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Back Together  作者: 天野屋 遥か
2/6

Back Together2

「俺、寂しかったんだよ?

お前が全然顔見せてくれないから…」


肩を抱いて耳許で囁く。

相変わらずきらびやかで過剰なまでの音楽とテンションで満たされた店の中。


「も…皇海くんってばぁ…またそんなうまいこと言って…」


耳朶に唇が触れるか触れないかのギリギリの所で吐息混じりにそう告げると、目をトロンとさせて甘える様に俺を見つめる。

今日の指名客は俺が半年位前に客引きで誘った地味なOL。

男慣れしていない分警戒心は強かったけど、押しに弱くて、ハマってしまった今ではこんな風に俺に甘えるようにまでなってきた。

初めは気前よくお金を落してたけど、最近は少し翳りが見え始めている。


「ほら、そんなかわいい顔で見つめるお前が好きなのに最近来てくれないからさぁ…」


「ごめんね…私…皇海くんと会うためのお金が…」


やっぱりな。

高級取りといっても、所詮はOL。

初めから限界は見えていた。


じゃあ、切り捨てる?


それとも…?



「そんなに俺と会いたい?」


「会いたいよ。出来るなら毎日…」


「そっか…俺もだけど…でも…店に内緒で会ったのバレたら…」


「迷惑かかっちゃうよね…でも私…」


イケると確信した俺は本題に入る。


「じゃあさ、これなら俺と毎日会えるかも…」


「え…?」


「いい仕事があるんだけど、してみない?」


俺の悪魔の囁きに目の前の女の表情が明るくなる。


「時間もフレックスで、週2,3でOKでさ多分月50近くは稼げて…」


俺のうさんくさい説明も疑うことなく話を真剣に聞いていた。


「じゃあ、話つけて連絡するから」


「皇海くんありがとう…」


連絡先を教えて見送りをした。

俺の電話番号を知って浮かれているのがわかる。ただの仕事用の電話でしかないのに。

バカな女だとその後ろ姿を見ながら鼻で笑った。


「あ、マキノさん?」


『なんだ、皇海どうした?』


さっそく、店のバックヤードで知り合いのソープ店のオーナーのマキノさんに電話をする。



「近々、またお店で働きたいって女の子連れてくからよろしく」


『お前ほんとに悪い男だな。また、騙したんだろ?』


「そんな人聞きの悪い事言わないでよ。俺に会うお金が欲しいって言うから、手っ取り早く稼げる仕事を紹介してあげるだけだよ?で、紹介料の事なんだけど…」


『実際に面接してからでいいか?まぁ、いつもお前が連れてくる子はレベル高いし、即戦力になるから、それなりに弾むつもりだけど』


「OK!じゃあ日程は…」


詳細を相談してからアイツに連絡する。

電話をすれば、俺からの着信に舞い上がってる愚かな女。



「え…仕事って…」


「そうだよ?ソープで働くって事」


店に連れてきたら顔面が蒼白になる女。

普通に考えたらわかるじゃん。

そんな時間に自由が利いて、高給なんて風俗か水商売位だろ。


「俺…お前のために探したんだけどな…仕事…」


「私、皇海くんのために頑張る…」


悲しそうに俯く俺を見て、決意を固めた女はそのまま店に足を踏み入れる。


「じゃあ、面接始めましょうか?」


応接室に通された俺達の前に、これまた胡散臭い店長のマキノさんの登場。

ソファで正面に座った彼を見て驚いているアイツ。


まぁ、無理もないよな。


逆立てた金髪に日に焼けた肌。

耳には沢山のピアスが光り、スーツがはだけた胸元にもシルバーのネックレスがじゃらじゃらと光っている。

そんなチャラい格好に反した整った顔立ちで人当たりのよい笑顔がさらに胡散臭さに磨きをかけていた。

けれども、彼女はそんな事も意に介せず、真剣にマキノさんの質問に答えていく。

そのまま、採用となり打ち合わせを始めたから、俺はその場を後にした。



アイツはガードが固かった分堕ちたら早かったよな。

まぁ、これで俺にさらにドンドン貢いでくれるんじゃね?

金さえ払えば、俺はどんなに甘い言葉でも欲しがるがままに吐いてやるし、まぁ…流石にヤるのは勘弁だよな。

変な病気うつされたら嫌だし。


新しい金づるが出来た事に気をよくして、そのまま病院へと向かう。



「おーい、具合はどうだ?」


病室へ入ってもいつもの元気な返事がない。

静まり返った病室。

ベッドまで近づくと、珍しくお前は昼寝をしていた。

穏やかで可愛い寝顔に俺自身までほっと優しい気持ちになる。

透き通る真っ白な肌と艶やかな黒髪がカーテンから射し込む薄日にキラキラと輝いていて、この世のものとは思えない位に綺麗で見とれてしまう。


ところが、ずっと見つめていると、今度は何だか陽菜がそのまま遠く何処かに拐われてしまう様な胸騒ぎがした。


信じたくない、終わりが訪れてしまうそんな哀しい予感に不安を覚える。


繋ぎ止める様にそっと大切な妹の唇に自分の唇を重ねた。


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