13開脚目
「ますたー、おかわりっ!」
「『ますたー』じゃなくて料理長な、はい、お待ちっ!」
「ばりばり、むしゃむしゃ、ごっくんくんっ! ますたー――」
「――ちょっ、もう食材ないよ……」
ますたーもとい料理長はすでに限界を迎えなおかつ食材もなくなってしまった。
「馳走になった、うまかった、感謝」
「あいよー……」
そう言うと料理長は音を立てて倒れてしまう、他の料理人たちに運ばれ医務室に向かっていった。その医務室は、イデアルがエリザベスと一緒に魔王城に来て倒れていたら運ばれていったところである。魔王城の人たちはとても丁寧でやさしくエリザベスの国とはえらい違いだ。といってもだいたい悪い人は女王なのだが……。
そんなこんなでエリザベスと別行動となったイデアルだが、魔王軍の尋問前にお腹からぐーぐーと爆音がしたので医務室から食堂に移りごはんを御馳走になっていたのだが、ついつい魔王軍の食糧庫に大打撃を与えてしまったのだ。
「んー、ザベスどこやー」
「まてまてまて、お譲ちゃん。なんで魔王城の外で倒れていたんだ?」
ご飯を食べ終えたら早速尋問がスタートした。魔王軍の人たちはずっと待っていてくれたのだ。とっても優しい。
「ザベスと飛んできた」
「ザベス? 君の名は?」
「ザベスは我を倒し者。我は竜王イデアル」
「なっ! 竜王様だとっ? それにザベスは竜王様を倒した者だと? 凄すぎて信じられんが魔王様に報告せねば。一緒に来てもらえるか?」
「うむ、よき」
「魔王様、失礼します。竜王を名乗る重要参考人を連れてまいりました」
「うむ、入れ」
エリザベスと魔王がいる部屋へとイデアルと先ほど尋問していた者が入室してきた。イデアルのことを報告し、正体を確認するためだ。魔王自体が正体を見破るスキルや魔法を持っているようだ。
「魔王様、この者が竜王を名乗る者なのですが確認をお願いします」
「うむ、〈アナライズ〉」
〈アナライズ〉はステータスなどを確認することが出来る魔法スキルだ。魔法とスキルを掛け合わせた高度なものである。タマンネリアの主人公の仲間の大賢者も使うことが出来るが、勇者はまだ大賢者と出会う前にエリザベスにボコボコにされてしまった。このまま大賢者と出会うことはないのだろうか……。
「ふんっ」
「〈アナライズ〉は弾かれてしまったか……つまりこちらより強いということか」
「我はつよいぞ」
「ちょっ、イデちゃんそれだと竜王だっていう証明にならないでしょ」
「んー、なら元の姿を見せる」
「なら地下闘技場に案内しよう、あそこは広い」
「ふんっ」
魔王に連れられ地下闘技場にやってきて早速元の姿に戻るイデアル。圧巻の姿である。でかい……多くの人々がそう思うだろう。エリザベスはそんな巨大なイデアルが存在しても狭いと感じさせない魔王城地下闘技場のほうに見惚れていた。
「はじめて来た……すごい」
エリザベスはゲームタマンネリアで来ることができなかった闘技場に感動している。口に出してしまうほど感動してしまっている。まるでここ以外の魔王城のことを知っているみたいな口ぶりになってしまっている。
「すごい、竜王様に会えるなんて……」
魔王軍の者は感嘆の言葉を漏らす。本来は会うことが叶わぬ存在だから無理もないだろう。まず竜王は強すぎるということは魔王側も理解しているようだ。
「竜王様、疑って申し訳ありませんでした。あなたがエリザベス殿とこちらの来られたのですね?」
「そうじゃ、我は宝探しの旅にな、ザベスと共に来た。良い宝を持っていそうな魔王を滅ぼそうと考えたが、マスターやここの者たちに良くしてもらったゆえにそれは出来なくなってしまった」
マスター……つまりは料理長のことだ。良い仕事をした一流の料理人である。彼の功績は後世まで語り継がれることとなる。
「ザベスだと……。竜王様と戦えばこちらの国が滅びるのは必定。戦わずに済むのはありがたい。宝の件はすでに訊いているのでお好きな物をお渡ししたい」
少し魔王の顔が引きつった気がした。イデアルのために魔王と先に交渉していたエリザベスのおかげでスムーズに事を運べた。
「話がはやくて助かる。でもザベスはよいの?」
「正直さ、糞女王の言うことはきく必要が全くないんだよね。だから魔王と争う必要はない。あっ、でも人間と戦争してもメイド服を着ている女の子だけは殺さないでくださいね魔王殿?」
イデアルに話しかけられ魔王との争いが必要ないことを伝えるエリザベス。しかし、メイドさんだけはなんとしても守ろうとするエリザベスなのであった。メイド命。
「ああ、善処するエリザベス殿。と、ところでエリザベス殿は竜王殿と親しいのだな?」
「一緒にいる時間は短いんだけどもう仲間だね」
「ぽっ」
エリザベスの言葉にわかりやすく照れるイデアル。その時、ほんの少しピリッとした空気がどこからか流れた気がした。




