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54開脚目

「問題がないですって!? おおありよッ!」


「え?」


「だって……あなた……全裸ですものッ!」


「……あっ……!?」


 どうやらエリザベスは気付いていなかった。すっぽんぽんでもそのまま戦い続けていたのだ。


「お、俺の動揺を誘おうとしても、むッ、無駄なんだからねッ!」


「いやー、あのー、ほんとー、なにかで、その……隠して下さいます? 目に毒なんですよ……」


「ばッ……そんな馬鹿なッ……究極の美を体現した大天使エリザベス様だぞ俺様はッ? 目の穴どころか全身の穴という穴をかっぽじってみるべきだろうがッ!? こんなサービスシーンなかなかお目にかかれないぞ?」


 耳の穴以外かっぽじってはいけないだろう、目であれば危険すぎる痛すぎる。目はひん剥いてみろである。


「……え……あなた……天使……なの?」


 訝しげな表情をしながらエリザベスの周りをぐるっと何周もして本当にエリザベスが天使がどうかを入念に確認した。高速でエリザベスの周りをぐるぐるとしたため竜巻が発生するほどだ。


「ふ……不敬よッ! て、天使様を語るなんてッ! あなた天使の輪も翼もなにもないじゃないッ!」


 鬼の形相となったムーンチルドは再度攻撃を開始する。


「心はいつも天使だし、いや……女神かも」


「めめめめめめめめめめめめめめめめめめめめめ……女神エロナス様への不敬よッ! もうここで始末するしかないわッ」


 女神エロナス……明らかに信仰してはいけないような名前の女神である。どこかもなにも全面的にいやらしさを打ち出したような名前である。


「ふんッ、はッ、いやああああぁぁぁぁああああああーッ!」


 激しい打ち合いの最中、正直不敬もなにもどうでもいい。しかし、名前がいやらしいので女神エロナス様に会ってみたくなったエリザベス。


「〈全裸武装〉!」


 エリザベスはなかなかに怪しいモノを発動した。これはゲームでは全裸にみえるバグ、全裸になるバグ技であった。ゲーマーたちは必死にこのバグ技を習得しようと励むのだが、これまた極端に難しいものであった。紳士たちの願いはそう簡単には叶わないものだ。紳士たちの願いが集い凝縮された濃い世界がそこにはある。


 この〈全裸武装〉については、ゲームではなくこの世界で試したことがあった。それは全裸でも〈全裸武装〉が発動できるのか、だ。本来〈全裸武装〉は全裸ではない状態で発動するものであり、ゲームの時に無理矢理キャラクターの全裸を拝みたい時に使用する高等バグ技である。勿論それだけではない。


「くッ(こちらが押し負けている?)」


 よい子のゲーマーならビキニアーマーでわかっているはずだ。ビキニアーマーとは主に女性の装備品であり、おっぱいと股間あたりばかり重点的に金属などで保護されている鎧であり、物理的に装備者が守られているようにはとてもみえない代物である。ぱっと見ではおなかが無防備であったり大事な所が守られていないようにみえるが、しっかりと防御力は上昇するし、機動力も高くすばやさまで上がるあるいは下がらないなど、そのポテンシャルは高い。


 では〈全裸武装〉はどうか?


「どうした? もうついてこれないのか?」


 そう、〈全裸武装〉にはちゃんと効果があるのだ。こたえはシンプルであり、たとえ全裸であっても効果があるのだ。全裸であるにも関わらず武装とはこれいかに……と思うかもしれないがそういうものである。


「ど、ど、ど、ど、ど、どうして全裸なのに強くなっているのよッ!?」


「はあー……わッかんないかな? 人々の夢、希望、愛が詰まった姿――それが全裸なんだよ。強いに決まっているだろ? 夜にベットで激しく燃え上がるときだって全裸なわけだしさ」


「わかんないわよッ!」


 軽くキレ気味のムーンチルドだがこのままでは押し切られてしまう。


「〈心頭滅却〉!」


 今度はムーンチルドがスキルを発生させた。ムーンチルドは目を閉じ無念無想の境地に到達した。雑念を排除するために使用したのだ。目の前の人間が全裸であまりにも戦いづらかったのだろう。このスキルを発動させてから次第にエリザベスの攻撃についていけるようになった。次々とエリザベスの攻撃を潰していき、今度はムーンチルドがリードし攻撃を的確に当てていく。


「ぐふっ! なかなかイかしたスキルもってんじゃねーか。なら……もうこの全裸の力……惜しみなく使わせてもらう!」


 そうムーンチルドに告げたエリザベスの胸部が激しく発光する。螺旋回転するエリザベスの巨乳から放たれた光が辺りを照らしつくす。


「ふーん、愚かね。目つぶしなんて効かないわ。がっかりね――ぐふッ!?(今、一体何が起きたの!?)」


 ムーンチルドは〈心頭滅却〉の効果によって目が見えなくなっても攻撃を感知して避けることが出来るはずなのだがそれが出来なかった。それゆえの驚きである。


「まッ……まぐれよこんなんの……ぐはッ!」

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