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2話 探偵助手兼魔術師見習い

「すいませんすいません!弁償します…!」

「まあとりあえず入って、依頼人でしょ?」

 依頼人であろう少女はドアノブを持ったままの私に平謝り。見た感じ年齢は十代半ばだろうか、その髪色と同じく純白のワンピースが良く似合う綺麗な少女。

 ただこちらも呆けていては話が進まないのでひとまず椅子に座ってもらう事にした。

「まあ扉のことは気にしないで、まずは自己紹介から行こう。私は時宮黒乃、探偵だ」

君は?と机を挟み対面の椅子に座って問う。少女はまだ扉の方をチラチラと気にしていたが気まずそうな顔で答えてくれた。

「切咲立花切咲立花(きりさきりつか)、大学生です…。それでその…依頼なんですけど」

「了解。人探し、猫探し、浮気調査に素行調査…色々あるけど切咲さんはどんな依頼を?」

「いえ、そういう依頼ではなくて…。私、昨日から急に触れたものがバラバラに切れる魔術が発動するようになって…」

「暴発してるのは見ればわかる。でもそういうのは魔術協会に行くべきだと思うが…」

魔術師には魔術師の家系に生まれずとも急に魔術が使えるようになった者もおり、そういう者も例外なく魔術協会に登録し会員にならないといけないルールがある。そうなると彼女が行くべきは探偵事務所ではなく近くの支部のはずだ。

 会員になれば保護も受けることができるしそこも初回登録時に職員の方から説明する義務があるし。

「いえ、登録自体は済ませたんです。ただ私まだ全然魔術を扱えなくて…。危ないから大学も休んでて…」

「それなら尚更ここに来る理由はないと思うが…。協会に相談窓口あるし説明されたでしょう?」

「でもその協会の方からここに来るように言われて…。その、これを見てください!」

 彼女は提げていたカバンから一枚の封筒を取り出した。でかでかと時宮黒乃へと書かれたその封筒は魔術で封がされており、ほぼ間違いなく協会からの依頼だとわかる。正直すごく開けたくないが協会に飯を食わせて貰ってる身としては仕方ない。

「ところで君は内容は?」

「聞かされてますけど…緊張しててあんまり覚えていないです…」

「ここがただの探偵事務所じゃないことも?」

「それはここに来るように言われた時点でなんとなく察しました」

「了解」

 封を開け中身の紙を取り出して読むと実に面倒な事が書いてある。前置きに長々と私の家の事などが書かれているが今はどうでもいい。とりあえず重要なのは彼女を私の手元に置いて育てろという部分だけだろう。魔術協会からの正式な依頼なためちゃんと金は貰えるのは幸いだ。

「えーっと…まあ差し当たり君は私の弟子兼助手って事で」

「弟子兼助手…?」

彼女はきょとんと首を傾げる。

「とりあえずこのままドアを放っておくわけにはいかないし手早く修復してしまおう」

「修復の魔術でどうにかなるんですか?結構バラバラですけど」

「いや、私の魔術でドアの時間を戻す。幸いな事にまだ戻せる条件内にあるからね」

手紙をしまうとパチンと指を鳴らし魔術を発動。それだけで切断されバラバラになったドアは元の形に復元された。

「時間を操るなんて…そういう魔術もあるんですね」

「まあこういう世界に干渉する魔術の場合は色々制約も…とまあこの話はいい、まずは軽い研修をぱぱっと済ませてしまおうか」

「研修ですか?」

「そう、探偵というよりは魔術の方だけどね。君のセンス次第だけど30分くらいで最低限魔術が暴発しないようにはできる。とりあえず場所を移すからついてきて」

 そして2時間が経過した。

「それじゃあ次は魔力を全身に巡らせて…」

「あの…こんな事言うのは失礼は承知なんですけど一ついいですか?」

「?君センスいいし、次は基礎的な身体強化を教えようと思ってたんだけどどうしたの?」

「そろそろ暗くなって来てますし、私も魔術が発動しないようにできるようには…なりましたから一回家に帰らせて欲しいんですけど」

 場所を探偵事務所から近くの協会の支部に移し、そこの地下の訓練場。そこで私は彼女に基礎的な魔術の指導を行っていた。

 暴発していた原因は単純、魔術師として目覚めるまでに体内に長年溜め込まれていた魔力が溢れて本人の固有魔術が暴発していたので魔力を体外に放出する方法を教えた。

「折角だから魔術の使い方とか教えたいんだけど…まあ今日はここまででいいか。明日は探偵の仕事についても軽く教えるから学校終わったら事務所まで来て」

「はい。今日はありがとうございました!」

 元気よく駆け出して帰宅する彼女を見送ると私はいつのまにやら自分の背後に立っていた女に声をかけた。

「で、一体どう言う風の吹き回しなのお祖母様」

「いつまでも弟子の一人もとらないダメ魔術師の孫娘に対する老婆心。これ以上必要か?」

「古風な喋り方してもその見た目で老婆心を語るのは違和感ありすぎ。それに必要に決まってる。あんな飲み込みいい子ならお祖母様が本家で預かる方がいいんじゃ…。お父様もお母様も家にいるし」

「できたらそうしておるわ。わざわざお前に預ける時点で無理な事くらい察っさぬか」

 腰まで伸びた長い黒髪と対照的に白く煌びやかな着物。私より頭一つ小さい古めかした言葉を使う女。

彼女こそが日本魔術協会のトップの一人にして伝手やコネを利用して私に頻繁に依頼を回してくれる頼れる祖母こと時宮陽子だ。陽子(ようこ)

「で、なんで無理なの?ちゃんと理由はあるんでしょう」

「話せば納得せんのじゃろう?まだ未確定要素が多いが…まあ短めに話すとしようか」

そう前置くとお祖母様は話を始めた。




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