104.懺悔回再び
あれ、新しいお話……?
朝食の後、シュウは一人でルーツの所へ行った。
屋敷の中庭の一画にある東屋に通され、そこでルーツに昨夜の襲撃の事を報告する。
夜中に突然襲われたこと、宿の全員が襲われたこと、捕縛したが隠れていた侵入者に逃がされてしまったこと、助言を受けて準備していた短剣を持ち去られたこと、ビアンゼの所にクノートが来た事を順に話した。
ルーツはクノートが絡んでいることを聞いたところで顔を顰めた。
そして、クランが傷口から毒と呪いを受けて危うかったという話をした時にどこから聞いていたのかフランが現れた。
クランの状態を聞くとそのまま門の外へ走って行ってしまった。
「いいんですか?
フランさんって体が弱いって聞きましたが」
もう門から見えなくなってしまったフランを幻視しながらルーツに尋ねる。
「良くはない。
が、あいつがああなると言ってもきかん。
体が弱いと言っても昔のように力が出せないだけで普通の生活ができる程には安定させている。
だが、放ってもおけん」
ルーツがそう言って後ろを向くと、そこにいつの間にかメイドが一人立っていた。
シュウは気配察知の訓練として常に気配に関して気を配っているが、それでも気配を感じ取れなかった。
(そもそも、この館で気配を感じ取れる人の方が少ないんだけど……)
館で気配を感じ取れるのはメイドを含む使用人とルーツの証人としての客人達くらいだった。
「頼む」
ルーツがメイドに一言言うと、
「畏まりました」
メイドはスカートの裾を少し持ち上げる優雅なお辞儀をすると、スッと消えてしまった。
(ちゃんと見てたのに、目で追うこともできなかった)
フランをメイドが追いかけたようで昨夜のことについて話に戻る。
この時に、別のメイドがタイミングを計ったように現れ、温かい紅茶を淹れてくれた。
この頃からルーツの館でメイド達の気配が薄くなり、暫くの間突然現れるので驚くことになる。
シュウ達の宿での襲撃を粗方話し終わると、次はルーツからビアンゼの予想通りここも襲撃を受けたことが語られた。
相手はここがルーツの館だと知らない下っ端ばかりだったようで、ルーツとメイド達で全員捕縛されてしまったらしい。
ルーツさんが強いのは知っているので納得だが、いつも優しくお茶を淹れてくれたり親しく話しかけてくれたりするメイドさん達が襲撃者達を撃退したのは驚きだった。
ただルーツの話では襲撃者達は街の裏通りにいるようなゴロツキレベルだったらしく、捕縛したうちの数人から話を聞いてもお金を貰ってここを襲うように言われただけだったようだ。
「ランブル達と連絡を取ってみたが、あいつらのところにも夜中に襲撃があったようだ」
「皆さんのところにも!?」
「ああ、あいつらの所もここと似たようなゴロツキレベルだったようだ。
こうなると、お前の宿が本命といったところだろうな」
「あの、ビアンゼさんがマルクさんが僕を皆さんの所へ行かせたのは短剣の在りかをわからなくするためかもと話してたんですが」
「ほう。
あの子も少し機転が利くようになったか。
その通りだ」
「本当に……。
すみません。
厄介事に巻き込んでしまって」
シュウはルーツに向かって頭を下げる。
「何を言っているんだ?」
ルーツの返答に驚きつつ頭を上げる。
「君は悪くない。
俺達が進んで首を突っ込んだだけだ。
だが、君のとこに短剣があることを攪乱するつもりだったのだが、相手もなかなかキレる者がいるようだな。
俺達の所に捨て駒を送って、君の所には本命を送り込むとわな。
こちらの思惑が読まれた上にクランが傷を負わされてしまった。
すまなかった」
ルーツは顎に手を当てて考え込む仕草から、今度はシュウに向かって頭を下げた。
「あ、え、いえ!
僕達の事を想ってしてくれたことですし、クランやビアンゼさん達に短剣の事を話さなかったのは僕ですから……。
僕のとこだけに勝手に来ると思ってそれならなんとかできると思ったんですけど、とんだ思い上がりでした」
シュウは寝込みを襲われた襲撃者は対処できる範囲だと思ったが、偽物の短剣を持ち去った侵入者の身のこなしは想像以上だった。
なんとか投げナイフを手に掠めさせることができたが、それ以上はできなかった。
面と向かって対峙していたらどうなったかわからない。
あの侵入者は短剣の回収だけが目的だったようでこちらを襲う気がないのが、なんとなくわかった。
殺気というか本気で戦う気がない感じだった。
扉を開けたシュウにも驚いていた感もあった気がした。
「俺達もこんなに早く動かれるとは思ってなかった。
もう少し時間があると思っていたからな。
君たちの宿に密かに護衛を付けるつもりだったのだ」
「え?
そこまで僕達のために?」
「ああ。
ただ周辺の確認や潜む場所の手配や確認の準備で間に合わなかった。
これも申し訳なかった」
再度頭を下げるルーツ。
「いえいえいえ。
本当にそこまでしてもらうなんて」
「短剣の事についてはマルクからの発案だからな。
俺達の提案に乗ってくれた君達を護る義務がある……。
まあ、もう被害が出てしまった後では言い訳もできん」
「そんな、勝手に相談したのは僕ですし」
「いや、君は冒険者としてティアリス君を助け、そして苦しむロックホーンを助けた。
そして、原因となったであろう短剣を冒険者ギルドに報告した。
君に落ち度は一つもない。
そして、マルクの頼みで俺達の仲間に情報を共有してくれたのだ。
そこまでしてくれたのに、君の仲間を傷つけてしまう結果になってしまった」
ルーツはそう言うと再度顎に手を当て何かを考えているようだ。
「ふむ。
そうだな」
そう言うと、また後ろを振り返る。
そこになんと今度は執事が腰を折ったお辞儀をする姿勢で立っていた。
(絶対今まで居なかったよね!?)
ルーツが執事に目配せをすると、執事はお辞儀から姿勢を戻してルーツに近寄り、足元に片膝を付く。
その執事の耳元でルーツが何事かを囁いている。
残念ながらシュウが耳を澄ませても聞き取れなかった。
「至急頼む」
「畏まりました」
ルーツの頼み事が終わると執事は立ち上がり姿勢よくお辞儀をして、空気に溶けるように消えてしまった。
(ここの人達怖くなってきた)
「あの何を頼んだんですか?」
「直にわかる」
そう話しているうちにパカパカと敷地の奥から二頭の馬が轢く馬車が現れた。
「さあ乗りなさい」
「え?僕が?」
馬車の登場から頭にハテナが浮かんでいるのに、さらにルーツの言葉に混乱する。
「一度宿に帰ってもらう。
そして、荷物をまとめてきなさい。
暫く、あの宿の者全員をうちで預かろう」
「……は?」
シュウはルーツの言っていることが暫く理解できなかった。
新しい話にいくとは言ってない
またの反省会となりました
本当に進展しないな!
何気に次も新しい話に行く気配のない終わり方してますしね!
ごめんなさいごめんなさい
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
予定ではあと一話、いや二話、三話……?
それではまた~~~~ サッ




