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16開脚目

 イデアルがテニスをするためにどこかへ行った後、エリザベスは魔王の自室にいた。そしてエリザベスは自信に満ちていた。それもそのはずだ。なぜなら……。


「魔王様っ! イデアルの様子がおかしいのっ! 何か心当たりありませんか? お助け下さい」


 そうなのだ。エリザベスの策……それは魔王に聞くというものだ。正直自分の手に余ることだったので他でもない魔王に頼んだのだ。シンプルかつ楽な方法であって、己自身のメンタルを守る最強の盾。自分ひとりで抱え込まないということ、これ大事。社会において、仕事において報連相に通じるものでもある。


 ぶっちゃけ丸投げにも近いものだが、イデアルがおかしくなったのは魔王城に来てからというものなのだから理に適っているだろう。


「な、なるほど、そそそのようなことが起きたとは……。ここここここここここここここここ心当たりはないがちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ調査をしてみよう。ところで様子がおかしいとは具体的にどのようなものか?」


 なにやら動揺した様子の魔王。どうやら疚しいことでもあるようだ、と勘繰りたくもなるものだ。


「イデアル、魔王城に来てから急激に太りだしたり、かと思えば急激に痩せてお嬢様みたいになっていきなりテニスをし始めたり……」


 エリザベスはイデアルについて丁寧に説明した。イデアルは急激に体型も人格も変わりすぎているのだ。これは流石に心配してしまうものである。


「なるほど、それは確かにおかしいな。こちらもイデアル殿に直接お話をきいてみよう」


「ありがとうございます、イデアルのことをよろしくお願いします」


 魔王が快く引き受けてくれて安堵したエリザベスなのだが、魔王の様子もまたなかなかにおかしいものであった。そのため魔王の動向にも目が話せないエリザベスである。




 魔王のいた部屋を後にしたエリザベスは、魔王に用意してもらった部屋に戻ってきており、今後について考えていた。まずは魔王城を出てからのことを考えたかったのだが、イデアルが心配でそうもいかなかった。今後といってもイデアル中心のことを考えていたのだが、その最中何者かがドアをノックしてきた。


「はーい」


 ついつい返事をしてしまいながらドアを開けるエリザベス。そこには思いもよらない人物が立っていた。


「ちょっとあんた、いつまで居候してんのよっ! はやく出ていきなさいよ」


「ご、ごめんなさい。リリィちゃん」


「魔王様に気に入られてるからってあんまり調子に乗らないでちょうだい。あ 、た、しの魔王様に色目使わないでくれる?」


「そんなつもりはないの……」


「この魔王軍四天王のひとり、リリィ様の言うことがきけないっていうのしら?」


 そう、リリィとは魔王軍四天王デュアルのリリィだ。その強さはタマンネリアというゲームをしていた者なら皆知っている。はっきりいって魔王より強かった。なぜなら基本ステータスが魔王以下であっても、平然とハメ技を使用してくるのだ。これによってクリアを諦めた者もいるほどだ。


「そ、そんなことは……」


「とりあえず部屋に入れてもてなしてちょうだい。あたし喉が渇いたわ」


「は、はいっ」


 ズカズカとリリィはエリザベスの部屋に侵入し、ふかふかで座り心地のよさそうな椅子に座り、急いで用意させた紅茶を一口口に含むとこう言い放つ。


「不味いわね、まったくどこのよ、こんなもの。犬のしょんべんみたいねっ」


 リリィ様は犬のしょんべんをいただいたことがあるのだろうか。

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