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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
20/303

20.クエストを報告しよう

 昼の中頃、時間にすれば三時頃にシュウは冒険者ギルドに戻ってきた。


 戦い方を師事することになり、教えてもらうのは薪を割ってからとなった。

 実はシュウが割れなかった薪は、ルーツがシュウを試すために特別堅い薪を出していたのだ。

 その後、ノルマとして出された薪は剣気を込めなくても割ることができた。

 それからルーツに連れられ、様々な武器を見せてもらい、その日は片手剣の型を習った。

 シュウは元の世界で竹刀や木刀を振った事はあったが、その時に教わった剣術は刀の振り方だったので片手剣の型が少し違和感を感じた。

 そして、片手剣の型を教えてもらい、基礎となる体が出来てないと指摘され、異世界式筋トレをさせられた後、今日は様子見だと先程解放されたのだった。


 疲労が溜まった体を引きずりギルドに入った。

 受付に達成確認書を提出し、今日の報酬を貰うためだった。

 ルーツに指示する事になったので、報酬は受け取れないと言ったのだが、正式なギルドの依頼なので報酬は受け取れと言われてしまった。

 生活するためやこれから装備を整える為に必要になると言われてしまったら返す言葉がなかった。

 その分薪を割ってもらうと笑って言われた。


 受付にサーシャの姿は無かったので、列が短めなコニンの列に並んだ。

 途中でシュウに気付いたコニンが事務所の奥の方に声をかけると、サーシャが出てきた。

 またサーシャに連れられ個室に向かうと殺気が飛んできた。

 シュウは先程学んだ剣気で体を覆うイメージをしてみると、感じる殺気が和らぎ、どっちの方から発せられているか感じる事ができた。

 個室に入るとサーシャが驚いた顔をしてシュウを見ていた。

「シュウさん。剣気使えたんですか?」

 シュウが体にうっすらだが剣気を纏っている事に驚いたようだ。

「さっきまでは存在すら知りませんでしたよ。

 ルーツさんに教えてもらいました。

 最初はほんと驚きました。

 教えてもらった家に行ったら、鬼が立ってるんですから」

 笑いながら椅子に座って、鞄から達成確認書を出した。

 そんなシュウを見て、

「本当にごめんなさい。

 私が説明の中でルーツさんが初めての人にはそんなイタズラをするって言っておけば・・・」

 サーシャの申し訳なさそうな態度に、

「あれは、知っててもびびるぐらいな威圧でしたけどね。

 それに知らなかったから、ルーツさんをよく見て剣気に気付くきっかけになったんで、よかったです。

 この依頼を紹介してくれてありがとう」

 シュウはサーシャに感謝を述べながら礼をした。

「そ、そんな。

 お役にたててよかったです。

 新人の方でも住民クエストを受けられる方は少ないので。

 本当は戦うのが不慣れな新人の方はみんなルーツさんのような依頼で戦い方を知ってほしいのですが。

 元々強い方や道場で教わった方等もおられて新人といっても力に差があるんです。

 そして、みなさん外に向かう傾向があるので、またそれほど力のない方が外に出られて不慮の事故に遭われることも・・・。

 私達もなるべく最初は街中での依頼を勧めるのですが。

 ルーツさんの様に自分から進んで新人さんを鍛えてくれる方もおられるので。

 ただ、そういうところにやる気のない人を送るのもギルドとしては避けたくて・・・」

 サーシャは悲しげな顔で新人の依頼受注の難しさを語った。

 シュウとしては装備もないので当分は外に出るつもりはなかったが、同じ様な新人でも積極的に外に出たがる者もいるのだろう。

 そこはやはり生きてきた世界の違いかもしれない。

「ルーツさんも言ってましたからね。

 新人の助けになればって。

 ギルドのみなさんも同じ思いでしょう?

 誰も死にたくないし、死なせたくないはずです。

 僕は死にたくありません。

 だから、明日もルーツさんの所に行きます」

 シュウは達成確認書を力強くサーシャに差し出した。

 サーシャは数時間前のシュウとの変化に驚いていたが、良い方向への変化で嬉しく思った。

「はい。頑張ってください。

 みんなシュウさんみたいな方なら安心なのに。

 それにしても、依頼に行かれる前と今で、もう変わられましたね」

 シュウが差し出した確認書を受け取ろうと手を伸ばしながらサーシャは言った。

「これからは少しでも考えていこうと思って。

 それに、サーシャさんが背中を押してくれたから。

 本当にありがとう」

 シュウは前向きに考えるきっかけをくれたサーシャに礼を言って、笑顔を見せた。

 そんな笑顔を見せられたサーシャは顔を真っ赤にして慌てた。

「そ、そんな私は当たり前のことをやったまでで・・・」

 慌てて確認書を受け取ろうとしたため、手から確認書が滑り落ちてしまった。

「「あっ!」」

 二人同時に声を出したが紙はヒラリヒラリと不規則に落ちていく。

「!」

 咄嗟にサーシャが紙を指で挟んで捕まえた。

「ふ~すみませんでした」

 慌てて赤く熱くなった顔を手でパタパタと仰いで、冷まそうとしている。

「いえいえ。

 今日はこれで帰ろうと思うので確認をお願いします」

「はい。承けたまりました。

 確認と報酬の準備をしますのでしばらくお待ちください」

 そう言ってサーシャは個室から出て行った。

 シュウは少し心臓がドキドキしているのを感じながら出て行くサーシャを見送った。


 五分程経ってからサーシャはトレイを持って戻ってきた。

「これが本日の報酬です。

 明日はこちらに寄ってから行かれますか?」

「いえ、直接向かうつもりですが。

 寄った方がいいですか?」

 シュウはルーツの家までの道も分かったので、宿から散策しながら向かおうと考えていた。

「い、いえ。

 それならいいんです。

 よくクエストボードだけでも覗かれる方はおられますので」

「そうなんですか。

 とりあえず、契約期間中はルーツさんの所に集中しようと思います」

 シュウは少しでも早く強くなるにはルーツの師事が最適のように思っていた。

「わかりました。

 では、こちらが明日の分の達成確認書です」

 報酬と達成確認書を受け取って魔法鞄に入れ、シュウは立ち上った。

「ありがとうございました。

 また明日報告に来ます」

 サーシャも立ち上がり、

「お待ちしております。

 明日も頑張ってくださいね」

 そう言ってシュウを見送った。


 シュウが個室から出たのを確認してから書類をまとめて自分も出る準備をする。

 不意にシュウが向けてきた笑顔が思い出された。

 サーシャはその笑顔が眩しすぎるように目を瞑った。

 同時に胸がチクリと痛んだ気がした。


 個室から出たシュウは変わらず向けられた殺気を無視して足早にギルドから出た。

 心臓の鼓動が早くなっているのを感じ、ギルドから少し離れた角を曲がり、壁に背を預け深呼吸をした。

(驚いたのもあるけど、すごかった・・・)

 シュウはサーシャの事を思い出していた。

 シュウが差し出した確認書をサーシャが慌てて手を滑らせた時。

 ヒラリヒラリと舞う確認書に一瞬鋭い“剣気”が発せられた。

 驚いて気付いた時には確認書はサーシャの指に挟まれていた。

(サーシャさん一体何者なんだ・・・)

 シュウは暫く壁にもたれて呼吸を整えた後、さらに疲れた体を宿に向けた。


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