夜遊びと卒業試験の時
少し長めですが、どうかお楽しみ下さい。
俺の名はクラウン・ウェンステッド!歳はもうすぐ6歳になる!悪徳領主になる予定だ!
たまには叫ばないと目標を忘れそうだからな!
俺は剣術と魔術と弓術の基礎が終わらないのに嫌気が差して最近は基礎練習の合間に狩りをしている。
狩りをして、獲った獲物の肉や皮などを売って小銭を稼ぐ。そんな事でウサを晴らしている。
さすがに弓術を教えてもらってる最中だ!結構順調に狩る事が出来る。
罠とかも使ってみたがいい感じだ。ずいぶん弓術は上手くなったと思われる。
魔法や剣術を使っての狩りも行った。剣術は練習用の木剣しか使えないが何とか獲物に攻撃を当てる事が出来た。
魔法は簡単な魔法をいくつか試してみたが獲物を倒す事が出来た。
試しに数度だけ、魔物相手にも試してみた。定番のゴブリンと呼ばれる魔物やホーンラビットと呼ばれる
角の生えたウサギみたいな魔物ととかだ。両方とも1匹で行動していて周りに他の魔物がいないのを確認して
戦った。ゴブリンは幼稚園生ぐらいの身長の子鬼?みたいな生き物だった。
身体が幼稚園生ぐらいなのに頭だけは大人ぐらいある、頭でっかちで身体の色は深緑色で見方によっては
可愛く見える?容姿だった。そんな容姿で手には錆びた武器や木の棒を持って襲ってくるのだ。
まあ、歯剥き出して武器を振りかぶって襲ってくる者に可愛いも無いのだが…
ホーンラビットはまんま角の生えたウサギだ。ただ、大きさはタヌキぐらい大きいのでちょっと怖い。
そんなウサギがいきなりこちらに角を向けて突進してくるのだ。こちらは剣術の稽古で突進に対する対処方法
は出来ているので問題無いが普通の町の人なら結構脅威だろう。まだ、冒険者ではないので魔物は試し切り感覚で
数回狩っただけだが、問題無く狩れたので冒険者になっても大丈夫なんだろう。
ちなみにホーンラビットの肉は高く売れたし、食ってみたが旨かった。
そして狩りをし始めて小銭を稼げたので、次の策略へ移す事にした。
そう!よ・あ・そ・び!夜遊びだ!これぞ悪人って感じだな!
家人に見つからない様に注意しながら(弓術の中に獲物に見つからない様にする隠密行動があった為に可能)
家を抜け出し、町の中を探索した。昼とは違い夜の街は別の顔を見せていて面白い。
昼は露店等が出ているし、街中を歩いているのも普通のおばちゃんや若い人が多くみられた。
だが夜の街は、冒険者らしき者が多く歩いていた。ん?なんで冒険者かわかったって?だって、武器を腰や背中に
装備して歩いているもん!解り易いな!
そんな冒険者の一団の内の1つに目星をつけ、後をつけた。
彼らはある店の中に入って行った。その中をこっそり覗くと酒場の様だった。
大人達が酒をかっくらい騒いでいた。うん!これこそが俺の望んだ世界だ!
酒場で情報を集め、一緒に騒ぐ子供!まさに悪党!これで悪党の知り合いなんぞ出来たなら完璧だな!
