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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
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17.宿屋

ストックが厳しい~

頑張って書きます!

でも、冒険いつするのかな?

 ギルドの前で二人と別れたシュウは街を眺めながら宿屋を目指していた。

 冒険者ギルドの周辺には冒険者向けの店が集まっている。

 武器屋、防具屋、道具屋。

 どれもシュウにとってはゲームの中では馴染みのあるものだったが、実際に目にすることになるとは思ってもみなかった。

 今後の事もあるので店の場所だけ覚えて後で訪れようと頭のメモに記した。


 武器屋等の店が固まった区域を過ぎると今度は目的の宿がある区域だった。

 ここには冒険者向けの宿や酒場が密集していた。

 ブランジリには冒険者や各街を渡り歩く商人も多くいるので、街のあちこちにこういった宿屋区域があった。

 ティアリスとアロンは違う区域の宿となっていた。


 ギルドで教えてもらった宿までの目印を探して(字が読めないので看板が読めないため)キョロキョロしていると、不意に腰にタックルを受けた。

 不意を突かれたため踏ん張ることもできずに尻餅をついた。

 今日は尻へのダメージが多い。

 驚いたまま視線を腰にやると、そこにはタックルしたまま腰にしがみついている女の子がいた。

「確保~」

 と叫んでいる。

 確保して警察に突き付けたいのはこっちである。

「え、ええと。

 な、なに?」

 訳が分からないので、女の子に状況説明を求めた。

「ねぇねぇ!今日の宿は決まってる?」

 シュウの腰から手を放して、正面に座った女の子は笑顔でシュウに質問で返してきた。

 女の子は宿屋の客引きだったらしい。

 かなり強引だったが、これがこの世界の普通ではないことを切に願うシュウだった。

 「まだ決まってないけど・・・」

 紹介された所に向かっているとこだと言う前に、

「ならうちの宿に来なよ!

 大きくはないけど、料理がおいしいって評判なんだよ~」

 シュウはギルドでの紹介と似ていたので確認することにした。

「君の宿の名前は?」

名色めいしょくのいなか亭だよ」

 予想通りそこはギルドで紹介された宿だった。


「実は冒険者ギルドで君の宿を紹介されて今向かっていたところなんだよ」

「まぁ!そうだったの!」

 女の子は胸の前でパチンと手を叩いて喜んでいるようだった。

「じゃあ、案内してくれるかな?

 僕はシュウ」

 シュウは立ち上がり、女の子に手を差し出した。

「もちろん!私はリーム!」

 リームは元気よく名乗ったが、シュウの手を見つめた後、恐る恐るといった感じで手を取った。

 シュウは軽くリームを引っ張り起こした。

 リームは赤い髪をサイドテールでまとめていた。

 服装は街娘といった感じで白いブラウスに茶のスカート。

 リームはシュウよりも少し年下ぐらいで身長は頭一つ分ぐらい低いが、胸はブラウスの上からでもわかるほどはあった。

「じゃあ、こっちだよ~」

 リームがシュウを宿まで案内しようと体の向きを変えようとした。

 が、シュウが彼女の手を再び掴み、引き留めた。

「飛びついてきたから、服が汚れちゃってるよ」

 そう言って、彼女の服に付いた砂埃を払ってやった。

「勢いが強かったけどケガはしてない?」

 彼女の目を見て心配そうに尋ねた。

「え?あ、うん。大丈夫。あ、ありがとう。

 それと、いきなりぶつかってごめんなさい」

 リームは耳まで赤くなって頭を下げて謝った。

 シュウはそんな彼女を促して宿に向かった。


 案内された宿は思ったよりも大きかった。

 三階建てで一階は宿の受付と奥に食堂があるようで、他の階は客室のようだった。

 入り口から入ってすぐリームが奥に向かって、

「お母さんお母さん!お客さん連れてきたよ!」

 と、叫んだ。

「もう、お前は!強引に引っ張って来たんじゃないだろうね?」

 奥の厨房から受付にリームを注意しながら女性が出てきた。

 この宿の女将さんだろうか。

 リームとの会話で母親だとわかっていたが、それでなくてもリームと似ており家族だとわかっただろう。

 リームが大人になればこうなるであろう姿で、子供を産んでいるのにスレンダーだが、出るところは出ていた。

 リームと並んでいて、姉妹と思われても不思議ではない見た目だった。

「お客さん。ごめんなさいね。

 娘が無理言ってないかい?」

「そんなこと言ってないよ~」

 女将さんがこちらに向かって聞いてきたが、頬を膨らませたリームが答えた。

「本当ですよ。

 僕も冒険者ギルドでこちらを紹介されていたので。

 ただ引き留めるのに体当たりは止めた方がいいよ」

 シュウは前半は女将さんに向かって答え、後半は隣のリームに注意しておいた。

「あっ!そ、それは!」

 リームが顔を青くしてこちらを見上げてきた。

「・・・へぇ。

 冒険者ギルドの紹介かい?

