10開脚目
イデアルは大の字になって倒れている。そんななかエリザベスは魔王城の侵入口を探していた。
「あった、あった、ここの歪みはゲームのときと同じなんだな、感心したわ」
魔王城は特殊なバリアで覆われており、そのバリアを突破するため本来であれば特殊な珠を複数集めなければならない。しかし、珠がなくても侵入可能なゲーム通りの裏ワザ侵入経路が存在して感心・安心するエリザベス。だが……。
「なぞの飛行物体が城に向かって飛んできたとの報告があった。その飛行物体を探し出すのだ!」
「はっ」
城の警備にあたっている者たちにばっちりエリザベスたちは気付かれてしまっていた。これはゲームとの大きな違いだ。気付かれるものなのかと困惑するエリザベス。見つかる前にこっそりと隠れるエリザベス。しかし……。
「なんだこいつは?」
「隊長、謎の女が大の字で昼寝をしています」
「なあにい? 天下の魔王城前で昼寝だと? 不届き者めっ、連行するぞ」
「隊長、すごい具合の悪そうな顔してますよこいつ?」
「なあにい? 怪我人・病人はマニュアル通り丁寧に運べ。重要参考人シールと通行許可シールを額に張っておくんだぞ」
「はっ、了解であります」
そのまま魔王軍の者たちにイデアルは連れ去られてしまった。通行許可シールがないとバリアに弾かれるのだがエリザベスはそのことをゲームで知ることはなかった。具体的にそのような情報はゲーム上開示されていなかったのだ。これもゲームとの違いだろう。ゲームでは珠によるバリアの破壊が正しい突破方法である。
「えーっ!」
思わず目の前の光景が信じられず大声を出してしまうのだが、冷静になり自分の手で口を塞ぐエリザベス。
「誰かいるのかー?」
「……」
声のせいで誰か来てしまったがいないふりをするエリザベス。
「気のせいか」
声を聞きつけた者はなんとか引き下がってくれたようだ。そのままバリア内である魔王城へと入って行った。
「あー……俺もイデアルみたいに運ばれていけばよかったんかな……でもあれ牢屋スタートっぽいしな」
そういうと歪みにすっぽりと挟まり魔王城へと侵入を試みる。
「あ、けっ……ケツが抜けないっ!?」
ぷりっとしたケツが大きく挟まってしまった姫騎士さんは、壁に挟まった女騎士ならぬバリアに挟まった姫騎士になってしまった。ゲームでは主人公であるノロイであればケツが挟まらずすんなり通ることが出来た。エリザベスは、ゲームではラストダンジョンである魔王城にいくころにはとっくにパーティメンバーから追放されていたため確認不可能だったものである。
「あっ、あかんっ! これ犯されるやつやっ」
態勢が素晴らしい状態にあるのはいうまでもないことだが、女騎士が、姫騎士が壁に挟まるということが重要である。
急にセクシーな表情をし始めるエリザベス。そして……。
「くっ、殺せっ!(あーこれ言ってみたかったんだよ)」
魔王城内に侵入したいのであればそもそも〈スリップスルー〉で透過してしまえばよいだけではあるのだが、せっかくの歪みを利用しないわけにはいかなかった。ゲーマーの血が邪魔をしたのだ。また、〈スリップスルー〉は高度すぎて疲れるのだ。M字開脚で100メートル全力疾走ぐらい大変である。この世界でもその疲労感は凄まじくあまり使用したくないのが本音である。
「おいっ、そこで何をしているっ? おっ、おまえはっ!?」
「しまった、見つかっ……って魔王ううううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!?」
どうやら飛行物体の知らせを受けた魔王様直々に来られたようだ。魔王は女性かと見紛うほどの絶世の美男子であり一発で“魔王”だとわかってしまう絶大なオーラを放っていた。




