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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第一章 なかなか冒険しない冒険者
13/303

13.思わぬ壁

※モンドの名前を変更しました。

 三人はしばらく無言で歩いた。

 シュウはこの気まずい雰囲気をどうにかしたかったが、どうにもできずにいた。

 しかし、その静寂を破ったのは、意外にもティアリスだった。

「・・・ごめんなさい。暗い雰囲気になっちゃいましたね。

 そうだ、シュウさんは街に着いたら、どうするんですか?」

「えっ。ど、どうしようかな」

 明るい表情に戻ったティアリスから尋ねられ、どうしようか考える。

 情報を集めようとは考えていたが、具体的な事は考えていなかった。

「色々な所を見てみたいし、世間知らずな自覚もあるから、まず色んな事を調べたり聞いたりしたいかな」

「ふ~ん」

 シュウの定まっていない目的に何か考えつつティアリスは相づちを打つ。

「じゃあ、街にいる間のお金はどうするの?」

「あっ!?」

 全く考えてなかった。

 人が生きていく上で最低限の衣食住は必要であり、それらはもちろんタダではない。

 野宿をし、野生の食物を取り、服も着替えを我慢すればどうにかなるかもしれないが、それでも限界があり、元の世界で当たり前のように生活できていたシュウに耐えられるとは思わなかった。

「ど、どうしよう。

 考えてなかったし、お金持ってない・・・」

 街に着けばどうにかなると思っていた考えが足元から音を立てて崩れていくようだった。

「だったらシュウさんも冒険者ギルドに登録したらどうですか?

 ギルドには色々な情報が集まりますし、依頼を達成すれば報酬ももらえます。

 私もアロンさんに聞いただけですが」

 ティアリスが申し訳なさそうに、片目を瞑って笑った。

「それだけじゃない。

 冒険者になると様々な設備の使用許可や恩恵を受けれる。

 それにな・・・二人にとって、とても大きいのが・・・」

 続きを引き取ったアロンが話しているうちに、街の門の前までやっと辿り着いた。

 その門の前には、長い列ができていた。

 馬車の列と旅人や剣等を持った人の列と別れて並んでいた。

「ギルドに登録して配布されるギルドカードはな、身分証明になるんだ。

 持ってないだろ?二人とも」

「「あっ」」

 ニヤリと口元を上げ二人を見下ろすアロンに、二人は同時に声を上げた。

 門に続く長い列は街に入るための検問を待っている列だった。


 アロンの説明では、街に入る時に身分証明書を持っているのは、他の街でギルドに所属してギルドカードを手にしたものか、貴族くらいなものらしい。

 その他の人はどうするかというと・・・

「この二人は身分証がない。仮身分証を頼む」

 シュウ達の番になり、検問を担当している門番から身分証の提示を言われ、アロンが対応した。

「では、こちらに」

 対応した二十代前半と思われる門番は、隣にある小屋へ三人を連れて行った。

 そこは、門番の詰所らしく、三人を連れてきた門番が奥に声をかけると、別の門番が外に出て行った。

 替わりに検問に行ったようだった。

「では、こちらに座ってください」

 門番は詰所に入ってすぐの部屋にある机の一方にイスを二つ並べ、シュウとティアリスを座らせた。

 そして、反対側に座ると、

「では、お二人の審査を担当します。クロードです。

 よろしく。

 審査といっても簡単なものですので、固くならなくても大丈夫です。

 この審査にお一人前払いで大銀貨一枚必要です」

 それを聞いたアロンはクロードに金貨を渡した。

「では、こちらに記入をお願いします」

 クロードが二人の前に書類を出した。

 シュウは出された書類を見て固まった。

 何が書いてあるか、さっぱり読めなかった。

 隣ではティアリスが書類にスラスラと記入していたが、その字も全く読めなかった。

(マズい!?字が読めないし、書けない!?

 これだと街に入れない?)