俺は勢い良く酒場の扉を開けた。
「俺の名はクラウン・ウェンステッド!領主の息子にして、将来、『悪徳領主』になる予定の男だ!」
俺がそう叫ぶと、酒場内は一瞬静まり、皆が俺を注目している。その後大きな笑いがあちこちで起こった。
「悪徳領主かぁ!それはよかった!」
「子供らしい夢だな!」
「がはは!そりゃよかった!そん時は俺も仲間に入れて下さいよ!」
まるで相手にしていないかの様に笑いながら先ほどの喧騒に戻っていった。
まあ、そうだよな。普通こんな反応だわな。
まあ、いいや!俺はカウンターに腰かけるとウェイトレスを捕まえて注文した。
「お姉さん!水か果汁ジュースくれ!酒はいらないからな!」
「へ?駄目だよ、子供がこんな所来ちゃ!」
お姉さんはそういって俺に優しく注意する。まあ、そんな反応なのはわかっていたさ。
「お金持ってるし、俺は領主の息子だぞ!問題無いだろ?」
そう言うと、飲んだくれのじいさんの一人が笑いながら助け船を出した。
「そうそう!領主さまのご子息の言う事逆らっちゃならねえぞ!いいじゃねえか!俺が見はっとくからよ!」
「マスターがそう言うのならいいですけど…」
そう言うとウェイトレスは渋々飲み物を取りに戻っていった。このじいさん、マスターと言われているが
ここのマスターか?まあ、いいや。これでここでの飲み食いに文句は言われないのだろう。
「爺さん!ありがとうな!」
「よいよい、少ない人生楽しんだもん勝ちじゃ。」
中々話のわかる爺さんだな。そうやって爺さんと色々話してると、さっきのお姉さんが白っぽい飲み物を
持ってきた。
「お姉さん、ありがとう!所でこれは何?いくらなの?」
「これはルカという果実のジュースだよ。値段は500ゴルドだよ。」
なるほど!500ゴルドなら露店の串焼き2本分ぐらいか!500円位の価値かな?そんな事を考えながら、
「ありがとう!きれいなお姉さん!」
必殺のスマイルをしながらそう回答してみた。するとお姉さんは笑顔になり、
「まあ!素直ないい子!ジュース代はそのマスターにつけておくから気にしないで良いからね!」
「な、何でじゃぁ!」
「決定事項ですから!じゃあ、何かあったらお姉さんを呼ぶんだよ!」
お姉さんはそういうと俺に手を振って奥へ行ってしまった。
「爺さん!ご馳走様!所でその飲んでるのは何?いくらぐらいなの?」
「これか?これはルードというお酒じゃ!値段は1杯500ゴルドじゃ!安いから金無い奴は皆これを飲むんじゃ。
ってワシが奢るのは決定事項か?!」
「ははは、諦めろ。所で色々聞きたい事があるんだが・・・」
こうして毎晩酒場に入り浸り、時には酒を奢りながら色々な情報を収集したのだ。
剣術と魔術と弓術の鍛錬を初めて早1年…1年だぞ!!
やっと卒業試験みたいなものを受けれるらしい!長かった!
俺には才能が無いのかと落ち込みもしたが、これでやっと鍛錬からの卒業である。
剣術、魔術、弓術それぞれに卒業試験があり、順番は弓術、魔術、剣術の順番である。
まずは弓術。ハワードからこんな試験内容を告げられた。
「クラウン様、これから…、弓術…、試験…」
「はい!」
「試験内容…ワーボア…倒す!…倒した証拠…牙持ってくる!」
「はい!?」
俺は驚いて聞き直してしまった。
「ワーボア…、倒さないと…不合格!」
ハワードは口数少なくそう回答してきた。
いや、難しくて聞き直した訳では無いんだが…
確かに、ワーボアはイノシシの様な魔物だ。弱点は眉間だが堅く、普通に弓を当てても堅い毛皮と頭蓋骨で弾かれてしまう。
たしかに魔物は魔物だし、狩るのは難しい部類だが、狩れないレベルでは無い。
だが、魔物はこの試しに狩りした魔物の中の一つであり、狩りした事があった。
俺はもっと難しい内容だと思っていたので拍子抜けしてしまったのだ。
「わ、わかった!じゃあ、行ってきますね!」
準備をして町の東にある森に向かった。町の東にあるこの森は魔物が何種類か
存在しているのだ。その中にワーボアもいるのだ。
ハワードにもらった弓と矢、罠の道具、その他狩りに必要な道具を持って行く。
ハワードに教えられた隠密行動で動きながら獲物を探す。
