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地下の死闘 ―メリルVSキングゴブリン―

 大きめのゴブリン――とりあえず、キングゴブリンと呼ぶ――とメリルの戦いは息詰まる展開を見せていた。


 アルヒ村ではオークを倒すのがやっとな状態だったし、そんな状況を知っているからこそどれぐらい戦えるのか懸念があった。


 だが、今回は軽い身のこなしで攻撃をかわし、隙を見て反撃を繰り出している。

 単純な腕力ならオークの方が上に見えるが、キングゴブリンも武器の扱いになれているようだ。

 

 敵は鉈と剣を足して二で割ったような得物を巧みに操り、首から上や下半身など、急所を的確に狙った攻撃を仕掛けている。鋭い突きが厄介に見えた。


 今のところはメリルが回避できているからいいものの、早いタイミングで魔術で助太刀しなければ、彼女がやられてしまう可能性がある。


 両者の動きがここまで早いのは予想外だった。

 下手に魔術を放ってしまえば、メリルを巻き添えにしかねない。

 

 俺は後方で彼女を見守ることしかできなかった。


 一秒、また一秒と時間が経つほどにキングゴブリンの攻撃が激しさを増す。

 鋭く禍々しさを感じさせる両目がメリルをしっかりと捉えていた。


 人が戦う時とは異なり、勢い任せの不規則な戦い方だった。

 武器を変則的に振り回すので、メリルは攻撃を読みきれずにすんでのところでかわすことが多くなっている。


「まずいな。これ以上は彼女に危険が……」


 俺はふと、エルネスがイノシシを制止させるのに使った氷魔術を思い出した。

 同じ要領で冷気を流せたら、動きを止められるかもしれない。 

 

 ――全身を流れるマナに意識を向ける。


 そこまで繊細なコントロールをしたことはなかった。

 魔術を使い始めた頃のように、高い集中力がなければ誤差が生じてしまう。


 ここまでシビアな状況は初めてだった。

 

 ……とにかく、成功させなければ。


 今日までの経験のおかげで、身体中を流れるマナの感覚が鮮明になっている。

 これなら、冷気の流れる方向を操作できそうだ。


 地面を伝わせるとメリルを巻きこみそうなので、壁伝いに放つことにした。


 キングゴブリンに気づかれないように、できる限り身体の動きを控えた。

 火の魔術を使っている左手はそのままにして、右手から魔術を放った。


 冷気は壁を流れるように走り、そのままキングゴブリンの背後に進んだ。

 メリルへの攻撃に躍起になっている今がチャンスだ。


「――さあ、これでどうだ」


 壁から伝わった冷気がキングゴブリンの背中に向けて放出される。

 魔術の出力を高めて放ったので、猛烈な勢いで凍りついていった。  

 

「あれ? 何が起こって……カナタさんでしたか」


 突然のことにメリルは戸惑っていたが、こちらを振り向いて理解したようだ。


「際どい展開だったから、助太刀したよ」

「氷の力、とても便利ですね」


 メリルは俺たちが勝利したことに安堵したように見えた。

 ゆっくりと剣を鞘に収めると、かすかに笑みを浮かべた。


 確認のために近づいたところで、氷漬けになったキングゴブリンが消滅した。

 どうやら、氷魔術の威力が強すぎたようで完全に凍りついたらしい。


「移送された人の手がかりはなかったなあ」

「わたしも情報不足で、誰が何のために連れてこられたか分かりません」


 魔術の炎をそのままにしているが、照らし出された部屋の中に役立ちそうなものはなかった。がらくたやゴブリンが食べ終えた残骸が転がっているだけだった。


「一度、メソンに戻りましょう」

「うん、そうしよう」


 俺たちは地下の空間を出て、メソンの町へと引き返した。


 町に着いてから、メリルがゴブリンを討伐できたことを町の代表に伝えた。

 

 代表は初老の男性で苦労が絶えなかったようで疲れ果てたように見える。

 彼女の話を聞き終えると、彼は複雑な表情になった。


「強制労働のせいで、町は衰退気味でね。これから私たちはどう生きていけばいいもんだか……」


 俺はそんな彼の嘆きに返す言葉がなかった。

 メリルも同じような心境のようで、何も言わずに固い表情をしている。


 俺たちにできることはここまでだった。

 これからまた別の場所へ行ってモンスターから町を解放するための活動が続く。


今回の戦いも無事に勝利しました。

メリルはすごく強いわけではないので、戦力的にはカナタとコンビでちょうどいい感じですね。

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