22開脚目
運命の出会いというのは一体なんだろうか。あんなにもみっともなくバリアに挟まった姿の時が運命の出会いなのだとしたら世の中の運命の出会いというものはちゃんちゃらおかしいといいたくなる。
「あれも確かに運命の出会いであったな……」
「ん……? あれもってことはバリアに挟まってたところの出会いじゃないの? それなら前に会ったことがあるっていうの?」
魔王の回答はエリザベスが予想だにしないものであった。おそるおそる以前に会ったことがあるのかを問うエリザベス。そんなはずなどないと思いたい故の問いだ。
「あれは何年も前のことだ……わたしは弱く何も持っていなかった……そんなわたしはある時人間たちに捕まってしまったんだ。そのままわたしは牢屋に入れられ売り飛ばされそうになっていた」
――そんな過去があったなんて。
「いや、魔王を売り飛ばそうとする人間は悪そのものなんだけど。そりゃ人間滅ぼそうってなるわ」
魔王は私怨で人間たちを滅ぼそうとしていたのも頷ける過去だ。謎多きカリスマのことをほんの少し知ることが出来た。
「そんな売り飛ばされ奴隷にまで身を落としそうになっていたとき、救世主は……天使は舞い降りたのだ……」
「え、なにそれ、天使いるのこの世界?」
このタマンネリアの世界のなぞには興味津津のエリザベス。すかさず天使についての質問をする。正直にいうと魔王との出会いなんてどうでもよくなりかけていた。それほどまでに天使が琴線に触れたのだ。
しかし、魔王が天使などと言うのはいかがなものか。それは「敵ではないんですか」と突っ込みたくなってくる。
「ああ、いる……目の前に……」
「ん……? どこお?」
目が点になりながらもあたりを見回すエリザベス。
「本当はお気づきなのだろう? 貴女だ、愛しのエリーっ!」
「え、あっ、ふぁーっ! なぜにーっ!?」
ちょっともじもじしながら魔王は答えを教えてくれた。それに対しまたしても冷静さを欠きながらもなんとか理由を尋ねることができたエリザベス。またしてもエリー呼びされているのだが気づくことさえできなかった。
「貴女が率先して行った奴隷売買の撤廃で救われたのだっ! まさに恩人、まさに天使っ! わたしはあの運命の出会いを忘れない。きっと神が遣わしてくれた天使なのだろう貴女は」
今度は神が出てきた。本当にこの人、魔王なのだろうか。魔王も神を信仰するのだろうか。
エリザベスはそんなことしたことがあるのかと自らの記憶を遡ってみると確かに昔の記憶がよみがえってくる。
――あー、はいはい、そんなことしてましたわー。
エリザベスは別世界でキング・オブ・ニートをしていた男の記憶が出てくるまでは善行ばかり積んでいたのだ。だからこそのあの国民人気だ。
エリザベスはタマンネリアというゲームを通常プレイする人からみた場合、ヒロインでもなければ、真の仲間でもなく、ただのポンコツである。勇者たちのような才能がなかったのだ。ゲーム開発側に弄ばれた哀れなキャラクターといっていい。まるで開発途中でヒロインから変更され、仲間から除外されてしまったような……。それでいて真のヒロインさんの方は異物感しかないアイツときたもんだ。
だが、落ち込むことばかりではない。真のセクシー担当はエリザベスだ。なんのフォローにもなっていないのだろうが……。
「ま、まあ、今のあなたが無事ならそれでよかったじゃない。で、でも人間たちを滅ぼそうとするなんてちょっと過激すぎじゃない?」
「なにをいうかっ! 奴は貴女を冷遇した……それだけで滅ぼすには十分だ」
「奴って?」
「貴女の母上――女王だっ!」
――あーっ、もう、ほんとあの糞女王は碌な事しないんだから。
女王が碌な事をしないというのゲームをプレイしていた者なら皆知っている、いわゆる周知の事実である。碌な事とはなにか。それには奴隷売買すら含まれており、自国他国問わず貴族や大商人たちと悪の限りを尽くしていた。
「ん? ちょまてよ。それより『貴女を冷遇』って、わたしを冷遇したから滅ぼすってこと?」
「うむ!」
満面の笑みで即答する魔王。良い笑顔で言わないでと思うエリザベス。
最悪な形で最悪の答えを得てしまったエリザベス。壁ドゥーンされながらそんなことききたくなかったのだ。
物語のラスボスが人間たちと敵対し、ラスボスとして存在しているのは女王だのエリザベスのせいではないかということを知りたくはなかった。




