44開脚目
闘技場やコロシアムというにはいささか現代的すぎる場所にルナフレイムとエリザベスがいた。どうやらここがデュエルをする場所らしい。
『レディース・アンド・ジェントルマン……って言っても男性はいないんだけど……皆さま! 大変ながらくお待たせいたしました! 今宵、ドライアド代表と人間代表とのデュエルによって最強のデュエリストを決めるスペシャルマッチを開催いたします!』
司会のドライアドのお姉さんが拡声魔法が付与されたマイクのようなものでそのように話すと会場は大歓声に包まれた。この場所の観客席からは溢れんばかりの人々が熱気を放っていた。どれほどここのドライアドたちはデュエルを愛しているのだろうか。しかし、エリザベスは観客がいるなどきいていなかったので事前説明をしてほしいと思うところであった。
しかしながらエリザベスは勝手に人間代表にされていた。一応、魔王軍のために勧誘に来たという建前があったはずである。せめて魔王軍代表にすべきではないかと心のなかで密かにおもうエリザベスなのであった。
また、「男性はいない」とはドライアドは女性のみの種族だからであろう。実際、観客席には男性が見当たらない。それゆえドライアドは男性を木の中に引きずり込む。何のためかって?
子作りのためである。
ドライアドは寿命が長命であり、まるで無限かのような種族ともいわれており、そんなに頻繁に子作りする必要性がない。だが、燃え上がらないなんてことはない。ヤるときはヤる。それがドライアドだ。しかし、最近のドライアドは困っていることがある。それは世界中で同時多発的に発生しているといわれる男不足だ。いくら頻繁に子作りをする必要がないとはいえ流石に困る。そんな問題を解決しようとして考えている矢先にこのデュエル騒動である。
ドライアドの国ではデュエルは国技である。そしてその大人気の国技のデュエル、かつ、国一番のデュエリストであるルナフレイムの試合をみれるというのだからこそのこの大歓声だ。
有名なプロ野球選手やサッカー選手入場の時のようにルナフレイムが入場すると、その瞬間さらに歓声が大きくなる。それに対してエリザベスが入場した時は大ブーイングが巻き起こった。これがホームとアウェイの差というやつだ。
「すまんな、みんな悪い子やないねん。許したってーな」
「まあ、どこもこんなもんだろうし気にしてないよ」
エリザベスはノロイ達と戦った時のことを思い出していた。あいつら人気なかったなと。
『さあ、互いに持ち場に着きました! それではデュエルスタートッ!』
司会のお姉さんがデュエルの開始を告げると会場の空気が変わった。真剣に、食い入るように、無我夢中に観客たちはふたりをみつめる。これから起こる激闘を期待しているのだ。先ほどはエリザベスに対してブーイングを行った観客のドライアドたちだが、エリザベスが弱いから嘲笑っているわけではない。
エリザベスが強いというのが伝わってくるからこそのブーイングである。
しかし、どんな強者が相手であってもこの国最強のデュエリスト――ルナフレイムが負けるとは思っていない。勝つと信じているのだ。ただこの緊張感は最高のスパイスである。勝利した時の多幸感は何倍にも膨れ上がってくれるだろう。
「先行はウチがもらうで」
ルナフレイムが最初の手札を確認した瞬間表情が大きく変わった。満面の笑みを浮かべた。開始直後であるにも関わらず勝利を確信したかのようだ。
「今度こそ勝ちや! ウチが呼びだすのは神ッ!」
『テーテーテテテーテテテテテ、テーテーテテテーテテテテテ、テーテーテテテーテテテテテ』
謎のBGMが会場にこれでもかと鳴り響いた。




