さんの買い物をしましょうか」
リームは一緒に歩くシュウに向かって言った。
「え?いいの」
「お兄さんの服を買いに来たんだもん。
服を見るならこっちだよ」
リームに引っ張られ服屋に入った。
売られている服はどれも中古で、新品は貴族が住むエリアにある店にしかないようだった。
店の中は服の状態によって値段が分かれていた。
元の世界の基準からせめて下着は新品が欲しかったが、言っても仕方がないので中古で我慢することにしたが、一番状態のいい物は新品同様にキレイだった。
買った物を魔法鞄に入れていると、結構な量を入れたにも関わらず鞄にはまだまだ入りそうだった。
リームは魔法鞄に驚いたようで、
「そんな高価な物どうしたの?」
驚く程高価だったらしい・・・
「里を出る時に友人から選別だってもらったんだ」
嘘は言っていないよ。
僕も出所は知らないので・・・
と、心の中で呟いた。
「そ、相当裕福な友達だったのね・・・
でも、その鞄だけでもすごい価値だから気をつけないとね。
盗られちゃうよ」
「まじ?」
リームと対応してくれていた店員が揃って頷いた。
「じゃ、人の前であまり出し入れしないでおくよ。
忠告ありがとう」
素直に礼を言うと、
「う、うん。
気をつけてね」
と言って、顔を背けられてしまった。
「後は何が欲しい?」
服屋を出てリームが尋ねてきた。
「他には、雑貨が欲しいかな。
タオルやそういった物。
あと、冒険者って何がいるのかな?」
何が必要かわからず尋ね返すシュウに腰に手を当てて、
「もう、本当に何も知らないのね。
冒険者なら水を入れる水筒や、外で野宿できる用意がいるじゃない」
もうどっちが年上かわからない会話になってきた。
「よく知ってるね」
シュウは自分が無知なのもあるが、年下のリームが冒険者について知っている事に驚いた。
「冒険者相手に商売してたら当然よ。
それにお母さんも冒険者だったのよ!」
「え!そうなの?
あんなに綺麗なのに」
冒険者を相手にした宿屋をしていると自然と冒険者の事について物知りになったんだろう。
それよりも、ビアンゼが元冒険者だと言う事に驚いた。
隣を歩くリームは小柄で華奢な見た目で、ビアンゼもリームがより女性的になった見た目なので荒事が多い冒険者をやっていたとは思わなかった。
「ランクも結構高かったみたいだけど、詳しく教えてくれないの。
でも、怒ると凄いよ・・・」
リームは昨日の事を思い出したのか顔を青くした。
「な、なるほど。
とりあえず、雑貨屋に行ってみて、今必要な物も買うよ。
野宿の準備はまだいらないし、お金にも限りがあるからね」
「わかった。
じゃあこっちだよ」
服屋同様、リームに引っ張られ雑貨屋に向かい、タオルや生活に必要な物を買って鞄に入れた。
その後、ビアンゼに頼まれたお使いを済ませた。
宿屋に帰る途中の道でアクセサリーを並べている露天商がいた。
リームが興味を引かれたのかアクセサリーを見ていると、
「どうだい、お兄さん。
彼女さんに一つプレゼントに。
ここらじゃ滅多に出ない物もあるよ」
店主がリームではなく、シュウに声をかけてきた。
「そ、そんな彼女じゃないです・・・」
赤くなったリームが小声で否定しているが、店主に届いているのだろうか?
シュウはそんなリームを見ていると髪をサイドでまとめているのが普通の紐のように見えた。
(この世界ゴムとか無いのかな?
髪ゴムとか、シュシュとか似合いそうなのに)
そんな事を思いながら、何か無いかと露天の品を見ていった。
やはりゴムを使ったような品は無かった。
が、質の良さそうなリボンが目に付いた。
リームの赤い髪に合いそうな白のリボンを手に取り、
「これを下さい」
と、店主に見せた。
「お、お兄さん。お目が高いね。
このリボンに使われている絹は近くの村の特産の糸を素材に使っていてね。
艶やかな肌触りが人気なのと丈夫で長持ちするよ。
そのリボン一つでニ五○ガルだ」
鞄から財布を取り出して銀貨を三枚出して、店主に渡した。
お釣りに大銅貨一枚が返ってきたので財布に仕舞った。
そして、手に持っていたリボンをリームに差し出した。
「はい。これ。
今日のお礼に」
最初の店主の一言で赤くなった顔を両手で押さえて、静かにシュウと店主のやり取りを見ていたリームは驚いた。
「え!?
そんな、いいですよ!
私が言い出したことですし!
