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第三話:悪役令嬢ソフィア・スノウハイヴ

【業務連絡!】

感想がいつの間にか400件を突破!

作者の感想返しの打率は95%以上あるので、もしよかったら何か一言でも書いてみてください!


 予期せぬ悪役令嬢との邂逅(かいこう)を果たし、お手洗いを済ませたルナは、いつになく真剣な表情で元来た道を戻っていく。


(まさかソフィアさんが、私と同じ悪役令嬢だったなんて……っ。彼女の『悪役令嬢レベル』が、どれくらいのものかわからないけど……。見たところ基礎スペックはかなり高い……ッ)


 現在判明しているソフィア・スノウハイヴの情報を、頭の中でザッと洗い出す。


(明らかに何か秘密を抱えていそうな独白(どくはく)・公爵令嬢という恵まれた地位・絵に描いたようにクールビューティな容姿……くぅ、羨ましい……ッ)


 ルナの求める『境遇(シチュエーション)』・『家格』・『容姿』、ソフィアはその全てを兼ね揃えていた。


(……いや、結局のところ一番大切なのは、『どれだけ悪役令嬢ムーブができているか』! 所詮上辺(うわべ)だけの悪役令嬢じゃ、今までたくさん勉強して、妄想(れんしゅう)を重ねてきた私には(かな)わない!)


