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悪徳領主に俺はなる!  作者: 秋月の兄貴
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鍛練の時間(教師’S サイド)

鍛練の時間の別視点の物語です。クラウンの3人の教師の苦悩をご堪能下さい。

こんにちわ、マークです。ウェンステッド領で騎士をしています。

自分で言うのもなんですが、剣の腕は中々で学校時代は『速剣』なんて異名もついたほどです。

騎士団内でも団長につぐ剣術の腕だと噂になるぐらいだ。

でも、訳あって今はウェンステッド領主であるジェイド様の息子のクラウン様に剣術を教えてます。

こうやって書くとジェイド様公認で教えている様に感じますが、実際はジェイド様には内緒です。

しかも、クラウン様は『冒険者』になる為に剣術を学んでいるのです。

これがジェイド様や団長にばれたら俺は終わりです!

だから『冒険者』を諦める様に仕向けなければならない!

考えに考え抜いた結果、子供だから飽きるか、いやになる様に仕向ければ良いとの結論に至った。

だから剣術を教える時に、思いっきり厳しくしてみた。

剣術を教える初日の時、

「まずは体力を見る!俺について来い!俺について来れないなら、ついて来れる様になるまで

体力強化だからな!」

「はい!先生!」

クラウン様は元気いっぱい返事をした。子供相手に酷いとは思うがこれで暫くは時間が稼げるだろう。

いざ走り始めるとクラウン様は思いのほか軽そうに俺についてきた。子供の癖に速いなあ!

いやいや、これじゃ駄目だ!と全力で走ってみる。これならと後ろを見るとクラウン様はしっかりと

ついて来ている。は、早い!なっならば!と左右にステップを入れながら走る。

後ろを見るとしっかりとついて来ている。しかも余裕そうだ。

それから、ダッシュやステップを織り交ぜながら30分ほど走るがピッタリとついて来られた。

「ぜー!ぜー!ク、クラウン様、速いですねぇ!」

「いつも、この倍は走ってるからねえ。でも先生すごいですね!ダッシュやステップを織り交ぜて

体力と同時に瞬発力も鍛えてるんですね!さすが『速剣のマーク』さんですね!」

はっ?もっと走ってるって?まだ5歳だろう?俺はもう限界近いぞ・・・

しかも瞬発力も同時に鍛えてるって、いつもはこんな無茶な走り込みしませんよ・・・

だが、そんなそぶりを見せる訳にもいかず、強がってみた。

「ま、まあな!よし、次は腕立てだ!」

「はい!」

そう元気良くクラウン様は返事すると腕立てを始めた。腕立てのスピードを変えたり、腕立て中に

手を叩かせたりしながらやってるが100回やっても平気そうだ・・・

これも駄目だ・・・

その後、腹筋やスクワットをさせるが問題無くこなしていくクラウン様・・・

駄目だ。クラウン様は大人並みの体力がありますよ・・・

この作戦は失敗ですね・・・


体力教化作戦は失敗に終わり、次の作戦を考えた。考えに考えた・・・

次の作戦は『亀作戦』一日に教える剣技や型を1つにする。そして次の時にその剣技や型がしっかりと

ものになっていなければ、もう1日同じ剣技や型をやる。そして、忘れた頃に前覚えた剣技や型をもう1度やらせる。

出来なければまた、その剣技や型を一日やるのだ。これで時間を稼ぐ。

と、言う事でクラウン様に剣術を教えている。クラウン様はとにかく物覚えが速い!そして忘れない!

考えに考え抜いた『亀作戦』も失敗に終わりそうです。

私はクラウン様に聞いてみました。

「クラウン様、物覚え速いし忘れませんねぇ!すごいですよ!」

「そんな事無いですよ。物覚えが良いのは教えて頂いた翌日に復習しているからじゃないですかねえ?」

「あんなに剣術の稽古しているのに翌日に自主練までしてるんですか!」

結構、厳しくに練習しているんですが、そんな余裕あったんですか?

「うん!先生は結構易しめにしてくれてるんで余裕はありますよ。」

クラウン様にとって厳しいとはどんなのなんでしょう?怖いです!

つ、次の手を考えなくては・・・


え~、マークです。クラウン様に剣術教えて6ヶ月経ちました・・・

クラウン様、諦めてくれません。もう、初級の剣術は教え終わり、今は中級の剣術に突入しています。

剣術だけでは持たないので騎士団の練習や組手、模擬戦等も交えてます。

もう、きついです・・・

最近は俺との1対1ではきついので(私が・・・)騎士団の仲のイイ奴や、知り合いの冒険者に頼んで1対2や1対3で

組手をやってます。それでもクラウン様は対等に戦ってしまうのは何故?

