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短編『報告書:異世界現代ナイズド禁止令 後編』

今は王位を退いた国王が最後に出した“異世界現代ナイズド禁止令”


だが異世界ナイズド進むこの時代の潮流にあってこの法案は大きな意味を成さなかった。



王政を廃止し協和議会制になった後、この国の議会統治は市民が代表を選ぶ民主主義へと置き換わっていった。


年間1万人を数えた異世界からの転生者がこの国に占める割合は国民の半数以上にもなり、それに比例し議会で転生者が占める割合は半数以上に及ぶ。




もはやこの世界の半分は異世界からの転生者であり。

町を歩けば転生者が半数を占め、その街並みは転生者が暮らしていたという日本の風景と大差のない景色が広がる。


今年この世界へ新たに転生してきた転生者たちはこの街並みを見て皆似たような感想を漏らす。


「────こんなの異世界じゃない」



心機一転を夢見てこの世界へやって来た転生者たちにとって、どうやらこの世界は彼らが思い描く理想の”異世界”ではなかったらしい。




この世界にあるのは彼らが元いた世界と同じ暮らしや価値観しかなく。人は法律に縛られ労働で疲弊し僅かな自由を楽しむ時間さえもSNSの人付き合いで消費させられる。


この世界は異世界から来た転生者たちにとって、もはや異世界と呼べるものではなかった。


彼らがよく知る日常とよく知る苦痛が同じように繰り返されるふつうの世界。新たにやって来た転生者たちは救いのないこの”異世界”に絶望していた。




しかしいつの頃からか、そんな転生者たちのあいだにある噂がまことしやかに囁かれるようになる。


────トラックに轢かれたら異世界へ転生できるらしい・・・と


この噂が広まるのに時間はかからなかった。転生者たちにこの噂は神からもたらされた福音として瞬く間に広がっていった。





■きょうの交通事故者数

10,000人


転生者のトラックへの自殺の数は急増し深刻な社会問題となり、この世界から転生者は次第に数を減らしていった。



転生者が減った当初こそ社会は混乱していたが、やがて社会はいつものように回っていき元からこの世界に暮らしている人々はこれまでのような平穏な暮らしに戻っていった。


だってこの世界は元々いた人々だけで十分営む事ができ、ささやかで幸せな暮らしができていたのだから。



転生者たちがいなくなるきっかけとなった、”トラックに轢かれたら異世界へ転生できる”という噂。実はこの噂を流した人物は国を追われた元国王である・・・という噂がまことしやかに囁かれている。


しかし噂は噂でありその真偽はもはや確かめようもない。






最後にトラックに轢かれて亡くなった多くの転生者たちへ哀悼の意を込めて────



「いい世界へ行けるといいね」



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