暫く進んでいると1匹のワーボアを発見した。
周りを調べたが、周りに他のワーボアや別の魔物はいない様だ。
俺は弓で狙えるポジションまで移動すると矢をつがえ、弓を引き絞る。
『パワーアロー!』
そう小さく唱えると、弓スキルを発動させた。
魔術の鍛錬のおかげで俺は無詠唱で魔法やスキルが発動させる事が出来る様になったが、
スキル名を唱えながら発動させた方が、わずかにダメージがアップするのだ。
この『パワーアロー』は貫通効果を持つ弓スキルで堅い魔物相手にもある程度ダメージが入るのだ。
狙いは弱点である、ワーボアの眉間。普通の弓での一撃なら弾かれてしまうが、この貫通効果のある『パワーアロー』なら
スキル効果でダメージを与える事が可能なのは、以前戦った時に確認済みだ。
撃った矢はまっすぐにワーボアに向かって行き、ワーボアが気がついた時は眉間を打ち抜かれて絶命していた。
一撃である!どうやら魔物等を狩りしている間に大分成長したようだ。以前狩った時は『パワーアロー』1撃では死ななかった。
というか、前回狩りの時は、眉間を狙ったがスキルを使っていなかった為に弾かれたのだ!その後に突進してくるワーボアに対して
時には避け、時には罠で動きを止めて、色々なスキルを使ってみては弾かれ、この『パワーアロー』なら毛皮を貫通する事を発見したのだ。
あれ?そうか!所見なら確かにこのワーボアは厄介な魔物かもしれない!弓攻撃は弾かれ、力もあるので罠だけで倒すのは難しい。
この『パワーアロー』が効く事が判るまでは、厄介なのは間違いないかもしれない。
ワーボアに慎重に近づき絶命したのを確認して、解体作業に移る。
ワーボアの牙を取った後、毛皮を剥いでいく。毛皮を剥ぎ終わったら次は肉の解体を行う。解体方法はハワードとの弓術の鍛錬の中に
組み込んでいたし、自分でも色々な獲物を狩った時に試している。街中で売れる素材を確認し解体方法を見せてもらった事もあるのだ。
ワーボアは毛皮は丈夫な為、防具等で使い道があり高く売れる。肉も少し獣臭いが豚みたいで中々旨いのだ。
牙は何に使うのか判らないが、アクセサリー等で使っているのを見た事がある。
それらを綺麗に解体し、残りの部分は火魔法で燃やしてしまう。残っていると他の魔物が血のにおいにつられて来てしまう為だ。
後処理をしっかり行い、ハワードの元へ戻った。
「…あきらめるか?…」
ハワードは俺を見たとたん、少し考え、そう聞いてきた。
なるほど!早すぎるから無理だと判断したと思ったんだな。だが、甘いぞ!ハワード!
そう思いながらハワードの手にワーボアの牙をそっと乗せた。
ハワードは驚きながら手の中の物を見つめている。
「…どうやって?」
「ん?どうって、『パワーアロー』で眉間狙って1撃だったよ!」
「…1撃!」
「弱点は図鑑で見てたし、実は暇な時に狩りしてて、このワーボアも狩った事あったんだよね。その時に『パワーアロー』効くのを確認してたから!」
俺は何でも無いかの様にそう回答した。
ハワードは肩を落としながら一言
「合格です…」
そう告げた。なんだよ、せっかく弟子が成長したんだからもっと喜んでくれてもいいのに…
そう思いながら、ハワードにワーボアの肉を少し渡しながらこう伝えた。
「ハワード、君のおかげで僕は弓術がだいぶ上達しました。君は僕の先生です!ありがとうございました!」
ハワードははっ!と顔をあげて俺の顔と手に渡されたワーボアの肉を見ている。
「その肉はハワードに教えてもらった解体術を使って剥ぎ取ってきました。ハワードに教えてもらったものは僕の役に立ってますよ!」
ハワードは微笑みながらうんうんと頷いている。
「クラウン様…あまり無理をしないように!」
最後にハワードは俺にそう声をかけて頭を撫でていた。
俺はハワードに今までに狩りをした獲物や、魔物について話をした。こんな魔物はどんなだった、こんな攻撃や罠が有効だったとか色々話をした。
それに対してハワードは頷いたり、アドバイスをくれたりしながらいろんな話をした。
ハワードはやっぱりイイ奴だった。
弓術ゲットだぜぇ!!