そんな高価な物受け取れません。
それに私にはきっと似合わないですよ・・・」
頑なに受け取ろうとしないので、シュウは一歩リームに近寄った。
リームは驚き後ろに下がろうとするが、シュウが引き留めた。
そして、リームの髪をまとめている紐の上からリボンを巻き軽く結んだ。
「ほら。よく似合うよ。
ね?店主さん」
「あぁ。よく似合ってるよ。
良かったね。お嬢さん」
赤い髪にふわりとした白いリボンがお互いを引き立てていた。
リームは恥ずかしさのあまりまた耳まで赤くして俯いてしまった。
シュウは露店の商品を見渡していると、リボンの付いたバレッタが見えた。
リームにリボンが似合ったので、ビアンゼにも似合いそうでお土産にしようかと思っていると、
「この髪留めは細工に凝ってて、王都で流行りつつあるんだよ。
さっきのリボンと同じで絹の質にも拘ってるけど、お兄さんリボンも買ってくれたからおまけで安くしておくよ。
実は明日この街を出る予定でね。
お兄さん達が最後のお客さんだよ」
店主が笑って言った。
シュウは店主が安くしてくれたバレッタの代金を払い、バレッタを受け取った。
「ありがとうございます。
気を付けて旅をしてくださいね。
どちらに向かわれるんですか?」
シュウは安くしてくれた礼と、次にどこへ向かうのか聞いてみた。
「そうですね~。
ソルファー公国に渡って行商をしてから、次に今日のような細工物を仕入れにガスタロフに戻る感じですかね」
店主はシュウに答えてくれたが、やはりシュウにはわからなかったが、なんとか顔には出さなかった。
「お兄さん。
冒険者なのかい?」
今度は店主から尋ねてきた。
「は、はい。
どうしてですか?」
見た目では決して冒険者とはわからない格好だったのでシュウは不思議に思って尋ねた。
「今のご時世、他の国の事を聞きたいという人は大抵冒険者さ。
他の人も聞きはするが、やはり冒険者の方が情報に貪欲だね。
まぁ商人も同じようなもんだが。
後は、商人の勘ってやつかな。
私はガスタロフを拠点にしているガトーってもんです。
お見知りおきを」
店主はガトーと名乗り、シュウに右手を差し出した。
「シュウです。
昨日から冒険者になったばかりですが、よろしくお願いします。
彼女はお世話になってる宿の子でリームさんです」
シュウは自分とリームの紹介して握手を交わした。
「冒険者なら他の街でも会う事でしょう。
こちらこそ、その時はよろしくお願いしますね。
リームさんもまたお願いします」
「こ、こちらこそ」
リームはやっと落ち着いてきたところに話を振られて慌てて返事をした。
手を放すとガトーは商品を片付け始めた。
シュウ達もガトーに別れの挨拶をして、宿に向けて帰り始めた。
「シュウさん。さっきの髪留めは誰かにあげるんですか?」
帰り道にリームがシュウに尋ねた。
「ああ~あれね。
ビアンゼさんにだよ。
リームさんにリボンがよく似合ってたから、ビアンゼさんにも似合うかと思って」
リームにリボンが似合うという辺りでまたリームは顔を赤くして俯いてしまった。
そして、俯いたリームは小さく呟いた。
「(・・・大人な女性の方が好きですか?)」
しかし、声が小さすぎてシュウには聞き取れなかった。
「え?何?
何か言った?」
シュウはリームに聞き返したが、
「あ、いえ!何も!
今日の夕ご飯はなんですかね~?」
リームが慌てて話題を替えたので聞くことが出来なかった。
「今日も色々あって疲れたから、サッパリとした物がいいな~」
シュウはリームが話題を替えたのを不思議に思ったが、変に詮索するのも悪いと思い話題に乗った。
リームは少し俯き加減だったので、さらに話題を替えるべくシュウは話しかけた。
「リームさん。
お願いがあるんだけど。いい?」
「え?」
シュウからの急なお願いに戸惑うリームだった。
「僕に字を教えてほしいんだ。
昼間はクエストを受けに行くと思うけど、暫くは夜は宿にいるからリームさんの空いてる時間に教えてくれないかなって」
生活していく上で字の読み書きは早くなんとかしたかった。
「私でいいの?」
「他に頼めそうな人いないし。
できれば無料で!」
笑いながら両手を合わせてリームに頼み込んだ。
「えー。本当は高いよ?
仕方ないなー。
じゃあクエスト上手くいったら何か奢ってね?」
「了解です。
先生」
先生と呼ばれてリームは慌てて、
「先生はやめてよ!
あ、あと、お兄さんの方が年上なんだから、リームさんも止めてほしいな」
「え~何て呼んだらいいの?」
「お兄さんに任せます」
自分は昨日の今日で呼び方をお兄さんにしておいて、自分の呼び方は提案してくれない。
ずるいと思いながら、どう呼ぶか考える。
女性の呼び方を考えるなんて今までなかったので全く思い浮かばなかった。
身近な女子と言えば委員長と隣の道場の子ぐらいで、クラスの女子とは苗字で呼び合うぐらいだった。
呼び捨てにするほど勇気もないし、他に思い浮かばないので、
「じゃ、無難にリームちゃんね。
不平不満は受け付けません」
「えー。
子供扱いみたいじゃない?」
「さんがダメだったら、仕方ないじゃない。
さ、暗くなってきてるし、遅くなっちゃうから、帰るよ。
リームちゃん」
そう言って、荷物を持ってない方の手でリームの手を握った。
「・・・!」
リームは急に繋がれた手にまた顔が赤くなるのを感じ、もっと暗くなって欲しいと願いながら、シュウに遅れないように隣を歩いた。
暫くして宿に帰り、リームがお使いに頼まれた物をビアンゼに渡し、シュウは買ったリボンの付いたバレタを渡した。
ビアンゼは最初驚いたが、素直にお礼を言って受け取った。
その場で背中に流しているだけだった髪をまとめてバレッタで留めた。
シュウが思った通りよく似合っていた。
その日の夕食はサッパリしたものがよかったが、大きい肉にこってりした味付けだった。
美味しかったけどね。
その日の夕食後から食堂で字の練習が始まった。
時折ビアンゼも参加して教えてくれた。
ゆったりとした時間も過ぎて、自室に戻ってすぐベッドの布団に潜り、うとうとする頭でふと思った。
こんなに人も良く、部屋も綺麗で料理も美味しいのになんで客は僕だけなんだろう・・・?