 両手でパチンと頬を打ち、ぴしゃりと頭を切り替え――ローたちの待つ自室へ戻る。


 その後、脱衣所で水着に着替えたルナたちは、貴重品を入れた小さな鞄を持って、神国聖女学院前の専有ビーチへ移動。

 するとそこには、潮の香りを含んだ涼しい風・キラキラと光る白い砂浜・見渡す限りのエメラルドグリーンの海、風情(ふぜい)(あふ)れる夏の景色が広がっていた。


「うわぁ、綺麗……!」


 ルナは青い布地のシンプルなビキニ、腰には海と太陽をイメージした水色とオレンジのショートパレオを巻いている。


「この海を独占できるだなんて、贅沢な話だねぇ」


 ローは大人っぽい黒のフロントタイビキニ、日差しから肌を守るため、薄手のパーカーを羽織っていた。


「まるで南国のリゾートへ来た気分ですわ!」


 サルコはワインレッドのホルターネックビキニ、遠目からでも非常によく目立つ、威風堂々とした彼女らしい水着だ。


「ふふっ、サルコさんったら……。神国はれっきとした『南国のリゾート』ですよ」


 ウェンディは白の布地に赤のラインが入ったビキニ、腰には薄桃のロングパレオを巻いている。


 ちなみに……彼女たちの水着は、夏合宿直前の休日に王都のアパレルショップへ行き、みんなでワイワイガヤガヤと話しながら、楽しく買ったものだ。


 ルナたち王国聖女学院一行が、美しい海に目を輝かせていると――神国聖女学院の一年生副代表を務める生徒が、緊張した面持ちでゴホンと咳払いをする。


「――えーっ、体調不良で欠席したソフィア様に代わって、ここから先は私が、夏合宿の案内役を務めさせていただきます」


 そうして友好を深めるためのレクリエーションが始まった。


 まず最初は、両学院対抗のビーチバレーだ。


 ルナはローとチームを組み、神国聖女学院のコンビと対決する。


「――ルナ、行くよ!」


 ローが柔らかいトスを送り、ルナが天高く舞い上がる。


「そーれっ!」


 音速を超えた聖女様の右手は、ボールの中心を正確に穿(うが)ち――『ズバァンッ』という凄まじい破裂音が鳴った。


「……あれ、割れちゃった」


「もう、せっかくのチャンスだったのにぃ」


「ごめんごめん、次はちゃんと決めるね」


「ほんと頼むよー?」


 ルナとローは仲睦(なかむつ)まじく笑い合っているのだが……対戦相手の二人は、それどころじゃなかった。


「今……スパイクを振り抜いた腕が、まったく見えなかったんだけど……っ。というかそもそも、ボールって普通割れないよね?」


「う、うん……。それになんかちょっと焦げ臭い……。もしかしなくても、あのボールの残骸……燃えてない?」


((……もしあんなのが、私の顔に当たったら……っ))」


 彼女たちの脳裏に、悲惨な光景が浮かび上がる。


「あの……私、棄権します……!」


「わ、私も……! ちょっと体調が優れないので……すみません……っ」


 ルナの『殺人スパイク』に命の危機を感じた二人は、揃って棄権を申し出た。


 白熱のビーチバレーが終わった後は、スイカ割りだ。


 砂浜の上に、氷の魔石でキンキンに冷やしたスイカを置き、挑戦者であるウェンディに黒い目隠しをする。


「な、なんだかドキドキしますね……っ」


 胸を高鳴らせる彼女のもとへ、ローとサルコの手が忍び寄る。


「そーれっ!」


「さぁさぁ、いつもより多く回しておりますわよぉ!」


「えっ、うっ、わぁ……っ」


 グルグルグルグルとその場で高速回転するウェンディは、三周・五周・十周と回ったところで、ようやく解放された。


「お、おっとっと……っ」


 彼女は木の棒を持ちながら、前後左右にたたらを踏む。


「ウェンディさん、右です、右ーっ!」


「んー、もうちょい左かなー?」


「そう、そのまま! 前進あるのみですわー!」


 ルナ・ロー・サルコの指示を受けながら、覚束ない足取りでひょこひょこと進んで行き――。


「――えいっ!」


 勢いよく振り下ろされた木の棒は、スイカの中心を正確に叩いた。


「「「おぉー!」」」


 歓声が()き、目隠しを取ったウェンディの前には、パッカリと割れた赤いスイカ。


「ぃやった!」


 彼女は満面の笑みを浮かべ、嬉しそうにギュッと拳を握った。


 それから少しして、取り分けたスイカをみんなでいただく。


「んーっ! 甘くておいしい!」


「これ、キンキンに冷えてるね」


「まっこと美味(びみ)ですわぁ!」


「みんなで食べると、いつもよりおいしく感じますね」


 スイカ割りを堪能した後は、シュノーケリングを行う。


 神国聖女学院が夏期の授業で使用する、マスク・シュノーケル・フィンなどの装備一式を借り――水深の深いところへ移動して、ゆっくりと潜っていった。


(お、おぉ……っ)


 色鮮やかな魚の群れと美しいサンゴ礁、ルナは『水中世界の神秘』に目を奪われた。


 そうして一通りのレクリエーションを楽しんだ後は、神国聖女学院が管理する海の家に行き、みんなで一緒にお昼ごはんを食べる。


 ルナは甘口のカレーライス、ローは海鮮焼きそば、サルコは豚骨ラーメン、ウェンディはオムライス、それぞれが思い思いの品を頼み――。


「「「「――いただきます」」」」


 両手を合わせて食前の挨拶。


「んーっ、おいしい! 海で食べるカレーって、なんでこんなにおいしいんだろう!」


「麺モチモチ、海老ぷりぷり、ホタテあまっ……ここの海鮮焼きそば、レベル高いね!」


「たくさん動いた後にはやはりこれ――『濃厚豚骨背脂ラーメン』! 背徳感のある味が、体に()みわたりますわぁ!」


「このオムライス、ふわとろ卵でとってもおいしいです」


 昼食を食べた後は、陽が暮れるまで自由時間となった。


 午前中のレクリエーションで空気が温まったおかげか、両学院の活発な交流が随所(ずいしょ)で見られる。


「王国聖女学院の先生方は、みなさん強面(こわもて)ばかりなんです……。ほら、引率のジュラール先生なんて、明らかにもう何人か()っているお顔でしょう? 本当はとてもお優しいんですけどね」


