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43開脚目

「で、さあ……」


 なにやら看守ドライアドは気になっていることがあるようだ。少し好奇心旺盛な瞳をエリザベスへと向ける。


「どったの?」


 キョトンとしたような顔のエリザベスは、質問するようにと看守へと促す。

 

「どうして牢屋送りになるような悪さしたの?」


 ドライアドからの質問だ。エリザベスはどうこたえるかをまともに考えずにストレートにこたえることにする。


「わたしは悪さをしていない。気付いたらここにいた。そして美しきあなたと出会った」


 エリザベス視点ではまさにこれであった。悪さをした覚えが全くないのだ。気付いた時にはここにいて、美人なドライアド看守がいる……ぐらいの認識である。このとき少女漫画風の謎ポーズをしたかったのだがグルグル巻きにされているので出来ない。


「はいはい、お世辞いっても無駄だからね? おかず一品増やしたりしないからね? もーっ、ホントッおばんそっくりなんだから!」


 おばんはおかずを強請る手段としてお世辞をいうのか。それにしても何者なのだそのおばんとやらは。


「本当に美しくて見惚れてしまって大変なんだから。あなたとずっと一緒にいたいくらい。毎日にあなたにごはんを食べさせてもらいたい」


 そういうといつの間にかグルグルと巻かれていた拘束から抜け出し、鉄格子越しに看守ドライアドの両手を自らの両手で優しく掴み、うっとりとした表情でその両手を自らの頬へと当てるエリザベス。


 本当に見惚れていますという顔そのもののエリザベス。その表情には一切の嘘偽りはなく、心のままをうつしだしている。


「ぽっ」


 そんなエリザベスに逆に見惚れてしまう看守のドライアド。それでいいのかという状態ではあるがなんだか良い雰囲気である。


「……って! また抜け出してるじゃない! だめっていってるでしょ。そうやって油断させてから脱獄するつもり?」


 そういうと看守ドライアドはもう一度グルグル巻きにするのだが、いい加減にエリザベスには効果がないことを気付くべきである。そもそもどうやって拘束から抜け出しているのかも看守ドライアドに考えてほしいものだ。


 エリザベスはその圧倒的ステータスによる力技でその拘束道具を破壊し抜け出すことが出来る。しかし、今回は拘束するための道具が破壊されてはいなかった。また、身体を透過させることで抜け出すこともできるが今回はそれも行っていない。


 ではどのようにしてエリザベスは拘束から抜け出すことが出来たのか? 答えは実にシンプルなものであった。


 それは脱臼である。脱臼とは関節を形成する骨同士の位置が正常ではない状態である。靭帯、軟骨、骨が損傷するものであり、激痛が伴うため常人ではその痛み耐えることができず泣きだしたりするものである。後遺症すら残る可能性があるにも関わらずエリザベスは顔色一つ変えずに平然とそれをやってのけたのだ。


 この脱臼というのはゲームでは初歩の初歩のバグ技であり、それと同時に簡易的すぎるためバグ技ともいわれていなかったものである。しかし、初歩といっても侮ることのできる技術ではない。極めることによりどこぞのゴム人間のように身体を伸縮することが可能であり、その攻撃範囲の広さは脅威となる。そして伸縮した身体には短くとも一定の無効判定があったりして防御性能も高く、完全とはいえないがゲーマーを唸らせる良さがある。


「おまえらなにやっとんのや?」


 二人の幸せ空間エリザベスにとってのに乱入者がその空間を切り裂くように突如として現れた。その幸せ空間がズタズタに破壊されたことによってエリザベスは怒りに満ち全身を振わせ、その瞳、そして全身に可視化するほどの膨大なオーラを身に纏う。


 乱入者の正体は、関西弁のような独特な話し方のルナフレイムである。この者がエリザベスを怒り狂わせた張本人である。


「こっ、これは姫様! このような場所によくぞおこしくださいました。あの……どういった御用件で?」


 看守が丁寧にルナフレイムに挨拶をする。こう見えてもルナフレイムはこのドライアドたちのお姫様なのだ。


「うむ、この者と今一度闘うんや」


 いきなりの決闘宣言である。エリザベスに完膚無きまでに叩きのめされていたはずのルナフレイム。ストロング駄々っ子スタイルをしたうえ逃げ出したはずのルナフレイム。根性があるのかないのやら……。


「え……まだやるの?」


 再度デュエルの申し込みをされ困惑するエリザベス。それもそのはずだ。一度は自ら逃走した張本人が闘うというのだから。


「あの時は……ほんまにすまんかったっ! 約束も破ってすまんかったッ! もう一度……ほんまにもう一度だけ……これで勝負をしてほしいんやッ!」


 その言葉と共に土下座をするルナフレイム。そこまで本気ということである。王族であろうと頭を下げてきたその姿には考えるところがある。


「ちょッ……姫様! おやめください!」


 必死に制止する看守ドライアドだが、その制止もルナフレイムには通用せず土下座をやめない。


「わ、わかった! ただし、今度こそ約束は守ってもらうし、追加で他の約束もしてもらうわ」


「おおきに。もちろん今度は約束は守る。ほな、デュエル場ではじめよか」


 エリザベスに再戦を了承してもらいようやく顔をあげ、土下座をやめ立ち上がるルナフレイム。それに呼応し、今度は力技でグルグル巻きの拘束を引きちぎり解除したエリザベス。ふたりは共に歩き、デュエル場へと向かっていった。

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