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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
18/303

18.クエストを受けよう

お待たせしました。

実は18日に一度予約投稿してたのですが、消えてしまったので

再度投稿となりました。

前の方が自分的には良かったのに、思い出せませんでした。

 翌朝、宿屋で朝食を食べて早速冒険者ギルドに向かった。

 自分では早く来たつもりだったが、すでにギルドには人がたくさんいて、今日受けるクエストを求めて依頼書が貼ってある壁や受付に並んでいた。

 シュウも依頼書を見るためにクエストボードのある壁に寄って行って、近くに見えた依頼書を見て気付いた。

(あ、字が読めないんだった・・・)

 当たり前のことだが他の依頼書も読めなかった。

(こういう場合どうしたらいいんだろう・・・?)

 周りを見回して、受付で目が留まった。

(相談できるかな?行ってみようか)

 受付には綺麗な女性やかわいい人かっこいい男性等様々いたが昨日対応してくれたサーシャはいなかった。

 見渡して手際のよさそうなおじさんの列へ並んだ(列が短かったのもある)。


 おじさんの手際が良く、他の列よりも早く進んで次がシュウの番というところで横から声がかかった。

「シュウさん。おはようございます!」

 おじさんの手続きを見ていたシュウは不意を突かれて驚いて飛び上がりそうだったがなんとか堪えた。

「お、おはようございます・・・」

 横を見るといたずらに成功した子供の様に喜んでいる様子のサーシャがいた。

 そして、なぜか周りがざわついているような気がする。

「クエストを受けられるのですか?

 では、私が対応しましょうか。

 コニンさんいいですか?」

 コニンと呼ばれた受付のおじさんはいつの間にか前の人の対応を終えており、シュウの番になっていた。

「ああ、助かるよ。

 君も並んでもらったのに悪いね。

 それと、君、気を付けてね」

 コニンは後半をシュウに向けて言ってきた。

 何を?と、問い返す前にサーシャに手を引かれ、空いていた衝立で仕切られた個室ボックスに向かった。

 その間、ざわつきが大きくなり何か殺気のようなものを感じた。


 個室に入り、サーシャが入口を閉めると殺気を感じなくなった。

「さて、早速クエストを受けに来ていただきありがとうございます」

 個室の受付側の椅子に座りながらサーシャが言った。

「本日はどのようなクエストを受けられますか?