神国聖女学院(うち)って超詰め込み型の教育でさぁ……。予習・復習・宿題・宿題・宿題……もう嫌になっちゃう。明日以降の合宿、マジで覚悟しといた方がいいよ?」


「まぁ、そんなに素晴らしい許婚(フィアンセ)が……!? もっと、もっと詳しく聞かせてほしいですわ!」


 両学院の特色・夏合宿の情報・定番の恋バナなどなど……。

 うら若き乙女たちのお話は、留まるところを知らず、あっという間に時間が過ぎて行き――早くもお開きの時間となった。


「あー、今日は本当に楽しかったなぁ……」


 満足気なルナはグーッと伸びをし、


「こんなに遊んだの、何年ぶりだろ」


 苦労人のローはしみじみと呟き、


「楽しい時間というのは、一瞬で終わってしまいますわね」


 サルコはどこか(はかな)い笑みを零し、


「ほんと、『体感5分』ですね」


 ウェンディは冗談交じりに感想を述べる。


 優しい夕陽に照らされながら、各々が自室に戻る準備をしていると――ルナの手がピタリと止まった。


「……ん……?」


 持参したハンドバッグの中に見慣れないモノを見つけたのだ。


(なんだろこれ……手紙……?)


 無地の便箋(びんせん)、その裏を見た彼女は――「ハッ」と息を詰まらせる。


 差出人はソフィア・スノウハイヴ。

 自分とキャラがモロ被りしている、『目の上のたんこぶ』からだった。


(悪役令嬢と悪役令嬢は、お互いに惹かれ合うという……。やはり向こうも気付いている、私の正体が悪役令嬢だということに……っ)


 ルナはゴクリと唾を呑み、便箋の中にある手紙を広げた。


 ルナ・スペディオさんへ

 二人きりで話したいことがあります。

 今晩9時、神国聖女学院の生徒会室に来てください。

 ソフィア・スノウハイヴより


(……やっぱり仕掛けて来た……っ)


 突然の先制攻撃、心臓がドクンと跳ねた。


(この世界に悪役令嬢は一人……いいでしょう、そっちがその気なら、受けて立とうじゃありませんか!)


 ルナは固く拳を握り締め、ソフィアとの一騎打ちを決意するのだった。



 自室に戻ったルナ・ロー・サルコ・ウェンディは、必要なものだけを持って大浴場に移動し、今日一日の疲れを綺麗さっぱり洗い流した。

 神国聖女学院の準備してくれた浴衣(ゆかた)に着替えた四人は、そのままの流れで食堂へ向かい、おいしい夕飯に舌鼓(したつづみ)を打つ。


 その後は、22時まで自由時間。

 自室へ戻ったり、敷地内を散歩したり、両学院の交流を図ったり――各々が好きなことをする中、ルナは一人、神国聖女学院の三階にある生徒会室へ向かう。

 事前に本校舎の地図を確認していたため、今回は迷うことなく目的地に辿り着くことができた。


 時刻は20時50分。

 生徒会室の扉の前に立った彼女は、ゆっくりと長い息を吐く。


「ふぅー……っ」


 この扉の先に悪役令嬢ソフィア・ソノウハイヴがいる。

 そう思うだけで、自然と体が重くなった。


(ソフィアさんは……強い。おそらくは『過去最強レベルの敵』だ。でも、私は負けない……!)


 三百年前、魔王城に踏み入ったときよりも緊張しながら、木製の扉をゆっくりと押し開ける。


 燭台(しょくだい)の淡い光が室内を照らし、紅茶の(こう)がほのかに揺れる中――生徒会室の最奥、生徒会長の席にソフィア・スノウハイヴが座っていた。


(……雰囲気抜群、さすがにわかっていますね……っ)


 ルナは警戒を強めつつ、ソフィアの評価を大きく上げた。


 悪役令嬢ムーブにおいて、『空気感(ムード)』はとても大切なもの。

 彼女はそれをきちんと理解したうえで、この厳粛な場をセッティングした――と聖女様は勝手に解釈する。


(やはりソフィアさんは、『わかっている側の人間』だ。油断は禁物、(あなど)れない……っ)


