100.襲撃を終えて
話数が三桁いきました
夜が明けた。
クランの解呪が終わり、ティアが治癒術をかけて傷を完全に塞いだ後暫くしてクランが目を覚ました。
傷は塞がったが失った血は戻らないので体を上手く動かす事が出来ないみたいだった。
そこでビアンゼの計らいで治療の為に広げていた食堂の一画をもう少し広げて、団らんスペースに置いてあったソファーセットを置いた。
三人掛けのソファー二つと二人掛けのソファー一つをコの字の形で配置した。
その三人掛けのソファーにクランを寝かせて二人掛けにビアンゼとリーム、残る三人掛けにシュウとティアリスとリンが座った。
クラン以外は動けるので自分の部屋に戻ってもいいのだが、襲撃された後で一人になれる気がせず何も言わなくても自然とこうなった形だ。
そうでなくともリンはクランを残して部屋に戻ることはなさそうだが。
自然と集まって座ったみんなにビアンゼが温かいお茶を淹れてくれた。
「やっと落ち着いたね」
「そうね。
もっと暴れられていたら大変だっただろうけど」
シュウがソファーをセットしている間にビアンゼとリームとティアリスは固まって宿の中を見て回り、襲撃の後片付けをしていた。
幸いにして窓や家具が大きく壊されているようなことはなかったようだ。
ベッドと布団は少し修理・修復が必要そうだった。
一段落してここに集まってすぐにリームはビアンゼの膝に頭を乗せて寝てしまっていた。
それを見ながらシュウはみんなに告白しなければならないと決断していた。
「ちょっといいかな。
みんなに聞いてほしいんだ」
シュウの言葉にリーム以外の視線が集まる。
「今回の襲撃、実は来る予感がしてたんだ」
「知ってたの?」
シュウの言葉に目を見開いて驚いた様子のティアリスが尋ねる。
「いや、確実ではないし、今日来るとは思ってなかったよ。
ただいつかはここ、というか僕の所に来るとは思ってたんだ」
「どういうことだい?」
次はビアンゼが聞いてくる。
「これを見て欲しい」
そう言って魔法鞄に手を入れ、取り出す。
それは、
「短剣?」
ビアンゼは特に思い当たることがないようだが、
「それはあの時の短剣?」
ティアリスは覚えていたのかピンときたようだ。
「そう。
この短剣はティアと一緒に出会ったロックホーンに刺さっていた短剣です」
ティアリスはわかったようなので、ビアンゼとリンとクランに見えるように掲げる。
「この短剣は毒が仕込まれています」
「毒?」
「はい。
クランが受けた毒とは違うけど、ロックホーンを瀕死にまで追い込んだ猛毒です。
暴走ロックホーンの討伐がクエストの依頼として冒険者ギルドに来てたんですけど、その原因は人為的なものだったと思える証拠がこの短剣なんです」
「なるほど。
原因となった短剣を調べられる前に犯人は回収したかったってことだな」
「はい。
実際に襲撃の際に僕達二階にいたメンバーが一階に降りている間に二階に侵入した者に短剣が盗まれています」
「うん?
それじゃあ、その短剣は何なんだ?」
二階のシュウの部屋のテーブルの上に置いていた短剣は侵入者によって盗まれてしまっていた。
だが、同じ形の短剣がシュウの手の中にある。
「これがロックホーンに刺さっていた短剣です。
実は、その事件をギルドに報告した時にマルクさんに薬屋のランブルさんの所に毒を調べてもらいに行ったんですが、その後、シモンさんとルーツさんの所に回って説明してきました」
「ええ、私も一緒にいたけど特別な話はしてなかったよね」
「うん。
僕達にはその時話してくれなかったんだけど、僕達の話を聞いたルーツさん達がその日集まってくれてたらしいんだ」
「ルーツさん、ランブルさん、シモンさん、それにマルクさんもか……。
この街の伝説のチームのメンバーじゃないか……」
シュウが挙げたメンバーを聞いたビアンゼが驚いたような声を出す。
「その次の日にティアがフランさんと修行をしている間にランブルさんとシモンさんの所へ行ったらその話を聞いて、その時アドバイスを貰ったんだ」
「どんな助言だったんだ?」
「短剣の模造品を作れって」
「模造品?
短剣の偽物を作ったのか」
「そう。
ギルドの本格的な調査が入る前に犯人が動くだろうって予測だったんだけど、まさかこんな組織ぐるみで来るなんて思わなかった。
クランやビアンゼさん、リームちゃんは巻き込んだ形になってすみません。
話しておくべきだったと今は思います。
でも、こんなに早く襲ってくるとは思わなくて……。
今日の夜にでも話すつもりだったんです」
シュウはクランとビアンゼ達に頭を下げた。
「オレは」
シュウを見つめていたクランが口を開く。
「シュウさんを恨んでいませんよ。
こうなったのは実力が足りなかっただけですし。
現にシュウさんは無傷で撃退してるし。
ただ、あの人数が一斉にシュウさんに向かったらシュウさんが危なかったと思うので、分散してくれただけよかったです。
オレの力不足でみんなに迷惑かけてすみません」
「いや、僕は来るかもしれないって気構えがあっただけで……」
「それに、元を辿ればあのパーティに関わった私のせいなんだね……」
クランに続いてティアリスも自分にも原因があると口にして俯いてしまう。
「みんなそれぞれ落ち込んでるところ悪いんだが」
それぞれ想いを口にして俯いている面々を見回してビアンゼが口を開く。
「私も巻き込まれた風に言ってもらったんだが、今回襲ってきた連中、そしてティアリスに嫌がらせをしたって連中に心当たりがある」
「えっ?」
「同じ連中か依頼したんだと思ってたんですが、知ってるんですか?」
俯いていた顔を一斉に上げてビアンゼを見つめてティアリスとシュウが口を開く。
「ああ、今回の首謀者と私の部屋で会ったよ」
書いてて困った裏話
クラン
よく他の小説でギルドの組織に「クラン」が使われますよね
それをこの話でも使おうと思ったんです。
ですが、すでに使われてたんですよ。
名前で。
同じ名称ですが組織と人とで違うからいいかーと悩みましたが
ややこしくなるので泣く泣く組織のクランを使うのを諦めました
みなさんご利用は計画的に……
ここまで読んで頂きありがとうございます
皆様の空いた時間を埋めるお手伝いができていれば幸いです
それではまた~




