60開脚目
「今、なにかいったかしら?」
「いやー牛魔人も気になるとおもってさ」
「とっても危険な種族で有名よ。圧倒的なパワーを有し、力任せな戦斧による近接戦闘を得意としているわ」
「わかりやすいパワータイプってわけか」
「それだけじゃないわ……」
「?」
「とってもいいにくいのだけど……」
オティンポコレクションをいえるくせに何がいいづらいのだろうか。
「頼むいってくれ」
「……乳よ……」
「乳?」
「おっぱいから出てくる乳ね」
「うん、ミルクのこと?」
「そうよ、危険な牛乳ね、牛魔人だけに」
「それのどこが危険なの?」
「戦闘中に高水圧のミルクを飛ばしてくるわ。岩も金属も簡単に切断してくるの。アイツらの前ではアダマンタイトやミスリルの鎧も紙切れ同然よ。あらかじめ自身の防御力を高めるスキルや魔法がないと真っ二つにされかねないわ、わたしなんて上半身と下半身別々にされたもの」
「こわ……(それで生きているムーンチルドが……)」
ドライアド生命力溢れる種族のひとつである。それゆえかそれとも女神から賜った力のおかげか。
「必殺技と呼ばれるものは〈ヘブンスプラッシュ〉よ」
「なにそれ天国行きそう……」
「催淫効果のあるミルクを飛ばしてそれを飲んだ者に絶望的なまでの快楽与え死に至らしめる技よ。戦うときは口を開けちゃだめよ?」
強い快楽耐性がなければミルクも飲めないのかとふと思うエリザベス。
「でもおいしーんでしょ?」
「絶品よ!」
「ほらー!」
やっぱりおいしいのかと思うエリザベス。それならば是非ともいただくしかない。あるときはコーヒーに、あるときは紅茶にいれて飲んでもよい。あるときはアイスクリームに、あるときはヨーグルトに、あるときはチーズに、あるときはバターにとその可能性は無限大である。
「そういえば……絶品といえばスライムのゼリー……いわゆるスライムゼリーもぷるぷるして絶品よ」
「んーッ、スライムって……食えるの?」
スライムを正直食べてよいものか疑問が残る。そもそもお腹は壊さないのか……。
「もちろんよ。生きたまま食べようとするとね……『きゃあーやめてー死にたくないよー』って叫ぶの。ぞくぞくしちゃうわ」
「……おまえ悪魔だ」
「ドライアドよ。それと食べられる間際に分裂して本体は逃げるから心配無用よ」
「よかッ──」
「──つまり何度でも食べられるのよ」
「ふぁあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああーッ! あんたやっぱり悪魔だ」
「だからドライアドよ」
弱肉強食を垣間見た気がした。この世の不条理に触れた気がした。背筋にゾクゾクとなにかが走り抜けた気がした。
「ねえ……今あなたの背中からなにか出ていったわよ? なにあれは?」
「恐怖さ」
「あなた本当に変なスキル持っているのね」
どうやら気がしただけではないようだ。さらには一回敬礼していったような……。
「おーい、なにやっとるんや? ウチも混ぜてや」
ノックもせず、あるいは話に集中し過ぎておりノックの音ががきこえなかったのかいきなりルナフレイムが現れた。
「あらなんだか久しぶりに感じるー。今、転生者についてきいてたんだよ、君のママからさ」
「久しぶりって全然最近やろがいッ。忘れんといてー。てんせーしゃ? ああ、なんかママがいってたは前世の記憶あるって。信じがたいけどママの謎知識すごいからなあ。結局信じるとる」
理屈はわからないがとりあえず母親を信じているルナフレイム。なんかよい親子である。
「もうッ、前にいったじゃない? お母さん前に人間だったって!」
「あーあれや、ママは宇宙人や」
「違うわよ、異世界人だったのよッ!」
宇宙人だと思われていたのか。宇宙人ってこの世界にもその概念が存在するのか。
「そんなこといったってどっちだって現実味がなくて同じに感じるんや」
確かにと頷くエリザベス。
「ところでルナフレイムは転生者に会ったことはあるの?」
「あるもなにも攫われたことがあるで。あの宇宙人に」
結局宇宙人=転生者な考えのルナフレイムなのであった。それよりも気になるのが攫われたということである。なにがあったのかとても気になる。




