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57開脚目

 ただ、ただひたすらムーンチルドの愚痴をきき続け、かつ、重要な話を引き出し、なんとか元の世界――ドライアドの国に戻って来たエリザベスとムーンチルド。たしかにほんとうにムーンチルドの拳で空間が歪みドライアドの国に戻ってくることができた。一生あのままかとも思うエリザベスではあったが、ムーンチルドのいうとおりムーンチルドの拳の力で帰ってくることができた。しかしながら帰ってきて早々、問題が生じた。


 ドライアドたちの悲鳴が国中できこえるのだ。それはなぜかというと……。


 エリザベスと戦いバーサーカー状態になっていたはずのドライアドの女王ムーンチルドが帰還したからだ。さらに具体的にどうして国民であるドライアドたちが悲鳴をあげているのかというと……。


 昔、ムーンチルドがバーサーカー状態になって暴れ、国が滅びかけたことがあるためだ。例えばムーンチルドのなんちゃらコレクションを狙って他の転生者がやって来たときである。その時の戦いは今もドライアドたちに語り継がれる伝説の戦いであったそうだ。


 はたしてそのコレクションにそれほどの価値などあるのだろうか。とても気になってくる。それほどそのコレクションはよいモノ──男なのだろうか。


「皆の者、落ちつきなさい。わたしは冷静よ、心配をかけて悪かったわ、もう大丈夫よ」


 大きな声でムーンチルドがそう告げるとドライアドたちは徐々に落ち着きを取り戻していった。いったいどれほど怖がられている女王なのだろうか。そもそも一般ドライアドが束になってもムーンチルドをとてもではないが止められないらしい……。恐怖政治とかほんとうのほんとうにしてないよね、ときくのも怖い。


「女王様は正気よ! よかった、本当によかった」


 涙を流し喜びに打ちひしがれるドライアドたち。正直な話、ドライアドの女王が生きているかどうかより正気かどうかを気にしているため、やっぱりいろいろとこの子たちも苦労してきたんだなあと察せられる。


「女王様! その人間は大丈夫なんですか? そ、そのおー……一応その者と戦われていたとの報告があったのですか……」


 そういえばこの国でも戦ってその姿は目撃されていた。理性を失ったムーンチルドの姿に絶望していたドライアドたちがあのときにもいた。


「この子は大丈夫よ、仲良くなったのよ、ちょっと通してちょうだい。この子ともっとお話がしたいの。いろいろと準備をしてほしいの」


 ──えッ……まだ話すんですか、もう疲れていて眠りたいんですけど……。


 エリザベスはすでに満身創痍だ。それに対してムーンチルドは元気ハツラツ大爆発だ。心を許せる友人ができたみたいで嬉しいのはわかるのだが、決してそれだけで元気なわけではない。女神エロナスの仕業である。転生特典のひとつ〈スタミナチャージ〉によるもので、失われたHPだの体力だのいわれるものが急速回復する優れモノである。


 そのままエリザベスと腕を組み引きずって連れていくムーンチルド。いわゆるカップル腕組というやつだ。


「た、たすけ──」


「──さあ、いきましょ!」


 虚しくもエリザベスの言葉はムーンチルドの言葉でかき消された。誰かが助けてくれるのかと思えば決してそんなことはない。なんならご愁傷様ですという目をちらちらと向けてくるドライアドたちがたくさんいる。そして目を合わせるとサッと目を逸らされるエリザベス。


 この国だめかもしれない。そうおもうエリザベスなのであった。

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