 あ、こちらに座ってください」

 サーシャが椅子を勧めながら問いかけてきた。

 どう答えたらいいかな。と考えたが上手く思いつかないので、そのまま伝えることにした。

「実は・・・依頼書を見たのですが、字が読めなくて。

 こういう場合はどうしたらいいのですか?」

 昨日からこの世界の字を見てきたが、英語の筆記体で書かれたような文だったが、使われている文字が違うのでさっぱり読めなかった。

「ああ。そんなことですか~」

 シュウの真剣な悩みがそんなことで済まされた。

 だが、サーシャはシュウを蔑むようでもなく、変わらず優しく笑って答えた。

「そういう場合は直接受付に来ていただければ、こちらでリストから説明させていただきますよ」

 そう言ってサーシャは持っていたリストを掲げてみせた。

「クエストボードに貼ってある依頼書は最新のものが貼ってあります。

 で、私達が持っている、このリストも同じ依頼が載っています。

 ただ、ここで選んでいる間に他で依頼の受注がなかったかの確認が必要ですが。

 クエストボードから依頼書を持ってこられた方が優先されるのでご注意ください」

 シュウは字が読めなくても依頼が受けれるとわかり安心したが、他の施設でもこういった対応があるかわからないので、文字の習得の必要性を強く感じた。

「それでは、最初に戻りますが、どのようなクエストを受けられますか?」

 ギルド登録時にどのような依頼があるのかも説明を受けていたので、シュウは昨日から最初にどんなクエストを受けるか考えていた。

 まず、手持ちの武器や防具もなく、技術もないのでモンスターの討伐は考えから外した。

 次に同様の理由で護衛クエストも外す。

 次に同様の理由で洞窟等での探索も外す。

 次に・・・。

 早く言えば、戦う力がないので街から出る依頼は止めておこうってことにした。

 説明を聞いている時に、住民クエストと言われる、街の一般の住民からも依頼が来ることがあるとのことだった。

 危険が少ない分、雑用事が多く報酬が安いことが多いので冒険者の間では人気がなかった。

 他にも土木工事等の力と人数が必要な時も、シュウのような駆け出しの冒険者や手の空いた冒険者に向けた依頼であるとのことだった。

「街の中での住民クエストを受けたいのですが」

 シュウは昨日から考えていたことをサーシャに伝えた。

「住民クエストですか・・・?」

「何か問題が?」

「い、いえ。

 昨日も説明しましたが、こういった依頼は冒険者の方に人気がないので・・・

 募集期間も過ぎてしまうこともあるぐらいで、受けて頂けるならギルドとしてもありがたいです」

「そうなんですね。

 僕はまだ装備もないですし、他の依頼を受けるまでの資金作りの為に街の中での依頼を受けようかと」

 それに街の人々からこの世界の常識等も得られればと考えていた。

 シュウの考えを聞いたサーシャはリストで依頼を確認していった。

 冒険者のランクや実績を考慮して受注する依頼をアドバイスをするのもギルド職員の仕事なのだと後で教えてもらった。

 昔、実力に合わない依頼を受け、死亡者が増加した時があったらしく、その経験からアドバイスをするようになったらしい。

 依頼書にも必要ランクが記載されているが、依頼の内容によって受ける冒険者に向き不向きがあり、ギルド職員はその見極めが求められていた。

「街の中での住民クエストとなると、冒険者の方に受けられないこともあるので、依頼者側からも人気がないんですよね~」

 リストを捲りながら街の中での依頼が少ない事を告げた。

 そして、リストから顔を上げてシュウを見つめた。

「シュウさんはどういった冒険者を目指されますか?」

「どうって?どういうことですか?」

 質問の意味が分からなくて聞き返した。

「先程仰られていたように、剣も杖もその他の武器も持たれてないので。

 モンスター等と直接戦う前衛か魔術等で遠くから戦う後衛かですね」

 考えていなかった。

 漠然と戦う力と考えていただけで、どのように戦うかは考えてなかった。

「考えてなかったです・・・

 けど、魔術なんて使ったことないし、僕でも今から覚えられるんですか?」

 魔法と魔術は違うのかすらわかっていないので聞いてみた。

「素質があれば大丈夫だと思いますが。

 今まで使ったことがないのなら、素質があるか調べて、魔術屋等でスクロールを買って覚えるしかないでしょうね~。

 お金かかりますよ」

 はいっ魔術師系後衛ムリッ。

 やっぱ世の中金だよね~

 現在もお金を借りての生活なのに、これ以上出費を増やしたくない。

「お金に余裕も無いですし、前衛ですかね。

 漠然と戦えたらと考えていて、甘かったです」

 考えなしだったシュウがシュンとなりそうだったので、サーシャは慌ててフォロした。

「早く気付けてよかったじゃないですか!

 私もアドバイスできてよかったですよ」

「実は昨日ここに来るまでにゴブリンに襲われたんですよ。

 その時にアロンさんとティアリスさんに助けてもらったんです。

 そして、戦う力が必要だってわかってたはずなのに、具体的な事を考えてなくて、人に言われないと気付けないなんて情けないですね」

 サーシャのフォローが聞こえてないのか、どんどん自分で気を落としていった。

 そんなシュウの頭に軽い衝撃が落ちた。

 手元を見ていた視線を前に向けると、サーシャが軽くチョップをシュウの頭に落とした体制のまま笑顔ではなく真剣な顔で立っていた。

「今私がモンスターや暗殺者だったら、あなたは死んでいました」

 かわいい暗殺者もいたものだ。

「いつまでくよくよしているんですか。

 反省したなら前を向いてください」

 サーシャは真剣な顔のまま、シュウの頭から手を下ろし、今度は両手でシュウの頬に添えた。

「あなたは無事こうして生きているんです。

 もし次に同じ事があった時、他人が同じ様に助けてくれるとは限りません。

 あなたは私やティアリスさん、アロンさん、マルクさんと出会い、縁が出来ました。

 今まで出会ってきた人達との縁もあるはずです。

 死んでしまったら、私は悲しいです。

 私だけじゃなく、ティアリスさんやアロンさんだって悲しむはずです。

 だから、下を向いてないで前を見て、強くなってください。

 ゴブリンなんかに負けないよう、他のモンスターに倒されないよう、死にそうでも生き残れるように。

 そして、自分だけでなく、今度は周りの人を助けられるようになってください」

 そこで、サーシャは手を離し椅子に座った。

 真剣な顔からふっと力を抜いて、

「私がピンチの時も助けに来てくださいね」

 微笑みながらシュウに言った。


 シュウはサーシャの言葉を聞いたが、視線はまた手元に戻っていた。

 そして言われた事を頭の中で何度も繰り返していた。

(そうだ・・・昨日もティアリスさんに言われたばかりだ。

 僕は一人じゃない。

 ティアリスさん達とは別れたけど、死んだらきっと言われたように悲しませてしまう。

 助けてもらった命を無駄にしてしまう・・・

 ここまでよくしてくれたサーシャさんにも迷惑を掛けっぱなしのままだ)

 シュウは一度目を閉じた。

 背筋を伸ばして顔を上げた。

 目を閉じた瞼の裏に兄の顔が浮かんだ。

 次に委員長・・・琴美の顔。

 隣の道場の・・・。

 学校の先生、クラスメイト達。

(こんなところで死ねない!

 止まってられない!

 帰るんだ!)