 それはありがとうね。

 見たところまだ駆け出しでもないね。

 ウチは素泊まりが基準で五○○ガルだよ」

 一瞬女将さんから表情が無くなったが、すぐにシュウに向かって笑顔を見せた。

 アロンから渡されたのは銀貨で十枚だった。

(この世界の貨幣の価値と種類も調べないとな。

 とりあえず、半分の銀貨五枚で泊まれるだけお願いしよう)

 そう考えてから、銀貨を五枚取り出した。

「ええと、じゃあこれで泊まれるだけ」

「大銀貨五枚でニ五○○ガルだね。五日分ってことでいいかい?」

 シュウは銀貨だと思っていた硬貨が大銀貨で、大銀貨一枚が五○○ガルって事を頭の中でメモしながら答えた。

 大銀貨があるってことは銀貨もあって、一○○ガルってとこか。

「はい。お願いします」

「じゃあ、こっちの宿帳に記入を頼めるかい?

 女将がシュウに宿帳と言って、紐で綴られたノートを差し出してきた。

「ああ・・・すみません。

 字が書けないんですよ」

「じゃあ、私が代筆するよ。

 名前と年齢と職業・・・は冒険者でよかった?」

「はい。さっき冒険者に登録してきたところですが。

 名前はシュウで、年は十七です」

 女将は宿帳に書き込みながら、

「十七歳か。

 もっと下だと思ってたよ。

 ウチの娘と同じか少し下かと。

 もっと鍛えて筋肉付けな」

 頭一つ小さい女の子と同じか下に見らえるとは、この世界の男性は大柄が多いのだろうか。

「はい、じゃこれが鍵ね。

 二階に上がってすぐの部屋だよ。

 食事はそこの食堂で代金は注文の時に払っておくれ」

 後から知ったことだが、宿代に食事を含めないのは冒険者はクエストによって日をまたぐこともあり、食事を宿で取らないことがよくあるそうだ。

「鍵があるが、なるべく貴重品は置いておかないでくれるかい。

 弁償できないからね」

「わかりました。

 それでは、しばらくお世話になります。

 よろしくお願いします」

 そう言って、シュウは二階に上がる階段に向かった。

「リーム。

 ちょ~~~っと、聞きたいことがあるんで奥に来てくれるかい?」

 今まで無言で気配を消していたリームはこっそりシュウに付いて来ようとしていた。

 シュウも付いてきていることは知っていたが、先程いらぬ事を言ってしまったようなので黙っていたが、女将は逃す気がなかったらしい。

 顔は笑顔だが目が笑ってなかった。

「あうううぅぅぅ」

 と、涙目になってシュウを見た後、女将の後ろについて奥に入っていった。

(・・・こぉんのバカ娘がぁ!

 人様に迷惑をかけるんじゃないと何度言ったらわかるんだい!)

 ・・・バシンバシン

(ひぃぃぃ。

 お母さんごめんなさいごめんなさいごめんなさいいぃぃ・・・)


 僕は何も聞こえない!聞いてない!聞いてませんよーーー!

 シュウは階段を静かに駆け上がり部屋に飛び込んだ。

「・・・はぁ。

 リームさん・・・ちゃん?

 には悪いことしたかな」

 部屋は思ったよりも広くベッドは綺麗に整えられ、机と椅子、大きめで鍵もかけれるクローゼットもあった。

「入れる荷物が無いんだけどね」

 荷物が増えてもシンからもらったリュックのような鞄でしばらくはどうにかなりそうだった。

「まぁ服とか買ったら数枚着替えとして持って、あとは置いておけばいいか」

 窓に寄って、開けて外を眺めた。

 大通り側のようで人の往来や街並みがよく見えた。

「・・・はぁ。

 日本じゃないんだよな~

 というか、地球でもない。

 異世界か・・・

 どうなるんだろうな。オレ」

 しばらく外を眺めていたが、

「まぁ、なるようになるしかないか。

 行動しないと何もならないし。

 拠点はできた。

 まずは身の回りを整えよう!

 アロンさんのお陰で資金はある。

 でも、必要最小限に抑えて、明日はギルドでクエストを受けよう。

 そこからだ。まずは!」


 絶対に帰るんだ。兄の待つあの家に。


 それから、鞄をまた背負い、部屋を出ていき、周辺の地理を覚えながら散策し、日が傾きかけたころに宿に戻り、食堂で食事をした。

 ギルドの評判通り食事はおいしかった。

 そして、この世界には電気がないようで夜の明かりは基本ランプのようだった。

 基本というのは、この世界には魔法があるので明かりを灯す魔法もあり、同じ様な効果を持つ魔道具マジックアイテムもあるようだった。

 しかし、魔道具は高級品で一般市民には簡単に手に入れられないらしい。

 ま、これも後で知ったことなんだけどね。


 借りたランプの燃料を無駄に使うのも悪いので、部屋に戻ってからは早く寝ることにした。

 ベッドに入り窓から見える月を見ながら今日起こった事を思い出しながらまとめ、明日どんなクエストがあるのか考えているうちに眠ってしまった。

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