 ルナがカツカツとそれらしい足音を立てながら、生徒会室の中へ踏み入って行くと、ソフィアが静かに振り返った。


「あら、早かったのね」


「えぇ、そちらこそ」


「ふふっ、神国の夜は冷えます。紅茶でも()れましょうか。――さぁお掛けになってください」


「失礼します」


 ルナが来客用のソファに腰を下ろすと、入れ替わるようにしてソフィアは立ち上がり、慣れた手つきで紅茶を淹れる。


「どうぞ」


 長方形のガラス机にカップとソーサーが置かれ、紅茶のいい香りが立ち昇った。


「ありがとうございます」


 ルナはお礼を言いながら、チラリと視線を下に落とす。


(……ストレート、か……)


 聖女様、苦いのが苦手。

 紅茶を飲むとき、ミルクと砂糖は欠かせない。

 しかし今この場で、『ぽちょぽちょざーざーっ』とミルクと砂糖を入れては、せっかくのムードが台無しになってしまう。


(……やるしかない……っ)


 ルナは澄ました顔で、普段なら絶対に飲まない大人の味を――ストレートの紅茶を口に含む。


「……っ(に、(にが)ぁ……っ。でも、これで対等! いや、むしろ一歩リード!)」


 頑張って苦い紅茶を飲むことで、精神的な優位性を確立したルナに対して、ソフィアはとんでもない質問をぶつける。


「ねぇ……もしかしてルナさんが、聖女様だったりする?」


「ぶーっ」


 予想外の一撃(クリティカル)を受けたルナは、口に含んでいた紅茶を思い切り吹き出した。


「ちょ、ちょっと、大丈夫……?」


「す、すみません……っ」


 持っていたハンカチで、口元とテーブルを綺麗に拭く。


(くっ、まさかこんな盤外戦術(ダーティプレイ)を仕掛けてくるなんて……手段を選ばない女、これもまた悪役令嬢……っ)


 言いたいことも聞きたいこともたくさんあるけれど、まずは一つ確認しておかなければならない。


「あの、どうして私が聖女様だと……?」


「……ルナ・スペディオという生徒と出会ったのは、今回の世界線が初めてだからよ」


「……えっ……?」


 一瞬、何を言われたのかわからなかった。


「ごめんなさい。突然こんなことを言われても、ビックリしちゃうわよね……。でも、この話は嘘偽りのない真実よ。とても信じられないと思うけれど……私、『ループ』しているの」


「んなっ!?」


「私は世界で一つだけの特別な力――特異天恵(ユニークギフト)を授かった。まぁこれに気付いたのは、この夏合宿からなんだけどね」


特異天恵(ユニークギフト)ぉ!?」


「えぇ、特異天恵【破滅回避バッドエンド・エスケイプ】、この力は『条件付きの時間遡行』を可能にする。簡単に言うと、自分(わたし)破滅(しぼう)した瞬間、世界の時間が逆行し、とあるポイントへ強制的に引き戻されるの」


「ば、【破滅回避バッドエンド・エスケイプ】……っ」


「私はこの力を使って、既に10回以上もこの夏合宿をやり直してきた。所謂(いわゆる)タイムリープというやつね」


「……タイム、リープ……っ」


 ルナは愕然と震えた。


 悪役令嬢は前世の知識や特別な能力を駆使して、自身の破滅運命(はめつふらぐ)を避けるために様々な行動を起こすもの。

 そしてソフィアの持つ【破滅回避】は、タイムリープという能力は――悪役令嬢作品における『王道の力』。


 実際にルナが愛読する小説『悪役令嬢アルシェ』のストーリーも、主人公が時間遡行(タイムリープ)の力を使って、自身に降り掛かる破滅的な未来を回避していくというものだ。


(ソフィアさんは、アルシェと同じ力を持っている……っ。これじゃまるで、彼女が『本物』みたいだ。でも、それじゃ私は……? 私はいったい、どうなるの……? もしかして、私はただの……偽物……?)


