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俺の愛機

轟木隊長率いる小雨CR隊は艦尾のドッグへ俺の愛機御披露目式である。俺がこれから戦場を共にかけるCR。これに乗りたくて地球連合軍に志願した次第だ。さっきの物腰の低過ぎる艦長と今、俺の前を逞しく風を切って歩く隊長のやり取りが俺の期待を上げる。

俺なら乗りこなせる機体。


「ここがドッグだ。覚えとけ!」


隊長の声に緊張はピークに達した。壁一枚隔てて俺の愛機が。横にスライドする扉、射し込む光。希望の光の向こうへ。

「いっ、一番星~!」


三体並ぶ同型のCRに俺は驚く。こんなところでお目にかかるとは予想外だった。日本のCR製造において最大企業、柄沢工業の最高技術を誇る、地球連合軍全面配備された高性能量産CRではないか!十年前当時ではね。今では、新星、流星に圧されて、訓練生用CRに落ちぶれている。今も現役で頑張っている一番星があるとは……。


まさか俺、一番星ですか?四神シリーズとか我が儘言わないんで、せめて現在正式採用量産機の流星で、いや、この際、一代前の新星でも良いです。


「あぁ、あれは俺たちの愛機な。お前のは…まだ搬入されてねぇようだな」


轟木隊長の言葉に安堵する。しかし、この人達はこんな時代遅れの機体で出撃しているのか?


「お~い、おやっさーん、ちょっとこっちに来いや!」


「てめえがこっちに来い!バカヤロー!」

「あの威勢の良いじいさんが整備班の班長だ。機体ぶっ壊すと怖えぇぞ。なっ、結?」


整備士の集団に向かう隊長。裾花先輩はまた顔を赤らめて頷くだけだった。でも、何て可愛らしいんですか、貴女は。


「おやっさん、こいつが新米パイロットだけどよ。こいつの機体まだかよ」


「そろそろ来るわ!ちったぁ待て!それにしてもまた整備士泣かせなパイロットじゃねえだろうな」


俺の顔を睨み付ける整備班長。俺は名乗ると直ぐに返答してきた。


「俺は轟木陽平だ。この馬鹿息子の父だ。……しかし、あれに乗るのがこんな坊主とはねぇ」


轟木隊長の実の父という事実より、俺はそのあれを早く知りたい。俺の機体はどこにあるんだ?


「班長~!朱雀三号機入りま~す!」


若いつなぎを着た青年が開いた後部ハッチの向こうから声を上げる。

今、朱雀って言った!間違いなく朱雀って言った!


トレーラーに乗って運ばれて来る深紅のCR。背中には四枚の翼のように附けられたCR史上最高の速度を出す高性能ブースター。地球連合軍のエースCR機シリーズ、四神の一機にして、世界に二機しかない代物。三号機と言うことならば新造されたばかりなのだろう。


何て素晴らしいんだ。この赤いボディーカラー。顔が良い。まさか、俺がエース機に乗れるとは、神様、上層部様ありがとう!


「おい!なにやってんだ!朱雀は第二ドッグだ!こんなところに置いといたら発進の邪魔になんだろが!ちったぁ考えろ」


整備班長の声で俺は現実に引き戻された。あれっ、俺の朱雀三号機がトレーラーに連れて行かれる。発進の邪魔になるって?


「あっあの、あの朱雀は?」


去り行く愛機に慌てて聞く俺。


「今回の任務はあいつをインド基地まで運ぶことだ。新米が四神シリーズに乗れる訳無いだろ」


隊長が笑いながら言ってくれる。そうですよね。一番星を使ってる支援補給艦の新米が朱雀に乗れる訳無いですよね。正月に祖父から大金のお年玉を貰ったら、親に貯金しておくねと取られたぐらいの落ち込みようだ。

良いんだ、俺はいつかエースパイロットになってエース機に乗ってやるんだ。今は一番星で我慢してやるよ。


落ち込む俺の袖が引かれる。裾花先輩が恥ずかしそうに引っ張っていた。あぁ、裾花先輩のその恥じらう表情がとても慰めになりました。


「貴方の機体が来たよ……」


騒々しいトレーラーの音で何とか拾えた裾花先輩の声に、ドッグに入って来たトレーラーの上を見る。

コッ、これが俺の愛機!


「これがお前の愛機『天雲』だ!』


堂々と言い放つ隊長。


「これは、また何と言う機体であろうか!」


眼を見開くリア先輩。


裾花先輩も無言ながら口をポッカリ開けている。


愛機を目の当たりにした俺から出る数々の質問。


「えっと、このCR、腕が無いようですけど」


「安心しろ。内部に作業用アームが搭載されとる」


空かさず答えてくれる整備士班長。


「えっと、足も無いんですけど?」


「坊主はこいつに必要だと思うか?」


俺だって真面目にこいつに足を付けて欲しくは無い。


「因みにビーム兵器とかは搭載されてたりします?」


「こいつの小さなエネルギータンクでビーム兵器なんて高エネルギーな武器を使ったら、直ぐにエンストするぞ」


成る程ね。一番星に比べても機体が小さいからね。


「最後の質問は隊長に。これはジョークですか?」


「大マジだ!」


俺の思いの丈を詰め込んだ質問は直ぐに否定された。


俺の前に現れた愛機。トレーラーの上に置かれ、翼を上に畳んだ紺色の機体『天雲』。


「これ、CRコンバットロボットじゃないじゃないですか!CFコンバットフライヤーですよ!」


簡単に言ってしまえば、戦闘用飛行機。地火戦争が始まる前に、CRの登場により消えた存在。今では偵察機にすら使われていない年代物。

こんなもので戦えと?


「うちは予算がねぇんだ。だから横浜基地に眠ってたこいつを貰って来たって訳よ」

隊長が笑いながら言う。これは悪夢だ。CFでCRと戦闘なんて自殺行為の何者でもない。

親父、今なら素直にあんたの古本屋を継ぐ気になるよ。父親に反抗して軍になんて入るんじゃ無かった。


「まぁ、パイロットは機体じゃねぇよ。腕だ!という訳で任務に向けて早速特訓するぞ!」


そう言って、地獄に真っ逆さまな俺を引っ張る轟木隊長。


入って早々、辞表を書こうかな。

ロボット物と言いつつ、主人公がロボットに乗らない。何じゃこりゃな天見酒ワールド。

幸助がエース機、いや、せめてCRに乗れる日は来るのでしょうか?


次回、『シュミレートで知る現実』、お楽しみに!

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