51開脚目
争い……それは醜いもの……などといわれることがある。また、欲深いものといわれたり、子どもっぽいといわれたり、何も生まないなどといわれるなどとにかくマイナスなイメージが付き纏うものである。しかしながら、それは争いごとから逃げている者の戯言であり、明確な虚実である。
そう実感しているのはドライアドの女王ムーンチルドだ。もっと戦って闘って……恋活、婚活すべきであった。決して王子様の方から勝手にやってきてはくれないのだ。
彼女はドライアドとしてこの世界に再び生を受けた。いわゆる転生者である。前世はとても真面目に生きた。しかし、そうであるにも関わらず彼女は満たされることはなかった。正直者が報われるとか、真面目な人がよい人生を歩めるとか決してそんなことはなかったのだ。これは多くの人に突き刺さることだろう。どうしてこんなに直向きに善人として頑張っているのに神様はこたえてくれないんだろう、と。それなのに悪さをする人間ばかり得をする世の中でありヤったもん勝ちである。そうであるならば彼女は自由に生きようと思った。今度こそ男を手に入れると……。それも選り取り見取りのイケメンたちを……。喪女故に犯したい過ちがこの世界にはあったのだ。
幾度の激闘を経て彼女はドライアドのトップに立った。複数のドライアドの集落を束ね大きくそして強い国を作ったのだ。その過程で知ったのはビルドシステムだ。彼女は物心ついたときから不思議な力を有しており、幼い時から一目置かれる存在であったが、ビルドシステムが存在することを認識するまでにはかなりの時を必要としてしまった。それはなぜかといえば、彼女はゲームをしてこなかったからだ。もしもゲームをしたり、異世界物の小説やアニメなどに触れていたらもっとはやく気付くことが出来たかもしれない。
そんな良くも悪くも真面目で直向きな彼女は、自らの転生の欠点に転生から数百年が経ってから気がついた。
ドライアドは容姿端麗である。それはムーンチルドも例に漏れないことであり、前世の百倍美しいと自負するほどである。
しかし、しかしだ。彼氏が出来ない。待てど暮らせど男が出来ない。結婚できない。おかしい……なにかがおかしい……。
そう、こたえは単純かつ明白であった。ドライアドには男性が存在しないのだ。この点だけで数百年の時を無駄にしたムーンチルドであったが、その分、皮肉にも恋ではなく国が発展した。
そうだ、男狩りをしよう! これがこの世界におけるドライアドが男を木の中に引きずり込むという噂の幕開けであった。そうだ、京都行こうのノリでそのようなことをされても困るのだが……。
そもそもドライアドの繁殖方法は有性生殖がメインではなかった。あくまで有性生殖も可能というだけであり、メインは無性生殖というのがドライアドである。この点においてドライアドの国では政治的な問題を多く抱えることになるのだが、トップがムーンチルドであるため力でだいぶねじ伏せてきたのだ。
「きえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええいーッ! ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおーッ!」
謎の掛け声と共に女王ムーンチルドは拳でエリザベスをなんどもなんども殴りつける。この拳こそがドライアドたちを束ねた象徴である。もっとも私利私欲のためかもしれないが……。それでも可能な限りドライアドたちの暮らしをよりよくしようとしてきたのも事実だ。
「いたたたたたたたたッ! いい加減しつこいぞ? そいやッ!」
このままやられるわけもなく、ついにエリザベスの反撃が始まった。今度はエリザベスの拳がムーンチルドの顔面のど真ん中をとらえた。エリザベスの拳がめり込み歪むムーンチルドの顔面は、それで無事なのかといいたくなるほどの状態だ。ムーンチルドはそのまま勢いよくピンポン玉のように跳ね部屋中の壁と何回か激突した後、天井を突き破って屋外へと弾きだされた。