 顔を真っ青に染めたルナが、全身を小刻みにカタカタと震わせていると、ソフィアが心配そうな表情で尋ねてくる。


「ルナさん……? さっきから少し様子がおかしいのだけれど、大丈夫?」


「えぇ……どうぞ、続けてください……っ」


 ルナはありったけの自制心を動員して、なんとか平常心を保ち、ソフィアは話を続けた。


「特異天恵【破滅回避】の発動条件は、自身の死亡(はめつ)。そして私はもう既に10回以上、王国聖女学院との合同夏合宿を繰り返してきた。これが意味するところはすなわち――」


「ま、まさか……っ」


「そう、この合宿は狙われているの。じきに悲惨な事件が起こるわ」


「……そんな大切なことをどうして私に……?」


「あなただけじゃない、これまでたくさんの人に相談してきた。友達にも先輩にも先生にも、ありとあらゆる人に助けを求めて……駄目だった」


 ソフィアは口を真一文字に結び、スカートの裾をギュッと握り締める。


「何度やっても、結果は変わらない。『あの化物(・・・・)』が、全てを壊してしまう、みんな殺されてしまう……っ。もう、大切な友達が死ぬところを見たくない。もう、こんな地獄のような合宿をやり直したくない。もう、いっそのこと……終わってしまいたい……ッ」


 ソフィアの絞り出すような(かす)れ声が、生徒会室に痛々しく響いた。


「最初の挨拶で、私達王国聖女学院に帰れって言ったのは……」


「……(むな)しい悪足掻(わるあが)きの一つね。これまでいろいろとやってきた。……そう、本当にいろいろやってきたの。『首謀者』は突き止めた、『実行犯』もわかっている。でも、何をどうやっても、未来は収束してしまう。私の力では、奴等に勝てない……っ」


 目尻に涙を浮かべたソフィアは、心の声を――嘘偽りのない願いを口にする。


「……私が聖女様の転生体だったら、彼女みたいに『全てを捻じ伏せる絶対的な力』があったら、みんなを助けることができるのに……っ」


 (あまね)(すべ)てを救済する力、神をも恐れぬ最強の力。

 彼女が欲していたのは、そういう物理的な力だ。


 悪役令嬢になりたい聖女――ルナ・スペディオ。

 聖女になりたい悪役令嬢――ソフィア・スノウハイヴ。


 二人はまるで合わせ鏡のようだった。


「今回のループはもう駄目、ここまで来たら奴等の『計画』は止められない。だから、きっとまた死ぬ、私だけじゃない、大勢の人がたくさん死ぬ……ッ」


 ソフィアの悲痛な叫びが響き、その瞳から一筋の雫が流れ落ちる中――我らが聖女様はグルグルと目を回していた。


(ぱ、完璧再現(パーフェクト・ムーブ)……っ。ソフィアさんは今、『悪役令嬢という概念』を完璧に再現している……ッ)


 公爵令嬢という恵まれた地位・悪役令嬢(ぜん)とした美しい容姿・破滅を目の前に奮闘する姿勢、そして何より、特異天恵(ユニークギフト)破滅回避バッドエンド・エスケイプ】というタイムリープの力。


(……か、勝てない……っ)


 ルナは生涯で初めて、肉体(からだ)の芯が凍る『本当の恐怖』を覚えた。


(ソフィアさんは、悪役令嬢になるために生まれてきたような存在、こんな化物に勝てるわけがない……ッ)


 300年前、あらゆる魔族を恐怖のどん底に叩き落とし、大魔王さえ(ほうむ)り去った聖女が、絶望に体を(すく)み上がらせた。


 それほどまでにソフィア・スノウハイヴという少女は、『悪役令嬢』として完成していたのだ。


 悪役令嬢という『アイデンティティ』の喪失、ルナの中で『大切なナニカ』がポキッと折れた。


「……私の悪役令嬢(ゆめ)を……取らない、でぇ……っ」


 彼女はショックのあまり意識を失い――。


「えっ……? ちょ、ちょっとルナさん……どうしたの、大丈夫っ!?」


 突然、泡を吹いて卒倒する聖女様に対し、ソフィアは慌てふためくのだった。

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― 新着の感想 ―
真面目に話を聞けw
[一言] 無敵を誇って来たルナを 指先一つならぬ、口先一つで 失神KOに追い込んだのですから ソフィア最強? (笑)
[一言] アイデンティティ崩壊してて草 そもそもソフィアさんループもの主人公ではあっても「悪役」令嬢ではないのでは……?
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