39開脚目
「はっはっはっ! まいてやったぞ! たいしたことないやんけ、魔王軍だの人間だの所詮ドライアドの前では無力やで! かっかっかっ!」
カードゲームでボコボコにされ、さらに何度駄々をこねて再戦してもボコボコにされた者のセリフとは思えない言葉である。全力で逃走しておいてこの台詞が吐けるのは尋常ならざるメンタル強者ではある。
それにルナフレイムは姫である。しかし、とても姫とは思えぬほどの性格の悪さあるいは意地の悪さである。見た目だけは美しく姫代表といってよいのだが……。その美しさでわがままも許されてきたのだろう。わがままなのはその人々を虜にするわがままボディだけにしてほしいものである。
エリザベスもまた姫である。しかし、この世でトップクラスの変態である。性格は悪くはなく見た目も美しい……しかし、変態代表といってよい存在である。国民人気で変態すら許されてきた。むしろ華麗なM字開脚を披露したことによってM字開脚ブームを作りだすほどのインフルエンサーであり肯定的な人々のシンボルである。いったいこの世界の人間たちは何を考えているのだろうかと問いたくなるほどだ。
「しかし、まあ何で人間が魔王軍やってんねん。ほんま不気味やわあ(腹立つわーデュエルめっちゃ強いやん)」
ルナフレイムはぼそぼそと独り言を続けるのだが、そのルナフレイムはデュエル場からなかなか離れた木の中にいた。そして木の中の壁にある謎のボタンを押した。
「ここがわかるんならほんまたいしたもんやで。はっはっはっはーっ!」
ボタンを押したことによって床に地下への隠し階段が出現したのだ。その階段を笑いながら下りていくルナフレイム。勝利を確信した者の笑みであった。コツリ、コツリとヒールの高めの靴音を立てて歩いていくルナフレイム。階段を下りた先には……。
マップを見ながら全力疾走のエリザベス。面倒なので木々を薙ぎ倒していきたいところだが魔王軍に入ってくれるかもしれない者たちがいるところなのでそこは配慮しつつ駆けていく。
そうして辿りついた大木がある。この中にルナフレイムがいるとマップが示してくれている。からだを透過させ木の中に侵入するエリザベス。
しかし……。
「あれ……? だれもいないじゃんッ!」
そうなのだ、マップで示された場所には誰ひとり存在しなかったのである。そのため何度もマップを確認するエリザベス。
「やっぱりここにいるわ。隠れてないで出ておいでー?」
エリザベスの呼びかけに対して虚しく静まり返る空間。それもそうだ、エリザベス以外は誰もいないのだから。
しかたがないのであたりを見渡すエリザベス。するといかにも怪しげなボタンをみつける。
「押してみよう。ポチッとな!」
罠かもしれないが恐る恐る押してみた。しかし、何の反応もない。何の反応もないので行き詰まるエリザベス。すこしの間、顎に手を当てながら思案する。
「あッ!」
何かよさそうなことを考えたエリザベス。表情が一気に明るくなる。
「そうねえ、マップがあのドライアドを示しているんだからこの位置にいるのは合っているはず。つまりはこの下か上にいるはず!」
位置は合っているが高さが合っていないことを導き出したエリザベス。
「よしッ! 〈スリップ・スル―〉」
スキルを発動させ器用に床をすり抜けるエリザベス。先に下から調べてみるつもりのようだ。
「なッ! ほえー」
エリザベスは地下の階段を見つけシンプルに驚いてそして感心した。とても立派な階段であり手のこんだものだったからだ。見事に人為的な造形物であり、自然を愛するドライアドの趣味とは思えない代物であった。
この階段を下っていけばドライアドの隠れ家があるに違いないと確信に至るエリザベス。一歩一歩慎重に階段を下りていく。
階段を下りていく中、侵入者撃退用の矢など古典的なトラップと出くわしたりもした。そしてそのトラップは下へ下へと進んでいくほどに苛烈さを増していった。
ビュンッ!
「あだッ!」
謎の快音と共にエリザベスのこめかみに痛みが走った。思わず声を出して痛がるエリザベス。どうやらエリザベスはトラップのひとつに引っ掛かってしまったようだ。
「ちょっ、なにこれ! なんでこんなものがここに」
エリザベスは自信にダメージを与えたと思われる装置トラップをみつけ驚いた。
「ドライアドさん、殺意ありありやばすぎでしょ。レーザービーム発射装置みたいなの置いてあるんですけど」
それはセンサー式でありとても現代的なモノである。エリザベスのこめかみをピンポイントで撃ってきたものだ。エリザベスではないただの一般人であれば脳を打ち抜かれ即死していたことだろう。そもそもぴんぴんとしているエリザベスの防御力がすごいのだ。
そんなこんなでトラップを次々とやりすごし階段を全て下り出口(立派な装飾が施されたばかでかい扉)にまでエリザベスは到達した。
そうしてその扉を開け、その先の景色をみて思わず息をのむエリザベス。
「なんだ……これ……どうなっているんだ……」
エリザベスが驚愕の色を隠せないほどの光景が眼前には広がっていたのだ。




