10.雲ひとつなく、澄みきって
散々、シュウに攻撃を避けられた棍棒を持った小人が止めは自分がというように近づいてきた。
シュウの正面に立つとニヤニヤとした顔で棍棒を持ち上げた。
(つうぅっ・・・体よ動いてくれよ。動けよ。動け動け動けー!)
痛みに顔を顰めつつ、体を動かそうと思うが体は動いてくれなかった。
小人が棍棒を頭の上まで持ち上げ、両手で握った。
「&%#!」
小人が何か叫び、棍棒を持つ手に力を込めて振り下ろす。
その瞬間・・・
「風よ!疾れ!ウィンドショット!」
凛とした女性の声が聞こえ、目に見えない風の塊が棍棒を振り下ろそうとした小人を吹き飛ばした。
「アロンさん!」
先ほどの声の主が誰かの名を叫んだ。
すると、長身の人影が飛び出してきて、小弓を持った小人に長剣で斬りつけた。
小人は逃げることも、悲鳴をあげることもできず倒れる。
「ティア!彼を!」
アロンと思われる人影が残りの小人に走りつつ叫んだ。
声からして男性だと思った。
「はいっ!」
最初の女性の声がして、小柄な女性がシュウに駆け寄ってきた。
集の横に膝を着くと、シュウの傷を確認し、斜めに走る胸の傷に手をかざすと口早に呪文を唱えた。
「・・・彼の者を癒せ。ヒール!」
女性の手から暖かい光が生まれ、シュウの胸の痛みが和らいでいった。
続いて女性はシュウの左側に移動し、左肩に受けた矢を確認した。
「矢を抜きます。痛いですが我慢してください」
女性は腰のポーチから布を取り出し、呪文を唱えつつ矢を抜いた。
「ぐっ!」
その痛みにもっと叫びそうだったがなんとか我慢した。
女性は傷口に布を押し当て血を止めつつ呪文を完成させた。
「・・・癒せ。ヒール」
傷口にかざされた手から再度光が生まれ、左肩からも痛みが引いていく。
「ШЯа!?」
そこに、風に吹き飛ばされた小人が起き上がってきた。
女性の目が小人に向けられ、“ヒール"とは違う呪文を唱えつつ、右手を小人にかざした。
「石の礫よ!ストーンブレット!」
彼女の周囲に小石が浮かび小人に飛んでいく。
小人は両手で顔をかばい、石の魔法に耐えた。
そこに、小剣の小人に向かっていたアロンが走り、長剣を一閃。
小人はそのまま後ろに倒れていった。
それから女性はシュウに向き直り、顔を見下ろして
「もう大丈夫です」
と、優しく微笑みかけた。
(た、助かったのか・・・
けど、この人達はいったい・・・?)
突然現れた二人に驚き、また混乱しそうになるが、命が助かった事による安堵と緊張の糸が切れたのか急に眠気が襲ってきた。
シュウはまだお礼を言っていない事に気づき、眠気に抗いながら、
「助けて頂き、ありがとうございました・・・」
そこまで言えて満足し、意識を手放した。
女性の頭越しに見えた空は雲ひとつ無く、澄み切った青だった。




