59開脚目
ムーンチルド以外の転生者にまさかのサキュバスがいるとは……。エッチなにおいしかしないためエリザベスの興奮は冷め止まず鼻から噴水ごとく血を垂れ流していた。さらに妄想が物理的に具現化してエリザベスから飛び出していき走り去っていった。
「ねえ……今なんかあなたから出てきてひとりで走っていったんだけど……。あなたのスキルかなんかなの? 鼻血出ていることがどうでもいいことにみえるんだけど」
鼻血の100倍どころか1000倍以上インパクトのある事象なのだ。
「今のかい? 〈妄想人間28号〉さ」
「う……うん。なんか納得できる気がしないスキルね……」
「ねえ、他にはどんな転生者たちと戦ってきたの?」
強引に話題を転生者にもっていくエリザベス。あまりにもへんてこなスキルなため説明するのがダルイようだ。
「そうねぇー……セイレーン、ハーピィ、牛魔人、スライム、ヴァンパイアとかあらゆる種族にいたわよ。あいつらいつも男に飢えていたわよ、変態ばっかりよ」
あちこちとさまざまな種族に転生者がいるようだ。そして変態ばかりらしいがそれはムーンチルドをみればだいたいわかるし、また、エリザベス自身もぶっちぎりの変態である。
セイレーンは男であればこの種族も必修科目であろう。知らぬとはいうことができない。セイレーンとは古代タマンネリア語で「紐縛緊縛殺」や「干男殺」などを意味する。セイレーンは人間からみて怪物・化物ととても恐れられている。セイレーンは特徴的な容姿をしており、なにより上半身は人間と大差ないが下半身が魚の姿なのだ。岩礁にひょっこりと現れて、その美しい容姿をみせてくれる。だが姿をみたらすぐさまそこから耳を塞ぎながら急いで離れなければならない。また、特徴的な能力はその美声だ。歌声で強烈な魅了をしてくるのだ。つまり、サキュバスと同じように状態異常にすることが得意である。 その声を利用して拡声器・サイレン、司会業のお仕事をしていると噂もされる。
セイレーンの「下半身が魚」、「岩礁にひょっこり」でわかるとおり海に生息する存在である。そして驚くべきところはセイレーンは人を食べる生き物であった。綺麗な歌声で男たちを惑わせ海に引きずり込むのだ。そして骨以外綺麗に食したあとは海に人間の骨を捨てるのでそれが近くの島に流れ着いたという。現代社会に生きる者には、人間の骨がそこら辺に転がっていたら恐怖するはずだ。
しかし、非効率だ、人間を食するという行為は。ずっと人間がやって来るのを待ちわび、なかなか来ない中、食べて栄養に出来るのほんの少し一瞬の出来事である。それではセイレーンたちは栄養不足で干からびてしまう……。
そこでその解決に一役買ったのがサキュバスである。セイレーンたちはサキュバスたちと仲良く親密に交流している時期があり、男の精を……生命力を吸い取る術を学んだのだ。これによって人食よりはるかに効率よく栄養を摂取することが出来ることとなったのだ。男たちは死ぬまで栄養源とされたが、歌声によって惑わされているため死ぬまで皆幸せそうな顔である。それが唯一の救いではあるのだが結局死に向かっていくことには変わりない。また、歌声に──状態異常に耐性のある者は必死に逃げだそうとするのだが、一度捕まった男は二度と逃れることは出来ないといわれている。まあ、貴重な栄養源はそう簡単には手放さないのだろう。
次にハーピィだが古代タマンネリア語で「男を掠め取る者」を意味する。顔や胸は人間の女性と大差ないが、大きな人間との違いとして立派な翼と鷲の鉤爪のようなもの持ち、風の精霊ともいわれている。また、セイレーンが獲物の男を求め空へと飛び立った姿がハーピィとされ、進化の過程で分岐した親戚関係にあるともいわれている。セイレーンと親戚関係にあるだけあってその美声は素晴らしく人々を虜にしてしまう。つまり、魅了の能力に長けており状態異常にするのが得意なわけだが、なんだかエッチな者はみんな魅了の能力を持っているかのように思えてしまう。セイレーンなどはエリザベスの元いた世界では、エッチな存在などといって憧れの対象かもしれないが、こちら世界の者からみればただの脅威でしかない。セイレーンの親戚であるならばあたり前のように、呼吸をするかのように、自然に男を攫う。そう、上空から気配を殺し一気に近づき、他の女から掠め取るように……。
ハーピィはカップルをみつけると嫉妬からか率先してその恋仲を引き裂こうとするのだ。これは自らの種族を繁栄し、他の種族を衰退へと導きたい種族特有のものらしいが、仲の良い種族には決してそのようなことはしないので安心してほしい。
また、高いところを好んでハーピィたちは住んでいるため、しばしば高いところに住むエルフやドラゴンなどと争いが起きるらしいのだ。絶対的強者感漂うドラゴンとも争うその姿勢は非常に好戦的である。
「なんてけしからん奴らばかりなんだ……」




