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Prologue 2 FaceLess

時間にはきっちりしているミヤコは18時45分には指定の場所についていた。

そこは特別サイバーネットワーク集中管理棟。通称CMT(Centralized Management Tower)地上1111メートル(日本最高)220階建ての超高層ビルだ。

このビルでは日本国内の全ての情報が管理されており、全てのサイバー通信機器に対して直接の干渉が可能となっている。つまりここが落ちれば国も落ちるということだ。(しかし世界の列強各国には同じ役割を担う建物がそれぞれ存在しており、また、その全てが日本の技術力によるサイバー保護システムにより守られている)

そこの一階のエントランス前で1人たたずむミヤコはため息を1つ着く


『はぁ。今日は上條先生のイベントだったのに...』


無趣味とされているミヤコの唯一の趣味と言ってもいい読書(読書といっても小型携帯端末からの映像情報、聴覚情報などの複合コンテンツなため、21世紀まで使われていた紙媒体の本による読書とは大きく異なる) その本の有名著者のイベントが今夜控えていたのだ。しかし"政府"からの呼び出しとなってはどちらを取るかは考えるまでもない。

しかしミヤコは緊張を紛らわすためにわざと後悔の気持ちを強める。


そんな無駄とも言える行いをしているうちにミヤコの時計は19時を示した。(この時代の時計は全てが集中的に管理されてるため1つの個体として一瞬のズレもせずに同じ時間を示す)

その瞬間、タワー1階のゲートが開き黒スーツに身を包む推定50代の男性が出てきた。どこの子供に聞いても"偉い人"と言われるであろうその男はミヤコに声をかける


『中森京さん。お待ちしておりました。こちらです』


『ハイ』と一礼してミヤコは男の後ろを歩く。


超高速のエレベーターに乗りちょうど200階につき無言のままに長い廊下を歩き、またも単純な、しかし強固であることは一目でわかるゲートの前にたどり着く。


『デンノウショウ タケナカ サマ。 ケイシチョウコウアンブ ナカモリ サマ。カクニン。ツウコウヲキョカ』


流石に日本の集中管理棟であるだけあり、自分の情報もわずか1秒足らずで発見されてしまうのは、わかっているとはいえ頭の片隅で恐ろしくも思い、ゲートをくぐり部屋に入る。

部屋の中の光景は、"一般的"には天才とされるが、社会に出てからはわずか4年ほどのミヤコの背筋を伸ばすには十分だった。

日本国首席宰相、さらには電脳省大臣。そしてその周りに立つ電脳省職員と思われる男性合わせて6人。 ミヤコが周りを見回し終わった瞬間。男が口を開く。


『電脳省大臣の斉木です。あなたの評判は聞いていますよ、中森君。唐突で申し訳ないのだが端的に申し上げるとあなたの力が借りたい』


自己紹介と要件をわずか10秒のうちに済ませた斉木はミヤコを見つめる。


想像を遥かに超える速さでコミュニケーションが進む状況に困惑しつつもミヤコは挨拶と自己紹介を済ませ、言葉を続ける。


『あ、力と言われましても。何が起こったのでしょうか?』


当然の疑問を投げかける。


『まぁ、そうなりますよね。申し訳ない。急ぎ過ぎました。まずは私から説明するよりもこのビデオをみていただきたい。千歳君。ビデオを』


呼ばれた若い男性(ミヤコには自分よりも若く見えた)は自分の端末を操作し部屋の巨大な壁にビデオが投影された。




ビデオには白塗りの無表情の仮面をつけ、黒いフードを被った人物が、真っ黒の背景に金の鍵と銀の鍵が交差しているようなマークが書いてある壁の前に立ち尽くしている映像が映し出された。


『各国の首脳陣よ。御機嫌よう。』


音声はもちろん加工。言語はどうやら各国送る国に合わせて変更する設定がなされてるらしい。


『突然だが、君たち。帝国時代より争われた我々の醜い世界は限界を迎えたと思わないかい?もっと遡れば紀元前、古代文明期から我々は土地や、資源、労働力を求め争ってきた。しかし、どうだ世界の資源は底を見せ、未開の地など地球上どんなに深いところまで行ってももうありはしない。憎しみの連鎖と言われていた武力による戦争も、地球の資源が尽きたとわかるとなればすぐに終わりを迎え、戦争が世界から姿を消してもう100年が経つ。君たちは求める対象を宇宙へと移そうとしている。しかし、それは愚かだ。私たちは持っている。私たちの手で作り出し、そして無限を秘めているセカイを。 それが、電脳世界だ。』


『どこかのSF映画かと思うかもしれないが、こいつはからかいなんかじゃない...』


どこかビデオの内容についていけてないだろうミヤコの雰囲気を察した斉木が独り言のように、だがミヤコに伝わるようにつぶやく。


『これからの私たち、土地や資源など一切の価値を持たない。これからは情報や、我々人間の思考。それこそ形ないものに価値がつく。世界は今入れ替わる。我々が作った最後にして最高の楽園。電脳のセカイへと生き場所を移そう。まずここに私が建国を宣言する。ただのからかいだと思うな。実際にも私はこうして君たち列強各国の中枢部に対してハッキングを行う情報技術力は獲得している。そして、我々のセカイでの力は形ある世界にも通じているんだ。労働力も土地も持たない我々が世界を滅ぼすことなんて簡単なんだ。この映像も一週間後に全世界へと中継する。必ず我々への賛同者は出る。賛同者はもちろん迎え入れる。もちろん君らも歓迎だよ、首脳陣よ。まずは神の失敗作である世界を終わらし、私が神に成り代わりセカイを作る。


国の名はFaceLess


信じていただくためにまずは一国を落とす。』



言葉はない。こんな映像一回で信じろという方がおかしい。しかし、周りの状況と空気がおふざけでないことをミヤコに伝えていた。

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