109.勇者登場
ついに来る
「え?
ランク関係なく参加できること知らされてなかったんですか?」
サーシャが語ったランクの事についてシュウは驚いて尋ね返してしまった。
「あの人たちはここに来て、ミッションのお触れを出すとだけ言って、何も言わなかったといいましたよね?」
「え、ええ」
「私達も内容について言えないものとばかり思っていて、ランクに関してはBランク以上から等制限があるものと思っていたんです」
「それじゃあ、ランク関係なく参加できるって言うのは」
「先程初めて聞きました。
おそらくギルドマスターも」
「そんな、どうして……」
「わかりません。
そして、参加パーティの登録も先程初めて聞きました」
「え?
嘘……。
じゃあ、この並んでる冒険者パーティの対応は?」
「何も聞いてないので準備もできてないです」
「サーシャさんはここにいても大丈夫なんですか?」
リンがサーシャを気遣いながら尋ねる。
「私は基本的に担当者付なので受付での役割はないのですが……」
「あ、いたいた!
サーシャ先輩!
ギルド長がお呼びです!」
サーシャの後輩であろうギルド職員がサーシャを呼びに来た。
「わかりました。
すぐに向かいますとお伝えください」
その職員はサーシャの返事を聞くと反転して走って行った。
「ギルド長も告知で初めて内容と知ったはずですので、対応の検討をするつもりでしょうね」
「大丈夫なんですか?」
「ミッションの受注はきっとパーティリーダーからメンバーの名前を記入して頂いて、明日正式なミッション受注書を発行する流れになると思います。
恐らく今日はこのミッションの受付に手一杯となって、通常のクエストの受付はできないでしょうね」
「そうなんですか……」
「王国はギルドの機能を停止させたかったのかしら……」
サーシャが考え込む素振りをしながら小さく呟いている。
「あ、それでは私はギルド長の所へ向かいます。
シュウさん達もミッションに参加されるかどうかご相談を」
「あ、はい。
わかりました。
情報の提供ありがとうございます」
「こんなはずではなかったのですが……。
ミッションに参加するかはよく考えてください。
獣人が相手となるとこの街の周辺の魔物とは勝手が違いますので。
何かわかりましたら、またお伝えします。
では」
サーシャはシュウ達にお辞儀をしてから踵を返しギルドの受付の方へ走って行った。
「こんな事態になって大変だなぁ」
サーシャの後ろ姿を見送りながら呟くと。
「そんな人事みたいにしてていいんですか?
ミッション受けるなら早く並ばないといけませんよ?」
クランが冒険者ギルドの外にまで繋がる列を指を差しながらシュウに言う。
「あ、うわ~。
受付がまだ対応できてないからすごく並んでる……。
どうしよっか?」
シュウはクランの指差す列を見てからみんなの方へ向き直る。
「オレはどっちでもいいですよ。
ランクはシュウさんと上がったばかりですし、最近はルーツさんの依頼と修行でお金にも困ってないし」
クランがシュウの問いに自分の状況を踏まえて答える。
リンも同じなので横で頷いている。
シュウは続けてティアリスに顔を向ける。
「私はあなたたちのパーティじゃないので参加するつもりよ」
そうだった。
ティアリスはシュウのパーティではなかった。
ここ最近ずっと一緒にいたので勘違いしていた。
この冒険者ギルドのパーティ制度はメンバー登録制なので、パーティに参加する場合や脱退する場合は届け出を出す必要がある。
臨時でメンバーを募集してクエストに行く場合も事前に届け出る必要があるのだ。
ただクエストの目的地で一緒となり、協力する場合もあるのでその場合は柔軟に対応できることになっている。
「そうか。
ティアは参加ね。
でも、参加するならパーティに参加しないとね」
「うっ。
き、きっと大規模な作戦になるだろうし、臨時の募集もあるだろうからそこに参加するわ
でもあなた達が……」
ティアリスがシュウ達に話していると、
「そこのあんた魔術師だな?」
ギルドの入り口の方から近づいてきた男が後ろから声をかけてきた。
「俺のパーティが今魔術師を探している。
回復……この世界では治癒術?だったか、が使えるとなおいい」
「どちらも使えますが」
ティアリスが男に振り返りながら答える。
「ヒュ~。
いいね」
男が振り返ったティアリスの顔を見た後、体を舐め回すように視線を上下させる。
その視線が不快だったのかティアリスは一歩下がった。
「なんですか?
あなたは」
一歩下がったティアリスを庇う様にシュウがティアリスと男の間に体を割り込ませながら男に問いかける。
「なんだお前は?
雑魚には用がないんだよ」
シュウがサッと男を見ると年の頃はシュウと同じか少し上ぐらいだと思われる。
(この言動と雰囲気もしかして……)
「俺が用あるのはそっちの女でお前じゃねーんだよ。
おい女、パーティ探してんだろ?
入れてやるからよ。
その身体で俺に奉仕するなら正規のメンバーにしてやってもいいぜ?」
(こいつは何言ってるんだ?)
「キョウ様こちらでしたか」
男の後ろに騎士風の装備をした女性がギルドの入り口から駆けてくる。
「ハァ……。
やっと追いついたのか。
おせーぞ」
キョウと呼ばれた男は後ろの女性を一目見てため息をついて言葉を返す。
「申し訳ございません。
あの、こちらの方々は?」
「ああ、あんたらがチンタラしてるから俺自ら足りないパーティメンバー探してやってんの。
で、今この魔術師の女を入れてやるところなのよ」
女性はキョウの言葉を聞いてこちらに目で問いかけてくる。
「まだパーティに入ることを了承した覚えは無いわ」
シュウの陰からティアリスが答える。
「はぁ?
何言ってんの?
俺の誘い断んの?
もうこんなチャンス二度と無いかもよ?」
キョウがティアリスの返事を聞いて、信じられないといった顔をしている。
「この最強の勇者である俺のパーティに入れるチャンスなんてな」
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
ついに勇者が登場
これでこの世界は……
どうなるのか
それではまた~




