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45開脚目

「えっ……?」


 エリザベスが驚くのと時を同じくしてデュエル会場の雰囲気がさらに変わる。観客たちも息をのむほどの緊張感が走る。


「……かっ……神って禁止カードなんじゃないの?」


 驚きつつもなんとか質問をするエリザベス。そもそも禁止カードとはなにかというと、その言葉通り禁止されておりデュエルで使用することが出来ないカードのことである。


「ちっ、ちっ、ちっ。新弾《月光神の降臨》で本格的に神のカードは使用が認められたんや」


 神……それは文字のごとくその存在が神のカードであり、圧倒的な能力を有し、呼びだすことが出来ればほとんど勝利が決まってしまうほどである。だからこそ神は神であるだけで禁止カードだったのだがルールが変更され使用可能となっていた。さすがのエリザベスも驚くわけである。これによってスピーディーなデュエルも可能となるだろう。


「え、ちょっ、しっ……しっ……新弾!? いつのまに出たの? てかルール変わってんの?」


「情報の更新すら出来とらんとは……あの強さはまぐれだったんか? そんなんじゃウチには勝てへんで? ほないくでっ! デッキの上から30枚カードを捨て場に送り【月光神アルテミス】を特別召喚!」


 捨て場……それは使用済みのカードや使用不可になったカードが行きつく場所である。デュエリストの間では墓地だのソウルランドだの好き勝手いわれている。

 

「デッキを30枚も削って召喚するなんて恐ろしい……最初の手札は5枚で、そこからデッキのカードを30枚捨てるわけだから……えっ……もともと全部でデッキが40枚だとするとあと5枚しかないじゃないか!? デュエルはカードが引けなくなった時点で負けなんだよ? ハイリスクだな」


「つまり、そのリスクに見合ったリターンがあるっちゅーわけやッ! 【月光神アルテミス】の効果発動ッ! 相手の残りのデッキ枚数を1枚にする。いけ、〈ルナティック・ショット〉!」 


 ルナフレイムの指示に従い女神が弓に矢をつがえぎりぎりまで引き絞り、そしてエリザベスに射ってきた。


「ぐあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああッ!」


 乙女らしからぬ、姫らしからぬ悲鳴あるいはおたけびをあげるエリザベス。


「ちょ……あの……さ」


「なんや?」


「あの……あのね?」


「だからなんやねん? はよいってや?」


「うん、その……カード」


「カード?」


「なんか……変じゃない?」


「どこが変なんや? おかしくないやろが!」


「いや……おかしいから! 実体化してんじゃんそのアルテミス!」


 先ほどから召喚された女神があたかもその場にいるようにみえていたのだ。


「あー、このデュエルシステム説明してなかったわ。ここでのデュエルはある程度実体化するで? ウチのママが作ったんや、すごいやろ!」


 ドヤ顔をするルナフレイム。しかし、エリザベスにはそんな顔に気づきもしなかった、いや、できなかったのだ。


「あの、すんごい衝撃来るしなんか痛いんですけど? ただの立体映像的なもので、めっちゃすごいなあーって流してたんだけど……実体あるの?」


「だからいうたやんか、実体化するで!」


 立体映像ではなく実体があるようなのだ。どんな技術力なんだと突っ込みたくもなるのだが、ドライアドたちの住むこの場所が未来的過ぎてなんでもありに思えてもくる。


「ふぁー、夢のデュエル装置じゃーッ!」


 驚きと感動に包まれるエリザベス。だがそれどころではない。ピンチなのだ。デッキがもう一枚しか存在せず、次の自分のターンで勝負を決めなくてはならない。たったの1ターンだ。明らかに無謀というものである。


「ウチのターンは終了や。ほな、足掻いて見せてくれや」


 自信満々の表情のルナフレイム。それはより具体的にいうならばにんまりとした表情だ。よほど嬉しかったのだろう。ついでに女神もにんまりとした表情だ。勝利を確信した、とでもいうべき状態なのだからその表情は当然のものである。


「ふッ!」


 このような逆境であってもエリザベスは笑ってみせた。勝算はあるのだろうか。


 次回、まだ俺のターンは終了してないぜ?

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