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外に出ると、ずっと森が広がっていた。きっとこの森を抜けると王都にでも繋がっているのだろう。と勝手に予測する。
街に出られなければ、森の中でひもじい思いをしながら、朽ちていくんだな……。ねこりは異世界転移して、3日も経たずして命を落とすのか……。ねこり、よっわ!
――と悲しい妄想はここまでにして。
ねこりは、森に一歩、片足突っ込んでしまった。
まだ明るい午後だけど、ずっと歩き続けていたら、暗い深夜になるだろう。
不気味な森だけど、蝙蝠は飛んでいないし、魔物の気配もしない。この異世界、異世界のくせにモンスターとかいないのね。ま、居たとしても、ねこりの戦闘力じゃ負ける気しかしないけどね。そう考えるとモンスターの居ない異世界ってファンタジックでは無いけれど、案外優しい世界なのかもしれない。
と、30分ほど歩き続けていると、川に到達した。あ、ここでも水が飲めるのね。木の入れ物に入っていた水が、4分の1ほど減っていたので、ここでも補給。
誰か馬車でねこりを王都に運んでくれないかなぁ……。あ、白馬じゃなくて、黒馬ね。黒馬。忘れないでね。
――川の中にも生物は泳いでいない。
え、もしかしてこの世界、ねこりしか動物・生物いないとか無いよね!?
そうだったら、寂し過ぎるんですけどっ!
その思いはもうすぐ杞憂に終わる。
――水分補給を終え、再び歩き出す。
すると……どこからか甘い匂いがしてきた。
「ん、何だろう……」
微かだけど、ねこりから見て右側が明るい。ちょっと怖いけど、右側に歩を進めてみる。
(ん、『妖精経営 ハニーカフェテリア』……?)
木で出来た看板にはそう書かれている。
はちみつの匂いがぷんぷんするので、その文面の説得力は充分にある。
螺旋状の階段を上がっていくと――。
「い、いらっしゃいませ……!」
羽のある美少女に出迎えられた。しかもその少女は宙を浮いている。
妖精じゃん!
しかも女の子。かわいい。
「あ、あの……」
「フェアリーじゃん」
「第一声がそれなんですか」
見惚れていたら、そう指摘されてしまった。
「あ、あの……ご注文は……?」
「ハニーラテとはちみつパンケーキにしようかな。なにせ、お腹ペコペコなんで」
「そんな顔、してます」
「ちょ、ちょっと失礼じゃない!?」
――フェアリー美少女は店の奥へと消えていった。客は少人数だが、ちらほらいる。有名な喫茶店なのかな? 初めて来た場所だけれど、結構気に入った。オレンジとベージュを基調とした、ほんわかした内装。丸テーブルに丸太の椅子。そのセットが店内に7つある。
フェアリー美少女、かわいい……。
そう浮かれていると、注文していた品がテーブルに届いた。
あれ、ちょっと待って。
イケメンにしか興味無いねこりが、どうして女の子に対してうっとりしているんだろう……? 仮に人外だとしても。