その翌日、俺はリーネの待つ、町のはずれにあるちょっとした空地まで向かった。さて、次は魔術の試験だ。
リーネはどんな試験を言ってくるのだろう?少しワクワクしながら空地まで向かうと空地には太い円柱の柱が立っていて、その前でリーネは腕を組んでいる。
俺を見かけると、リーネは高笑いをしながら叫び始めた。
「オッホッホッホ!待っていましたわ!クラウン様!ここであったがひゃK…ちょっ、ちょっと待ってくださーい。」
俺はリーネが訳のわからない笑い声をあげているのでそのまま素通りしようとしたら必死にしがみついてきた。
「お父様から変な人に着いて行ってはダメだと言われていますので!」
俺がそう言うとリーネは半ベソをかきながら必死にしがみついている。
「わ、私は変な人じゃありませんですう!さ、試験始めましょ?ね?ね?」
もう少しからかっても良かったんだが、さっさと試験を終わらせたかったんで話を進める事にした。
「で、試験内容は何?リーネを問答無用でぶっとばせばいいの?」
「こ、怖い事言わないで下さい!私は戦うのは苦手なので、あの柱を魔法で壊したら合格にします!」
リーネは無い胸を張りながら自慢げにそう叫んだ。顔が自信満々の笑顔である事から何かあの柱に細工してるな…
改めて試験相手の柱を見てみると直径2mぐらいの柱で石で出来ていると思われる。多分土魔法で作ったんだろう。
そして普段ならこんな柱、強めの攻撃魔法を当てれば壊れそうな物だが、あの微笑みは怪しい。
リーネの事だ対魔法対策でもしているのだろう。
「1撃じゃないとダメなの?それとも何発も撃ってもいいの?」
「い、1撃なんて私でもむr…ゲフンゲフン!」
リーネにも1撃で壊せないって何したんだよ…
まったく…
リーネは魔法に関してはとんでもない事を平気でするからなぁ。
もしかして石柱に『魔法衣』でもかけたか?でもあれは人にしかかけれないからなぁ?
『魔法衣』とは魔法ダメージを代わりに受ける、防御魔法だ。ただ、物理攻撃は受けれないという欠点もある。防御魔法は基本、人にしかかけれない筈だが…
……
…
…あの『トンでもリーネ』の事だから、やるかも…
まあ、まずは試してみるか。
『火炎槍』
俺が教えてもらった火の魔法の中で一番強い魔法を撃ってみた。
しかし石柱に当たるがびくともしなかった。やっぱりか…
「おーっほっほっほ!そんな魔法なんて効きはしませんわよ!」
「お前に教えてもらった魔法なんだが…お前の魔法はそんな魔法だったのか…」
「あっ!そう言えば、そうでしたわ!そそそんなことはありません!」
「まあ、いいや。ここからはリーネには内緒だった内容だ。」
そう言うと俺は、魔法を唱えた。
『火の矢、停滞』
そう唱えると、本来は的に向かって飛んで行く『火の矢』が俺の頭上で止まっている。
「な、なんで魔法が頭の上で浮いているんですか!」
リーネは眼を見開いて驚いている。
「魔力消費は大きくなるが、魔法は撃つ直前の状態で停滞させる事が可能なんだ。」
「そんなの習っていませんし、教えていません!」
リーネは叫んでいる。騒がしい子だ…
続けて『風の矢』『魔法の矢』『水の矢』『土の矢』『魔法の矢』『闇の矢』を順番に頭上に停滞させていく。
火風水土の4属性に闇属性、無属性の魔法を出す。
『融合』
すべての停滞させている魔法を1つづつ順番に融合させていく。この時、火と水、風と土といった反する属性の魔法を融合する時に間に無属性魔法
を挟む。最後に闇属性を融合させる。
この手順を1つでも間違えると融合は出来ない。
融合された矢は虹の様に輝いている。
『虹色の矢』
すべての属性を混ぜた融合魔法を石柱に放った。
石柱の魔法衣もろとも突き抜け、石柱に魔法が当たり石柱は壊れた。
ただ、焦り過ぎたのか狙いがずれ、破壊まではいかなかった。半分ぐらい残ってしまった。
「な、なぁ、何ですか!今の魔法は!!」
リーネ、うるさいって!さて、次の魔法だな。
『火の矢、連弾』
手を石柱に向けると呪文を唱えた。この魔法はさすがに詠唱省略は出来ない。
呪文を唱えると手から火の矢が石柱に向かって飛び出した。
え?ただの火の矢だって?いやいや数が違うよ!無数の火の矢が連続で飛んでいく。まるで機関銃の様に!