中級の剣技や型も1日で覚えてしまうのは何故?結構難しいと思うんですけど・・・

もう、辛いです・・・


どうも、リーネです。クラウン様に脅迫されて今は魔法を教えています。

こんな事メイド長に知られたらと思うと怖くてしょうがありません。

「リーネ!クッキーもらって来たよ!」

「わあ!クラウン様ありがとうございますぅ!」

・・・・・・

いや、いつもこんな訳じゃないんですよ!

ただ、クラウン様は魔法を教える時にいつもお菓子をくれるんです。だから、中々魔法教えるのやめれないというか・・・

それにしても、クラウン様は魔力が高いですぅ!そして教えた事忘れないんですよね。

だから魔法覚えるのも早いんですよ!

でも、早いのは困るんですぅ!なるべく長く教えて少しでも冒険者なるのを遅らせないといけないのにぃ!

もう基礎魔法も初級魔法も教えてしまってますぅ。

魔法はイメージが大事なんですが、それがクラウン様は上手いんですよね。

火を出す時は、火を点けるイメージが大事なんですが、それがわりとすぐ出来たんです。まるで火を点ける道具か

何かを知ってるかの様にです。私もイメージするのは得意なんですが、お師匠様曰く『とんでもイメージ』だそうです。

そんな事ないんですけどねえ・・・

そういえば、魔法を教え始めた頃クラウン様が変な事を聞いてきたんです。

「リーネ!なるべく魔力を多く使う、目立たない魔法って無いかな?」

「はい!?普通魔力を余り使わない魔法を聞きません?何故、そんな魔法を?」

「内緒!なんか無いの?」

「一応、『魔法鑑定』って魔法がありますけど魔力使うわりにスキルの『鑑定』と変わらない為に魔法使いぐらいしか使いません。」

「え~!便利そうじゃん!」

「鑑定のスキル持ってる人は多いし、いまいち『魔法鑑定』でわかる情報って少ないんですよねぇ。」

「そうなの?それでも良いから教えて!」

「わかりました、それじゃあ・・・」

私はクラウン様に『魔法鑑定』を教えました。クラウン様は何に使うんでしょうか?


リ、リーネです。もう限界です!

クラウン様はどんどん魔法を覚えていってしまいます。今は中級魔法を教えていますけどもう、限界です。

私が編み出した基礎魔法の応用魔法を混ぜて教えながらやっていますが、もういっぱいいっぱいなんです。

誰か助けて下さい。


私の名前はハワードといいます。庭師をしています。昔大怪我をして足を痛める前は狩人をやっていました。

足を痛めた為、今は走る事は出来ませんが、庭師としてなら十分生活出来ます。

ある時、クラウン坊ちゃまから弓術を教えてほしいと言われました。

クラウン坊ちゃまのお父様はこの町の領主で、きっとお父様と一緒に狩りにでも行きたいのでしょう。

私はすぐに教え始めました。

クラウン坊ちゃまは物凄く物覚えが良いです。しかも頭も良い。そして弓術の素質がある。

弓で大切なのは気配を消す事と、獲物の動きを予測する事。

それをクラウン様はすぐに覚えてしまったのです。

クラウン様は良き狩人になるでしょう。まあ、狩人にはならないでしょうが・・・


ハワードです。今日、ウェンステッド家でメイドをしているリーネに驚愕の事実を聞きました。

クラウン様は父親と狩りに行く為に弓術を覚えたい訳ではなく、冒険者になる為に弓術を習ってるとの事です。

でも、冒険者になるには弓術でなくても良いのではとリーネに聞いた所、同じくウェンステッド領の騎士をしている

マークがとっさに剣術と弓術、魔術の初級をマスターしないと冒険者になれないと嘘をついたようです。

しかし、弓術の初級なんぞもうすぐ教え終わってしまうぞ?とリーネに聞いたが何とか引き伸ばして下さいとの一点張り。

私は困りました。何を教えればよいのか・・・

仕方なしに私は狩人として培った技術をすべて教えました。罠の作り方から設置方法まで総てです。

でも、これでもどこまで引き伸ばせるのやら・・・



「「「どうしてこうなった!誰か助けてください!」」」

マーク、リーネ、ハワード、3人の心の叫びに対して、それに答えてくれる者は誰もいなかった・・・


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