 シュウは目を開き、真剣な顔でサーシャを見つめた。

 サーシャは急に雰囲気の変わったシュウに驚いた顔をした。

「サーシャさん。

 ありがとうございます。

 目が覚めた気分です。

 僕にも少ないですが縁のある人達がいます。

 そんな人達の為にも死にたくありません。

 強くなりたいです。

 自分や今度は他の人達を助けられるくらい。

 もちろんサーシャさんも」

 サーシャは驚いた顔から少し恥ずかしそうに顔を赤くした笑顔に戻り、

「はい。よろしくお願いします」

 と、答えた。

 そんなサーシャにシュウが、

「また、同じ様に失敗を繰り返すかもしれません。

 その時はまた・・・」

「その時はまたこうです」

 シュウの頭にチョップを落とそうと手を持ち上げ、ゆっくりと振り下ろした。

 しかし、今度はシュウもサーシャを見ていたので、ゆっくり振り下ろされる手を優しく白羽取りした。

「よろしくお願いします」

 そして、二人して笑った。


 一通り笑いあったところでサーシャが切り出した。

「で、クエストどうしましょうか?」

 そう。クエストを受けに来て、何分も経っているのにまだ決まっていない。

「魔術が使えないので前衛でいくとして、体を鍛えないとダメでしょうから、体を動かす依頼ありますか?」

 武器が無いのでとりあえず、体を鍛えておこうと思ったことだ。

 それを聞いたサーシャの目が光ったように見えた。

「それならこれなんかどうでしょう?

 街の中で薪を売っている方なんですが、お手伝いさんが急に辞められて困っておられまして、薪割りのお手伝いの依頼です」

(薪割りか、元の世界ではやったことないけど、上手くしたら鍛えられるかもしれないな)

 そう考えたので、

「その依頼がいいです。

 受けさせてください」

「ま、まだ報酬や期間の説明が!」

「あ、そうですね。すみません」

 少し前のめりになりすぎたようだ。

 平常心。平常心。落ち着け。落ち着け。

「え~っと。

 内容は薪割りで、一定量割ってほしいそうです。

 拘束時間は薪割りの早さによって変わりそうですね。

 これを五日間。

 報酬は日当で七百ガルですね」

 最初にしてみれば申し分ないように思え、依頼を受ける手続きをお願いした。

 サーシャは一度個室から出ていき、クエストボードから今回の依頼を剥がして、他の職員から依頼が受けられてないか確認して戻ってきた。

 そして手続きを済ませ、シュウに達成確認書を渡した。

「期間は五日間ですが日当で報酬が出ますので、毎日達成報告書にサインをしてもらってギルドまでご報告をお願いします」

「わかりました。

 ここにサインですね」

 字が読めないので、サインを貰う場所だけ覚えた。

 そして、気になっていた事をサーシャに尋ねることにした。

「あの、すみません。

 ティアリスさんはもうクエストに出られました?」

 その質問を聞いたサーシャは困ったような顔をしたが、

「本来なら他の方のこういった情報はお教えできないのですが、あなた方達なら気になっても仕方ないでしょうね。

 今回だけですよ。

 他の人に言ってもいけませんよ。

 ティアリスさんはもうクエストに出られました。

 最初は街の中のクエストを勧めたのですが、討伐依頼を指定され受けて行かれました」

 シュウが住民クエストを希望した時にサーシャが一瞬驚いていたのは、この為だった。

 先にティアリスが来ていて、勧めた住民クエストを断っていたため、まさか今度は逆に希望されるとは思ってなかったのだ。

「ティアリスさんは魔術が使えて、少し杖術も心得ておられると言ってましたので大丈夫と思いますが・・・。

 シュウさんは自分のペースでいいと思います。

 少しずつ強くなってくださいね」

「わかってます。

 無理するのは好きじゃないので、少しずつやっていきます。

 まずは、この薪割りですね!

 行ってきます!」

 シュウは席を立ってサーシャに手を振って、個室の出口に向かった。

「気を付けて、頑張ってください。

 行ってらっしゃい」

 サーシャも手を振り返し、リスト等をまとめ、荷物を抱え事務所側の扉から出た。


「兄ちゃんの方はなんとか上手くいったようだな」

 扉から出たサーシャに声がかけられた。

「今度は自分から街中の依頼を希望してくれて助かりました。

 マルクさん」

 声をかけたのは個室の壁にもたれながら腕を組んだマルクだった。

「街から出た嬢ちゃんも今のとこ何もないようだ」

「そうですか」

 サーシャは一つ息を吐いて答えた。

「さっきの兄ちゃんに言ったことには、感動して涙が出そうだったぜ」

「なっ!」

 あの時個室の周囲には誰の気配もなく、その後一度外に出た時は今のマルクがいた位置には誰もいなかったはずだった。

 聞かれていた恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じ、顔を背けつつ、

「知りません。何のことですか!」

 と、誤魔化すサーシャに向け、

「お前にあんな感情があるとはな。

 だが、過ぎた感情は支障が出る。

 深入りは止めておけ。

 しばらく、二人はお前に任せるぞ」

 そういってマルクは壁から背を離して歩き去った。

「わかってます・・・」

 サーシャも依頼受注の事務とシュウとティアリスの書類を抱え、自分の机に戻った。


 その頃、シュウは個室から出た瞬間から再び出所のわからない殺気を浴び、冷や汗をかきながらギルドを出て行っていた。

クエストを受けよう!(冒険に出るとはいってない)

あれ、おかしいな~この話を考えている時は

この話の最初でクエストを受けて、

もう薪を割っているはずだった・・・

どうしてこうなった・・・

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