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“What was it that came.”

“What was it that came.”


 二十一世紀も四分の三期が過ぎ去っている。

 日本がアメリカ合衆国の第五十二番目の州となり、同時に天皇及び皇族の方々がそのお役目を全うされ、京にお帰りになられてから数えても三十年以上の月日が経過している。

 その日本と合衆国との州契約は永続的なものではなく、日米安全保障条約の延長線上で結ばれ、十年ごとに国民投票により見直されるという建前になっている。

 けれども今や、このような状態に変わり果ててしまった後では、日本国民にその問題を蒸し返すものは皆無だ。

 更に、その十年後に宇宙からの飛来物が来たとあっては……。

 世界数カ国に落下したソレに由来する熱帯植物の氾濫で地球の生態系はじわじわと侵されて続ける。

 もっともそれに先立ち、地球人口が激減したのは人類自身の罪といってよい。

 要因のひとつは耐火建材などとして二十世紀後半に持てはやされたアスベストによる禍い、別のひとつは環境ホルモン系の化学物質による海洋の汚濁、より正確にいえば、それらの物質が海面を覆ってしまったことによる地球規模の環境変化だ。

 その結果として例えば海面が二十一世紀初頭と比較し、五メートル近く上昇している。

 前者による被害は日本など人口密集地域で大きく、また後者――これも日本を含む――による被害は工業先進国近傍の海域で著しい。

 ソレ(飛来物)に関しては主に国際連合を中心にして調査が進められている。

 もっとも国連とはいっても勢力地図的にはアメリカと中国およびアラブ首長国連邦で不均衡に三分割された三頭の存在だ。

 エネルギー的には化石燃料が枯渇の様相を見せはじめるものの、賄うべき人口が最盛期の十分の一以下に落ち込んだため、壊滅的な危機はいまだ訪れていない。

 また期せずしてソレ(飛来物)による砂漠の緑化が進んだため、単純に土地を求めての紛争も影を潜めている。

 今回の派遣調査に関する国連での彼の正式名称は気の遠くなるほど長い。

 けれども乗員が二十名余のこの黒部丸内では単に調査技官で通っている。

 もっとも夕餉の席での四方山話の際に本人から出た発言では、彼は単に名前に「さん」か「くん」を付けて呼ばれる方を好んでいるようだが……。


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