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猟奇的な残骸

今回はややグロ注意です。

「他に危険がないか、全ての部屋を改めよう」


 オークの死体を外に出し終えると、オーウェンが提案した。

 

 最初に突入した部屋は安全が確認できたので、室内に全員が揃っている。

 今度も希望者が集められて行動を開始した。


「――な、なんだこれは!?」


 仲間の一人がどこかで叫び声を上げた。


 声のした方へ向かうと、動物の骨や肉のような何かがぶち撒けられていた。


「……うぐぇっっ」


 前方にいた仲間は松明を持たない方の手で口元を覆った。


 髪の毛や衣服の残骸を見てとり、それがかつて人だったものだと気づいた。

 骨の数からして、餌食になったのは一人や二人どころではない。 


 近づくほどひどい悪臭が漂ってくるため、嘔吐してしまう前に引き下がった。 


「おおっ、何ということだ……」


 オーウェンより先にイアンが来ると嘆くように声を上げた。


「貴殿は平気か? ひどい臭いだ」

「ええっ、何とか」


 イアンは俺に話しかけた後、ダスクの兵士たちに木の枝や葉を運んでくるように指示を出した。

 

 俺は他の仲間とともに周囲の様子を調べ続けることにした。


 劣化した影響で壁に人が通れるほどの大きさの穴が空いており、そこから何かが出入りして人を襲った、もしくは運んできたという推測がなされた。



 死臭の漂う部屋を離れて、今度は別の部屋に移動した。 

 

 この場にはオーウェンとリュートの二人がいる。


「……さっきのあれは何だったのか」

「この辺りに人を襲う獣はいねえはず」


 二人は訝しげに言葉を並べた。


「……モンスターは人を食べたりしないんです?」 


 進んでしたい質問ではないが、確認しておきたかった。


「今まで聞いたことねえ。強制労働させて支配するのが奴らの目的だからな」

「カナタ、彼の言う通りだ。モンスターは人の精神的なエネルギーを搾取することはあっても、肉を食べるなどありえない……だが」

 

 オーウェンは少し間を置いてから、再び口を開いた。


「あれを見てしまえば、何らかの脅威を考慮せねばなるまい」


 彼の重々しい口調が状況の深刻さを物語っていた。



 俺たちは砦内の部屋を調べ終えてから、他の仲間が集まる最初の部屋に戻った。

 

 部屋に入ると、心細そうな様子のメリルが話しかけてきた。


「カナタさん、仲間から聞きました。他の部屋にその……」


 彼女は口ごもるように何かを言いかけた。


「ああっ、それなら見てしまったよ。今の段階では何が起きているか分からない」


 メリルを不安にする意図はないものの、推測で物を言うべきではないと思った。

 

 それからしばらくして、イアンとオーウェンから全体に向けた話が始まった。



「皆を怯えせたくはないが、別の部屋で人が襲われた痕跡が発見された」


 オーウェンは全体の様子を伺いながら、慎重に言葉を選んでいるように見えた。

 

「そこまで古いものではなく、何らかの脅威が潜んでいる可能性がある。特に非戦闘員は身の周りに注意してほしい。ここを出る場合は必ず武装した者を付き添わせてくれ」


 彼の話が終わると、今度はイアンが口を開いた。


「ダスクの者は女王陛下の身の安全を確保するように。言うまでもないが、危険が迫った際には市民と陛下を守りながら戦うんだ」


 私からは以上だと言って、イアンはオーウェンに引き継いだ。


「始まりの青の戦士たちも同じようにここを守ってくれ。それともう少し調べたいことがあるので、協力を頼みたい者には個別に声をかける」


 そこで全体向けの伝達は終わった。



 オーウェンは話が終わってから、俺のところにやってきた。


「カナタ、君の魔術は心強い。あの部屋の残骸はどうも気がかりだ。周辺を調べるのに協力してくれ」

「ええ、もちろん」


 彼は助かると礼を言ってから、リュートのところにも声をかけに行った。


 やがて、俺とリュート、オーウェンを含めた五人が揃った。


「辺りはだいぶ暗くなってきた。完全に陽が沈む前に急ごう」   


 俺たちは足早に先ほどの部屋に移動した。


 ダスクの兵士たちが枝葉をかぶせたおかげで見た目には目立ちにくくなったが、室内にこもる悪臭は相変わらずだった。


「まずはこちらを調べよう」


 オーウェンはその場にとどまらずに、壁に空いた横穴から外に出た。


 俺や他の仲間たちも後に続いた。


 砦の外に出ると前方に林が広がっていた。

 陽が沈み始めているので、辺りは薄暗く不気味な雰囲気を感じさせた。


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