レッツ!異世界転移?いや転生!?
「…………はぁ?!うそでしょ?嘘だ嘘だ嘘だ!もっと説明を頂戴よ!」
異世界転生系漫画や小などをこよなく愛する主人公 橋本れむ。
そんなれむは洞窟らしきところで一人で騒いでいた。転がりながら騒いでいた。
「いやーーー!!さっきの落書きすんごいうまかったのにぃ~~!」
気にするとこそこかよ。と突っ込みたくなってしまう。
真っ暗で…近くの物を認識するのがやっとなくらいの洞窟の中。
さっきまで、れむは学校にいたのだ。
学校で授業中に落書きをしていた最中だったのだ。
ー少し前ー
「(うわぁ~授業マジ退屈だな~…早く家帰ってマンガルームに引きこもりたい…)」
れむの見つめる先にあるのは黒板。先生はそこに立って黒板を書きながら授業をしていた。
黒板には計算式や、わかりやすいように図などを書いている先生。
面白味は必要ないのだろうが、少し…いや結構退屈な授業だ。
退屈すぎたのか、れむの近くには友達と雑談をする生徒もいた。
そんな生徒をうらやましそうにしながら、何かを思いついたような顔をして…。
「(私もサボっちゃえばいいんじゃない!?)」
筆箱からシャーペンと消しゴムを取り出しノートをちぎる。
ちぎったノートに”あたり”を取り始め、落書きを開始する。
スラスラと走るシャーペン。れむの顔は一切の迷いを捨てたような吹っ切れた顔になっていた。
徐々にただの棒人間だったものが、アニメにいるような人になっていく。
左にかかっているバックからもう一つの筆箱を取る。その筆箱は、多分ペンの筆箱だろう。
ショートの髪はグレー色…?白練色のような月白色のような髪色に染まってゆく。
少し強そうな顔で、東雲のような目のカラー。
徐々に徐々にそのキャラクターは完成していった。
「私も…こういう感じの子になれたらなぁ~!華やかで…壮絶な人生!」
だが、その時学校の警報が赤く点滅しながらうるさく鳴る。
「なに!?」
「ぎゃー!!どうしよう!?俺死んじゃう!」
「僕はまだ結婚できてないから死にたくないよーーーー!僕は絶対生き延びるんだーーぁ!」
まだ何が起きたかもわからないのに、騒ぐクラスメイト達。
「落ち着いてください!今職員室にインターホンかけるので。」
先生は冷静に、先生の私物や学校で使うものを入れる棚の横にある電話を取り、職員室にかけた。
「ねぇれむり~ん♪もしかして異世界転生とかできちゃうかなぁ!!」
「え…?」
元気よくれむの机に飛び込んできたのは…同じくらいの身長の友達。
れむはそんな彼女のテンションについていけず戸惑いを隠せなかった。
急に机に来て、異世界転生できるかな。と聞いてきたら確かに戸惑いは隠せないかもしれない。
「うっうん。私も異世界転生してみたいな。でも美人で強そうな子になりたい。」
「そうだねー。れむりんはちょっと弱っちそうな見た目してるもんね~。」
レムが自分が異世界転生したらこうなりたいという理想を語ったところ、その友達はれむは弱っちそうな見た目だからそう考えるのも納得。という表情で笑った。
「え?私今…もしかしていじられた?」
「へ?うん。多分。」
「みっ皆さん一回静かにしてください!落ち着いて聞いてくださいね…?」
れむたちが楽しそうに雑談していると、先生が青ざめた表情で生徒に沈まれと伝えた。
その表情から先ほどの警報は本当だったんだと解釈した。
だが、問題は何が起きたかだ。
煙臭いようなにおいはしないし、近くで火の粉が上がっている気配もないので火事ではなさそう。
火事の可能性が低いとしたら…あと考えられるのは、テロや不審者が侵入したとかだろう。
「開けろ!」
小さな声で開けてくださいという人の声は、誰にも届かなかった。
すると、
ドンドンドン
教室前方のドアが強くたたかれた。
「開けろ!」
強くて太い男の人の声が外から聞こえる。教室は恐怖でしんと静まった。
「開けろ!」
もう一度同じ声が聞こえた。
何回かこれが続いた後、その音と声はやみ、足音は教室後方のドアのほうへと移った。
ガラガラガラ
「ぎゃぁあああーーーーーーーーー!!!」
急に後方のドアが開いた。それにびっくりしすぎたれむは椅子から転げ落ちた。
転げ落ちたときに後ろの席に頭を強く打ち…人生に終わりを告げた。
「れむちゃん!?」
「れむさん…?ちょっと驚きすぎですよ。今回は抜き打ちの…不審者訓練だったんです!」
先生が慌てて駆け寄るときには、れむは口から泡を出して白目をむいて倒れていた。
救急車が学校の前に来て、教室まで迎えに行くも、その場で死亡が確認されたらしい。
「あ…」
見渡す限り真っ黒な場所にれむは復活を果たした。
だが、動かしたくても動かない体。視線を下にやると、手は縛られ、足も椅子に縛られていた。
「おっと!?お客様だ。我の名前はヴェルディア!一応女神さまをやっている!…だからな?だからな…敬いやがれーーー!んで、そんな我は強すぎるのでお前なんぞけちょんけちょんにできるのだが…優しいので、哀れで面白い死に方をした貴様にもう一度人生を歩むチャンスをくれてやる!」
いきなり登場していきなり自己紹介をしていきなり敬えと言ってきた彼女の名は、ヴェルデア。
一応女神さまという肩書きらしい。
「え?あの…ヴェルデア…様?私って面白い死に方だったんですか…?」
れむは面白い死に方という言葉が理解できず、自称女神様に質問をした。
内心、女神と凡人の考え方は違うから面白い死に方なのかな。と思っていたが、
「だってな?お前!!訓練を本気だと思い込んで失神して死んだんだぞ!?」
「……マジか…。」
衝撃の事実に言葉を失うれむ。
「だ・か・ら…もう一度チャンスをくれてやる!とりあえず我はめんどーなのでなにも異世界転生のためのスキルとかはくれてやらない。頑張ってあがけ☆そのお前が転生する世界は~魔王とか勇者とか魔物とかわんさかいる場所だから~がんばれー!」
すごい高いテンションと、すごい軽いノリで異世界転生をさせようとする自称女神。
「どうして!異世界なんですか!」
「だって生前に異世界転生してみたい~って言ってたじゃん?」
「さらば!」
で、今に至る。
「う…異世界転生…したいなんて言わなければよかったかも。」
後悔に浸る…れむなのであった。
洞窟の奥ほうでカサカサと音が鳴っている。その音は徐々に近づいてくる。
不気味で、何か気持ち悪いような不快な音。
「(こっ昆虫の音…?魔獣とかじゃなくて?もしかして平和かな…この世界。)」
れむは昆虫の音
暗闇から巨大なアリ?のようなものがやってきた。これが先ほどの音の正体なのだろうか。
「(すっごい楽しそうだなーって思ってた異世界転生ってさ…どうしてこんな過酷なの?)」