数の暴力に負けて魔法衣もろとも石柱は今度こそ砕け散った。
やっぱ融合魔法よりこっちのがダメージはでかいみたいだな!魔力もガッツリ消費するが…
リーネの方を見ると言葉を無くしアワアワしている。
「リーネ、合格だね!」
俺は出来るだけ爽やかに笑顔でそうリーネに話しかけた。
「ひ、非常識過ぎます!『トンでも』の称号はクラウン様のが合ってます!称号あげます!」
「いらない!」
リーネの提案をあっさりと否定した。
「何処でこんな魔法覚えたんですか!」
「自分で作った。リーネの応用魔法を参考にして!」
「いや、簡単にいいますけど、そんな簡単に出来ないですよ?」
「まあ、良いじゃないか!でも、これで魔術の卒業試験は合格だろう?」
「いや・・・まあ・・・・・・・・・はい、合格です。」
リーネは項垂れながらそう返事した。おいおい。弟子が合格したんだ!もっと喜べよ!
まあ、いいや!
これで魔術ゲットだぜぇ!!
その翌日は最後の一つ!剣術の試験だ!
俺は気合を入れてマークの待つ騎士団の練習場に向かった。
練習場に着くとマークと、いつも一緒に鍛錬に参加しているジェドと言う騎士団員と他にもう一人いた。
ん?あれ、あそこにいるのクラストじゃね?騎士団長が何でここにいるんだ?
「クラウン様!よく参られました!剣術の試験!この私が相手を致します!」
「はぁ?!」
おれは驚いて素っ頓狂な声をあげてしまった。クラストの後ろでマークがバツの悪そうな顔をしている。
あいつ、ばれやがったな!
「クラウン様!私を倒さなければ冒険者になる事は認めません!」
「まじか…!」
マーク、後で100回殴る!
「…わかった!で、どんなルールだ?あるあるでいいのか?」
「あるある?なんですか?そのルールは?」
「なんだよ、マークから何も聞いていないのかよ?」
そこで、マークがおずおずと説明した。
「だ、団長!あるあるとはスキル使用『あり』魔法使用『あり』のルールです。クラウン様とは最近はありありのルールで2対1とか3対1でやっていたので…」
「なにぃ!そんなルールで鍛錬して怪我でもしたらどうするんだ!」
「実際には怪我してないからいいんだよ!で、ありありでいいのか?もっとも俺は使わないがな!」
俺は面倒くさくなって素でしゃべってしまっている。クラストは驚いた表情でこちらを見ている。
「余りなめないでほしいですね!そちらこそありありで良いですよ!」
そう言うとクラストは練習用の大剣を正眼にかまえた。俺も練習用の片手剣を正面に構え、左手は背中に隠す。身体は半身にして剣に隠す様にする。
「ほう、構えは中々ですね!」
そういうとクラストは牽制なのか、軽く剣を振り下ろしてきた。俺は難なくその攻撃を避ける。
剣の振りは遅いが重さのありそうな剣だ。
こちらも横薙ぎに剣を振るうが難なく剣で受け止められてしまった。
そこから暫く剣を交えたが、俺は不意に剣を下げた。
「もう少し真面目にやろう!物足りないぞ!何だったらスキル使え!」
俺はそう言うと挑発の為に剣を肩に担いだ。クラストは一瞬だけ怒りを顔に出すと、今までとは比べ物にならない速さで切りつけて来た。
だが、これくらいの速さなら問題無い。というか「速剣」の異名を持つマーク相手に練習してたんだ。これくらいなら軽いな。
俺は仕方ないと思いカウンターで剣を当てて行く。
「クラスト!なめてるのか!」
クラストはスキルを混ぜながら攻撃してくる様になった。だが、1対複数でありありでやってるんだ。これくらいなら訳無く避けれる。
クラストは「豪剣」と呼ばれるだけあり、1撃1撃は重い。多分受ける防御や耐えるタイプ相手なら強いだろう。だが、俺の防御方法は避けるタイプだ。
そういうタイプ相手の攻撃方法がなっちゃいない!