 一人書類の前で汗を流していると、

「シュウさん、どうしたんですか?」

 自分の分が書き終わったのか、ティアリスがが小声で声をかけてきた。

 シュウは絶望した目で、

「・・・何が書いてあるか、読めないんだ・・・」

「あぁ~クロードさん。私が代わりに書いても大丈夫ですか?」

 状況に納得したティアリスはクロードに尋ねた。

「ああ、大丈夫ですよ」

「じゃあ、シュウさん、まずは・・・」

 ティアリスが書類の質問を読み上げ、シュウが答え、ティアリスが記入してくれた。

 シュウはこの世界の字も早急に学ぼうと心に誓った。

 後から知った事だが、この世界の識字率はそんなに高くないようだった。

 大きな街には学校があるが、通えるのは富裕層や貴族ぐらいで、それ以外は教会がボランティアで教えるぐらいだとのことだった。

 それでも、貧しい家庭では学ぶ機会すら与えられず、教会がないような村ではそもそも字が必要になることは少なく、読み書きできるのが村長だけという村も少なくないらしい。


 審査の質問はクロードさんの言った通り簡単なものだった。

 名前や年齢、出身地(一応ニホンと答え、誰も知らない程山奥の村と誤魔化した)、街に来た理由と殺人や窃盗を犯した事があるかを聞かれ、素直に答えた。

 勿論、殺人も窃盗もしたことはない。


 ティアリスは代筆したシュウの分と自分の分の書類をクロードに渡した。

 クロードは記入された内容を確認して、満足したように頷くと

「最後にこれに手を乗せながら、私の質問に答えてください」

 そう言って、机の上に水晶玉のような物を置いた。

「では、シュウさんから、この上に手を置いて」

 シュウは言われるままに水晶玉の上に手を置いた。

「では、名前は?」

「シュウ」

「今までに殺人や窃盗を犯した事は?」

「ありません」

 シュウが答える度に水晶玉の中に青い光が生まれていた。

 それを見てクロードは、

「はい。結構です。

 次にティアリスさん、お願いします」

「はい」

 ティアリスがシュウと同じ様に水晶玉に手を置くと、クロードは質問をしていった。

 名前と出身地と犯罪歴を。


「はい。では審査は以上です。

 問題ありません。

 こちらが仮身分証です。

 短期滞在用も兼ねてますので、有効期限は五日です。

 それまでに、どこかギルドに所属するか、役場にて長期滞在の手続きをお願いします。

 もし、期限を過ぎてしまいますと、罰金が銀貨一枚で、払えないと奴隷にされてしまいますので気を付けてください」

 クロードは二人に仮身分証を渡しながら注意事項を説明した。

 シュウは罰金が払えない場合の奴隷と言う言葉に驚いていた。

(奴隷制度があるのか・・・

 地球でも昔はあったし、同じ様なものなのかな・・・)

 仮身分証を二人に渡したクロードは改めてアロンに向き直った。

「おかえりなさい。アロンさん」

「ああ。街に変わったことはなかったか?」

「あれ?お二人は知り合いなんですか?」

 アロンとクロードを交互に見ながらシュウが尋ねた。

「はい。アロンさんは冒険者として有名ですからね。

 各街のギルドで引っ張りだこだと聞いてます。

 久しぶりにこの街に戻ってこられて、数日前にクエストに出て行かれて、その時も私が門番をしていました」

「そうだったな。

 こういうクロードもこの若さでこの門の警備隊で副隊長を務める程有名だ。

 剣の腕が相当と聞く。

 普段はもっと砕けて話すクセに。

 そうだ、二人とも、身分証を貰ったなら、早速門をくぐってみるといい。

 私はクロードに土産を渡してすぐ行く」

「いいんですか?」

 アロンに促されシュウは問い返し、それにアロンは頷いた。

「では、先に行きます!

 ティアリスさん 行こう!」

「はい!」

 実は仮身分証を受け取ってから、シュウとティアリスは街の中が気になっており、そわそわして門の方をちらちら見ていた。

 そして、アロンの許しを得て駆け出し、外の門番に仮身分証を見せて門をくぐっていった。

「まだまだ子供ですかね」

 その様子を見ていたクロードがアロンに言った。

「十六歳と十七歳ならもう少し落ち着いてもいいだろう」

「若さでしょう。

 で、アロンさん・・・あの、さっきの子・・・」

「その事で話しておきたいことがある」

 二人は急に声を潜めて話し出した。

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