「クラスト!鍛錬サボってるのか?もっと魔物狩ったりして色々なタイプの敵と戦わないとそれ以上成長しないぞ?マーク!お前も入れ!」
「は、はい!」
マークもビビリながら加わってきた。それに続いてジェドも参戦してきた。
1対3の戦いになったが俺にとっては慣れた戦いだ。3人の攻撃を避け、ある時は受け流しながら相手の隙を見て攻撃を与えて行く。
クラストが上段から大剣スキルの一つである『強撃』を放つ。このスキルは確かに当たった時のダメージは大きい。
だが、このスキルは発動時と始動時の間に僅かながらディレイがある。このディレイによってある程度の速度のある者なら避ける事が出来る。
だからこのスキルは、相手を崩し避けれない状態で使わなければならないのだが、クラストは焦りの為にこれを怠ったのだ。
この隙を俺は逃すわけにはいかない。この攻撃を右に避け、走り抜け際にクラストの手に向かって剣を振り下ろす。剣に相手の手が当たった感触
を感じながらその場を抜ける。クラストはその痛みにて剣を落としてしまった。
抜けながら空いている左手をマークに向ける。マークはとっさに魔法を警戒しスキル『連撃』を放ってきた。『連撃』は2段攻撃のスキルで
素早く攻撃するスキルだ。だが俺はそれも読んでいて素早く左に後転をしてその攻撃を避ける。
後転した後、おもむろに180度周りながら水平切りを足元に放つ。その先にはジェドがいて、水平切りをモロにくらって転んだ。
俺は立ち上がりマークに向かってダッシュした。マークは慌てて『連撃』を再度放ってきた。だが、俺はそれを避け手に剣を振り下ろす。
剣が当たりマークも剣を落とした。俺は肩に剣を担ぎつぶやいた。
「俺の勝ちだ!これで冒険者になるの認めるな?」
クラストはうなだれながら答えた。
「・・・わかりました。」
「なら、ここからは反省会だ!」
「「はい?」」
クラストとマークが驚きの声をあげた。俺はかまわず話を続ける。
「まずはクラスト!おまえは練習してるのか?素早い避けるタイプとの戦い方がなっていないぞ!何故、俺みたいな避けるタイプ相手には縦切りより
横薙ぎのが有効だろう?何故縦切りが多くなる?大方一撃で決めようと考えてるか俺の実力を舐めていたんだろう?相手の実力をなめてやられるなんて
愚の骨頂だぞ!後、マーク等と一緒になって戦った時、何故連携を取らない?おのれ一人で勝てるとでも思ったのか?おのれ一人で勝てるとしても
1対3なんだから連携を取って戦った方が楽に決まってるし、確実に勝利するなら連携を取るべきだろ?おまえはマークとジェドとの戦い方を知ってるか?
仲間を生かす戦い方をもっと覚えるべきだ!いいな!」
クラストは直立不動で聞いている。
「次にマーク!お前は前に出過ぎだ!お前一人で決めれないのは今までの練習でわかってるだろ!クラストが前に出るタイプなんだからお前は遊撃だろ?
何故前に前にと出てくるんだ!そんなのだからクラストが攻撃出来なかったりするし個々で相手すればいいから1対3の利点が生まれないだろうが!
お前は速さがあるんだからそれをもっと生かす戦い方を身につけろ!ソロ、集団戦共にだ!いいな!練習怠るなよ!」
「はい!」
マークは直立不動で返事をした。
「次にジェド!お前はこの中で唯一周りを見て戦っていた!それは評価できる!ただし、お前は確実に安全な時しか攻撃してこないから受ける方としては
読み易いんだ!もっと強弱をつけたり周りの仲間の隙を無くすタイミングで攻撃したりして攻撃に幅を持たせろ!後は相手が恐れるような攻撃を持て!
相手がおまえを怖がれば、相手がお前を警戒し他の仲間が攻撃しやすくなるだろうが!それが課題だ!」
「はい!」
ジェドに至っては俺に敬礼までしている。俺は騎士団じゃ無いんだが…
「じゃあ、今の注意事項を元にもう一度組み手するぞ!」
「「「はい!」」」
こうして俺らは日が暮れるまで訓練してしまった…
あれぇ?
なんでこんな風になったんだ?
なんか疲れたし…
…どうしてこうなった…